111.テンプレ的に、ドラゴンスレイヤーになっていた俺。
シンジ君、首脳陣と話すの巻。
焼肉ぱーりーの影響が抜けない。
狂乱の焼肉ぱーりーが明けて、翌日の昼。再びシンジはオリバーに呼び出された。応接に案内されると、その場にはアーサーがいた。アンリたちの姿は見かけない。別の用事があるのだろうか。
「シンジ、昨日は練兵場での宴席、本当に馳走になった。感謝する」
どうやら、オリバーは二日酔いにはなっていないようだ。シンジも食う方を優先していたので、特に問題はない。
……実際は、竜の肉で宴会を行ったので、二日酔いになるようなことはない。竜肉の魔力は、体の悪い要素も溶かしてしまうのだ。だからこそ、竜の血は魔法薬を造るのにも使われるわけだが。
シンジはブランデーのつまみに竜肉をバカ食いする幼女からそんな説明を聞いていたが、もちろんそんなことを説明する気はさらさら無い。
ちなみに、その際にも香りが素晴らしくできた新ブランデーの名づけが行われた。その時幼女が食べていたのは、竜肉をチーズで包んで揚げた、所謂コルドン・ブルーだったために『コルドン・ブルー マーテヌじゃな』と言われ、シンジが激しく突っ込んだのは言うまでもない。
閑話休題。
「いえいえー、喜んでいただければ。ところで、今日のお呼び出しは?」
「ふむ、竜討伐の件を陛下に奏上せねばならんのでな。事実確認をしたかったのだ。大方アンリとアイリスには聞いているが」
どうやら、午前中はふたりから聞き込みを行っていたらしい。
「どんな話を聞いています?」
「1頭は、首を落とした方だな。そちらはアンリとアイリスが。もう1頭はシンジとその飼い犬で倒したと」
リルが居たら、バウバウと怒られそうだが、大体合ってる。
「まあ、その通りですね」
「そうか……済まんが冒険者カードを見せてくれるか?」
「いいですけど、何で?」
シンジとしては、あまり能力を見られるのは感心しない。
「ああ、称号のところだけで良い。後はカードの機能で隠せるだろう」
シンジは、ランク・職業・称号のみを表示させて、オリバーとアーサーに示した。
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名前 :シンジ=クロス騎士爵
ランク
総合評価:シングルゴールド級
討伐 B-
採取 A-
護衛 F-
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職業 :冒険者
称号 :騎士爵 ドラゴンスレイヤー【中級竜種】
技術 :---------
魔術 :---------
武術 :---------
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預金 :---------
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さすがは神造のシステムだ。芸が細かい。
「やはり、【ドラゴンスレイヤーズ】ではなく、【ドラゴンスレイヤー】だったか……」
オリバーのつぶやきに、シンジが反応する。
「それ、どーゆー事です?」
「ん? 知らんかったか? 70年ほど前に、わが国でも竜を倒した冒険者のパーティがあってな。称号に【ドラゴンスレイヤー】と刻まれたのだが、【スレイヤー】になっていたのは、実際にとどめを刺していたリーダーで、パーティーメンバーには【ドラゴンスレイヤーズ】の称号が付いていたらしい」
「ほほーん」
これはシンジも知らなかった。まあ、チュートリアルではひとりで戦っていたのだから、わからなくて当然なのだが。
「だが、今回は3人とも【ドラゴンスレイヤー】だった。どういうことだ?」
それはシンジにもわからない。だが、少人数だったからかもしれない。
シンジがそう言うと、オリバーもうなずいた。
「そうかもしれんな。どちらにしても、近年ないドラゴンスレイヤーの誕生だ。陛下に報告すれば、再び陞爵することになるだろう」
爵位が上がるらしい。
「前回ドラゴンを倒した冒険者パーティーは、リーダーが諸侯準男爵家を創設し、メンバーは騎士爵となってそこに仕える形になった。今回は、皆が爵位持ちだからな……」
アンリは法衣騎士爵だったが、今度の陞爵では間違いなく領地を貰うことになるようだ。
「中級竜に、そこまで価値ある?」
シンジ的には、そこが今ひとつ腑に落ちない。
過去、シンジはチュートリアルで上級龍までは倒したことがある。ただ、今の力では下級龍までが限界だろう。龍と竜では比較にならない力の差がある。
そんな龍を、倒した事例がほとんど無いというなら、竜が襲ってきたらどうにもならないという事になる。
「竜を見かけることさえ希だぞ。そんなに頻繁に竜が来るような土地なら、人間は暮らせん」
なるほど、道理である。
ただ、この魔の森の奥には、うじゃうじゃいそうな気もするが、魔素の薄いところでは竜も興味が無いのだろう。
それよりもシンジが気になったのは。
「前回は肉を食わなかったんですかねえ?」
「「気にするの、そこかッ!!?」」
シンジはふたりから突っ込まれた。
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