表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/135

113.テンプレ的に、ヤバめの薬を渡す俺。

シンジ君、ヤバ目の(ヤク)を生産しちゃうの巻。

タイーホ案件である。(ヲイ)


ついに故障受付(113)まで来ました。(チガ)

 「でーきたっと♪」


 シンジの目の前には、赤い液体の入った小瓶と、青い液体が入った小瓶が10個ずつ並んでいた。


 言うまでもなく、『神酒(ソーマ)』と『霊酒(アムリタ)』である。


 調合している最中、『そんなにレミーたん使うんじゃないッ!』とか、『カミーュがッ!! 遊びでやってんじゃないよ!』などと、幼女らしい声が響いた気がするが、アーアーキコエナイ。


 「どっちも安定して造れるのは5年モノかあ。うん、腕は確実に落ちているねー。全盛期の7割くらい? それでも戦闘力よりマシか?」


 調合と戦闘能力は違うのだろうか。その辺はシンジにもわからない。まあ、戦闘力はチュートリアル空間が上がりやすく調整されていたとも考えられるし、調合の腕は筋力やレベルは関係ないので、この世界でもある程度は能力を持ち越せたのかもしれない。


 それはともかく、5年モノである。


 神酒(ソーマ)なら、5年若返る。霊酒(アムリタ)ならば、どんな病気でも治るし、健康状態で飲めば一定期間病気に罹らない。今回は5年間だ。


 このふたつに、どんなケガも治すと言われる神薬(エリクサー)を組み合わせることで、問答無用で寿命を延ばせるのだ。


 ただし、この3つは同時に飲むことが出来ない。ひとつを飲んでから最低2年は置かないと、体内に毒素が発生して必ず死ぬ。同種の薬なら3年経たないと飲むことが出来ない。


 そのため、この3種のポーションに、『聖酒』と呼ばれる最上級聖水を加えて、『聖薬酒』シリーズとも呼ばれている。


 ちなみにこの世界では、どれほど性能の良い聖薬酒でも、10年モノは現存しない。たまにダンジョンから発掘されるもので、2年モノがたま(・・)に、3年モノがまれ(・・)に出る程度だ。歴史に残る錬金術師が、最後に創り上げたのが10年モノを超えていたと言われているが、現物はなく、その制作方法も残っていなので、真偽は定かではない。


 もちろんシンジは真相を知っている。その伝説の錬金術師も転移者であり、その死に至った一件も、実は幼女ブチ切れ案件であったと。


 かくしてシンジは制作方法を知り、それを再現して見せたのだ。チュートリアルでは(・・・・・・・・・)


 「んー、こっちの時に使ったのが、上級竜種の血だったってのもあるだろうけどねえ。でも、あの時は葡萄酒を使ったから、ブランデーで実験した今回よりも酒の質では劣っていたはずなんだけどなあ。……やっぱり腕の劣化かな? かな?」


 シンジは、右手に今回出来た神酒(ソーマ)を。左手にチュートリアル中に制作した神酒(ソーマ)を持ち、両方を近づける。遠目には差異が

あまりない、美しい深紅の液体だが、左手のピジョンブラッド・ルビーのような液体に比べると、右手のモノは若干だがオレンジ色が混じって見える。


 「まあ、一応自分の腕も確認できたことだし、これで良しとしようか。さて問題は、これを見せるかどうかだよねえ」


 シンジは一瞬、錬金術師の末路を思い返した。今回の『聖薬酒』シリーズを伯爵に見せたら、同じようになるのではないかと。だが、そうはならないだろうと思い直した。


 シンジと(くだん)の錬金術師とは、決定的な違いがある。それは、本人の直接的な戦闘力だ。


 ドラゴンを倒せる錬金術師。それを襲おうとするだろうか? 普通なら絶対にしない。敵対して戦闘になったとき、どう考えても被害は甚大だ。


 それよりも、懐柔してこの国から自主的に出ないよう仕向けて来るだろう。アホ貴族でもない限り、普通ならそうする。そして、実際に会ったこの国の国王は、カリスマもあれば気さくな面もある、実績面を見ても名君と言っても良い存在だ。


 だから、基本的にシンジの身が危うくなるようなことも、敵対して国に被害をもたらすようなことをすることは無いだろう。周りの取り巻き貴族や、王族の次世代には会ってないのでわからないが。


 その場合でも、この薬により現国王の治世が延びれば良いだけの話でもある。


 ある意味、開き直ったとも言う。


 そういう訳で、シンジは早速伯爵にアポを取るのだった。




 ◇




 ……そしてシンジの目の前には、頭を抱えたオリバーとアーサ-がいるのであった。


 「……冗談だって言ったよな?」


 地の底から這い出るような声で、オリバーが唸った。


 「えーっと、『冗談だよな』、と聞かれたので、『もちろん(冗談なわけないですよ)』とお答えしたかと」


 どう聞いてもシンジ、確信犯である。


 シンジの返答を聞いたオリバーとアーサーが崩れ落ちた。


 「そっちか……そっちだったのか……ッ!! 確かに確認していなかったがッ!!」


 オリバーが嘆く。


 「まあ、出来ちゃったものはしょーがないですよ。うん。ですので、どうするかを決めましょ」


 シンジ、どこまでもお気楽極楽である。


 「そうだな、無かったことには出来んよな。……仕方ない。これも陛下に報告だ」


 「あ、伯爵のお手元に何本か残した方が良いですよー。折角ですから♪」


 「……そうだな、そうさせてもらう。アーサー、お前も1本ずつ持っておけ」


 「わ、私もですかッ!?」


 そこでキラーパスが出されると思っていなかったのだろう。アーサーが動揺しまくった。


 「いやさすがに金貨積んでも買えないような薬を、一介の男爵がいただく訳には」


 「だーいじょーぶ、まーかせて。まだ材料よゆーであるから! アンリさんやアイリスさんの分も合わせてあげるから♪」


 それを聞いたオリバーとアーサーが、再び崩れ落ちた。


 とりあえずオリバーが、10本全部を国王にダイレクトキラーパスすることにしたのは言うまでもない。

俺も『聖薬酒』シリーズ欲しい! という方、★とブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ