120.テンプレ的に、工事を指揮する俺。
シンジ君、現場で頑張るの巻。
まあ、連日アツいので。(無関係)
シンジは、魔術士団のメンバーと一緒に、広がった城壁内の下水工事に駆り出されていた。
もちろん、シンジが希望して実現した話だ。
幸い、チェスタニアの城壁完成の報告は、未だ王宮には届いておらず、その隙を狙っての事である。
ちなみに、
「ふーん、なるほど。下水処理にはスライムか。お約束だね」
「てん……? ま、まあ、スライム処理が定番ですね。このシステムを考えた人はえらいですよ」
このシステムが出来る前は、そのまま川に流していたらしい。ゆえに、大都市では悪臭や疫病が定期的に起こっていたようだ。
「でも、個別の家には設置しないで、集合管方式になったのは何でだろうね?」
一応知識としては知っているのだが、シンジとしては現場の話が聞きたいのだ。
「ええ、以前この情報を不正入手した貴族が屋敷で個別に設置して、スライムが家人を襲い逃げ出して大騒ぎになってお取り潰しになったとか」
「あー、もしかしてシステム考えた人は?」
「その貴族に権利を取り上げられて……」
シンジの脳裏に、怒った幼女の姿が描かれる。もしかしてこれも幼女案件だったのだろうか?
(これはちがうぞー)
何かが響いた気がしたが、アーアーキコエナイ。
その発想をした一般人か研究者がいたんだろう。そして、転移者による知識移管ではなかったから、こうしてテンプレ反動に巻き込まれずに残ったという事なのだろう。
「うん、納得した」
「それじゃ、実際に地下の下水パイプと浄水槽を造っていきましょう」
◇
「広いねえ」
シンジたちが立つのは、新城壁内の新しい土地の1/8を浄化する予定の地下浄水槽である。
「ここが新しい貴族街になる予定です。ですので、建設工事も時間が掛かるので、先に地下部分の建設をしてしまおうと」
「ん? すると、辺境伯様もここに移るの?」
「そうですね。新城壁なら、ここが中央部分になるよう結界を調整しましたので」
当然、結界は単純に現在の中央部分から均等に広げたわけではない。一番端はそのままの城壁を利用しているが、広いところで2km以上広がっている。要するに、円を片側に寄せて拡張したのだ。
何故そんな歪な構造にしたかと言えば、屋敷を建設するのに都合が良いからである。
この世界には魔術があるので、地球の西洋中世よりはよほど建設工事の時間がかからない。シンジが実践して見せたのは極端にしても、人が手で作り上げるよりよほど効率よく建築が進められるのだ。
建設のスピードが速いという事は、資材がそれだけ近場になければ時間をロスしてしまう。ゆえに、建て場所の倍近い資材置き場が必要となるのである。
ただ、その資材置き場も次の建設現場である。よって、次から次へと広い土地が必要になる。
もちろん、細かい資材はマジックバッグのお世話になるのだが。
「それで、先に地下の工事を済ませる必要があると」
「そういう事ですね」
話しながらも作業は並行して行われる。
「あ、クロス卿。ここは水洗ですので、掘り下げの角度はこのくらいで」
「水洗なんだ。水は魔石から?」
「そうですそうです。貴族街ですからね」
一般大衆は垂直落下式らしい。世知辛い。お釣りが怖い。
「ふうん……そうすると、俺が造る場合は、オール水洗に出来るようにしないとな」
臭いは敵である。
「え? でも魔石のコストが大変ですよ? 最低でもフォレストボアかウルフクラスの魔石が必要ですから」
「ほむ、属性とかは関係なく?」
「魔道具への魔力供給だけですからね。確かに効率が良くないと言えばそうなんですが、兵器と違って、そこまでこだわるものでは」
なんとなく、水を出せる魔道具という考え方から、転移者の匂いを感じる。
「ふうん、魔術陣か。面白いよね、アレ」
魔術陣は、チュートリアルでもさんざん修業した。
「結界だって魔術陣ですからね。ただ、巨大な魔石を用意するのと、魔力を注入するのが大変ですが」
強力巨大な魔術陣なら、都市を覆う結界すら造ることが出来る。ただ、魔石は同時に複数使えないのだ。よって、巨大なシステムには巨大な魔石が必要となる。
「単純に水を生成して流すだけの魔術陣ですから、それなりの魔石でも動く訳ですが、その辺はどうするんですか?」
「まあ、そこはいろいろと。第一、街を作るのは魔の森の隣だからねえ」
「ああ、なるほど」
団員たちは、狩りで補うのだろうと思ったのだが、シンジは全く別の事を考えていた。
「まあ、とにかく下水工事を進めようよ。折角だから、約束通り熱血で! 出来る出来る! サクサク出来るよ! もっと燃えるんだよッ! 熱くなれよッ! 修造になるんだよッ!!」」
「急に切り替わらないで下さいよッ!? シューゾーって何なんですかッ!!?」
シンジの熱血指導で、工事のスピードは格段に上がったとか上がらなかったとか。
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