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114.テンプレ的に、国王と話す俺つー。

シンジ君、国王と密談の巻。

やっぱり功績による出世はテンプレだよね。

 「オリバー、お前なあ……」


 シンジ、国王執務室奥密談室なう。うぃずチェスター伯爵。


 結局、1日早く出発となり、一行は馬車を使わず馬を飛ばしまくって王都へ。本来馬車で6日かかるところを4日で踏破。王宮にいる伯爵の父へ急使を出して、国王との密談の場を設けてもらう。


 で、今ここ。


 密談室には、シンジとオリバー、国王ジョセフ、そして場を整えた、オリバーの父であるジョージ=チェスター大侯がいる。


 ジョージは現在、領地をオリバーに任せて国王の相談役を務めている。個爵も侯爵で、引退しているから大侯(・・)となる。


 若いころは官僚として国に仕えていたが、先代の引退と兄の急死のために役を辞して伯爵領を継いだ。が、あまりに優秀なため、オリバーが長じて伯爵位を譲ると、再び国に召し出されて宮廷貴族として活動するようになった。


 この国では、優秀な貴族は領地管理と国の役人を両方経験する。オリバーも若いころに10年ほど役人を経験している。


 それゆえ、この国では宮廷専属の官僚である法衣貴族は下級家爵の者が多い。個爵という独特な制度が発達したのもそれが原因だろう。大臣で個爵が伯爵以上でも、実家は騎士爵や法士爵という例も珍しくない。もちろん、個爵の上昇によって家爵が上がるケースもある。それでも男爵家以下が多いのが実情だ。


 前にシンジもつぶやいているが、江戸時代で言う『足高の制』のようなものだ。ただし、あくまで個人爵位なので、足高の制のように安易に家爵を引き上げることには繋がらず、国家としての財政的負担は大きくならない。


 結果的に、家爵で言うと伯爵家以上は極端に少ない。その分、王領が非常に大きいのだ。ゆえにこの国は、事実上の中央集権体制となっている。


 シンジは、これも転移者のアイデアではないかと睨んでいる。


 閑話休題。


 「さすがに公開するには事が大きいので、こうして密談室に」


 ジョージが頭を抱える国王ジョセフを説得するように言葉を綴る。オリバーに相談されたジョージの苦肉の策である。


 「……いやまあ、こうして秘密裏に事を進めたのは褒められることだがな」


 ジョセフがひとつ頭を振って復活した。


 「しかし、これが表沙汰になったら……戦争が起きるかもな」


 ジョセフのつぶやきに、全員が沈黙する。


 確かに、過去には『聖薬酒』シリーズを巡っていろいろと血なまぐさい事件や陰謀が起こっていたのだ。


 「使っちゃえば良いのでは?」


 重い空気の中で、しれっとシンジがのたまう。


 「な、何を……?」


 「有るから狙われるわけで、さっさと使っちゃえば良いよね? で、使ったことを言わなきゃ良いじゃん。バレなきゃOK」


 全員があんぐりと口を開けた。


 「……いや、一理ある、か?」


 ジョセフがつぶやく。


 「だとすると、余が飲むべきは霊酒(アムリタ)か」


 国王が5年近く病に倒れない。そして2年後には寿命も伸ばす。国の安定に繋がるだろう。


 「ジョージ。お前も飲むんだぞ。引退などさせんからな」


 「……やれやれ、このおいぼれまで巻き込みますか?」


 指名されたジョージがため息をつく


 「お前の領から出たものだからな。お前も飲むのがスジというモノだ」


 「陛下も人使いが荒い事で」


 ジョージが苦笑する。


 「妃にも渡すか」


 妃というのは、ジョセフの正妃であるマーガレット王妃の事だ。


 「側妃様は?」


 「広まる可能性がある。そちらは却下だ」


 ジョセフの答えに、ジョージが渋い顔をする。


 「王妃陛下が5歳若返ると、騒ぎそうな気がしますな」


 「王妃も霊酒(アムリタ)を先に飲めば、そこまで変わらんだろう」


 「そうですな……」


 ジョージも賛成する。が、内部から体の不調が無くなれば、肌艶は良くなるものだ。そこから何かがあったとは疑われるかもしれない。女はそういう所に鋭いものだから。


 「シンジよ、霊酒(アムリタ)を飲んだ時、不調になったりするのか?」


 ジョセフが直接シンジに問いかけた。


 「んー、霊酒(アムリタ)は急に効く感じじゃなくて、徐々に体調が良くなる感じ? 毎日朝起きたら快調になっていくように、ですかねえ」


 「ならば問題ないか」


 「逆に、神酒(ソーマ)は2、3日寝込みますね」


 これは、神酒(ソーマ)には体中の細胞をがん化させずに、テロメアのみを伸ばす効能があるため、身体を完全に休ませる必要があるからだ。


 細胞の寿命が正常に延びれば、結果的に生物としての寿命も延びる。無理に延ばせばがん化する。ゆえに、3年を超える効果を持つ神酒(ソーマ)は貴重なのだ。


 話を聞いていた全員がため息をつく。神酒(ソーマ)が寿命を延ばす仕組みを知ってしまったからだ。


 これは、科学知識と魔術知識を両方持っているシンジだからこそ説明できることなのだ。


 「まあよい。ところでシンジよ、この功績については顕彰することが出来ん。だから、ドラゴンスレイヤーの方の功績を最大限顕彰する。ただそうなると、結果的にランチェスト兄妹の功績も大きくしないとならんのだ。そこは理解してくれ」


 「それは全然おっけーです。むしろ、望むところです」


 シンジとしては、ドラゴンスレイヤー3人が目立つ分には、注目度が下がるので大歓迎である。


 「わかった。なら、お前たち3人は個爵で子爵に、家爵で男爵に進める」


 ジョセフの宣言に、ジョージとオリバーが目を剥いた。


 「よろしいのですか?」


 「ああ。調べさせたが、過去のドラゴンスレイヤーは個爵が男爵で家爵が準男爵になっている。仲間は全員騎士爵家に封じて、国防に役立てた。元々全員が騎士爵だ。何もおかしくはない。もちろん、他国に対する牽制になるから、領地もその分考えるがな」


 どうやら、3人とも異例の出世をする事になってしまったらしい。

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