108.テンプレ的に、竜をお披露目する俺。
シンジ君、倒した竜をお披露目するの巻。
ドラゴンステーキは美味しいのが正義。(ヲイ)
領都の門は閉じられ、静まり返っていた。まるで、人知を超えるものから見つからぬよう、息を潜めているかのように。
「やっぱそうなるよねえ」
無理もない。相手は伝説級の地竜が、それも2体なのだから。
そのまま城門にたどり着くと、騎士のひとりが声を張り上げた。
「開門ッ! かいもーんッ!!」
城壁門の上にいた兵士が、それに気づいた。
「騎士隊が帰って来たぞッ! 横門を少しだけ開けろッ!!」
城壁の正門の横には、緊急時用に通用口の小さい門扉が設置されている。小さいと言っても、1人なら騎乗のままで通る事が可能だ。その門が外開きに開かれた。
次々に騎士が通っていく。最後にアンリと、シンジ、アイリスが続く。
部隊が城門を潜ると、アンリとアイリスはまず、城門の兵士に命じて臨戦態勢を解くように伝令を飛ばした。アンリは騎士隊総隊長なので、警戒態勢の解除指令を出す立場だ。
何より、城門の長期的な閉鎖は領の経済に大ダメージを与える。問題が解決した以上、早急に解除する必要があった。
ひと通り必要な指示を飛ばし、率いてきた部隊を詰め所へと戻すと、アンリとアイリス、そしてシンジは伯爵の屋敷へと報告に向かった。
◇
「3人とも無事だったかッ!」
まるで災害対策本部の様に人が出入りする執務室で、伯爵であるオリバーと腹心の男爵であるアーサーが待ち構えていた。オリバーがアンリたちを見て椅子から立ち上がり、声を掛けてきた。
「アンリ総隊長、報告を」
アンリの父でもあるアーサーが、そのことを感じさせない冷静な口調で問いただす。
アーサーはこの領の重臣である。No.2と言っても良い。それゆえに親子であっても、けじめを大事にする。
「はッ! 騎士小隊全員無事に帰還しました。途中伝令を出した通り、地竜を2頭発見し、これを撃破しました」
「そうか……。では、無事に地竜は森の奥に追い返すことが出来たのだな。……良かった」
アンリの報告を聞いて、オリバーは力が抜けたように椅子へと座り込んだ。
「いや、それが……」
アンリが言葉を濁らせた。不審に思うアーサー。
「何だアンリ。まずいことがあったのか? まさか、また竜が?」
鋭く聞いてくるオリバー。
「いえ、そうではなくてですね。撃退ではなくて、撃破なんです。倒してしまったんです。2頭とも」
「「……は?」」
オリバーとアーサーが目を見開いて止まった。
「倒してしまったんです」
繰り返すアンリ。オリバーとアーサーの首が、ぐりんッ! とアイリスとシンジに向けられた。
シンジとアイリスは、揃えたようにうんうんと首を縦に振る。
「「倒してしまったんです」」
「「イヤお前らも声揃えるなッ!」」
オリバーとアーサーは、勢いよく突っ込み、同時に頭を抱えた。
◇
「では、見せてもらえるか?」
気の抜けたシンジの声が響くと、特大サイズのマジックバッグから、竜の首が取り出される。ズサ、という音を立てて地面に横たわった。
「「おぉぉ……」」
オリバーとアーサーから、感極まっていながら、何故か呆れたような声が漏れた。
長めの首は、半ばから断ち切られているが、そのサイズは人の身長より長い。全身の大きさが伺えるというものだ。
「胴体も出しますねー」
シンジの声とともに、今度はズシ、という地響きとともに、6mはあろうかという胴体が、力なく横たわった。
その場の全員が、固まったまま動かない。
「こちらが、アンリさんとアイリスさんが倒した竜となります♪」
「す、すごいな……」
暫くして、オリバーの口からため息とともに感嘆の言葉が出る。アーサーはまだ絶句したままだ。
「で、こちらの竜はどうします? ちなみに、ステーキにするとすごく美味しいですよ?」
「「「「「「食うんかいッ!!?」」」」」
全員から一斉にツッコミが入った。
「それがテンプレです」
自信満々にシンジが言いきった。
その場で全員が膝を付いたのは言うまでもない。
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