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105.テンプレ的に、竜と戦う俺。

シンジ君、竜と戦うの巻。

何かやらかすのがシンジクオリティ。(ヲイ)

 遠くから聞こえる地響きの音が、はっきり聞こえるようになってきた。


 「そろそろ来ますよー」


 そんなことを言っている間にも、地面の響きはどんどん大きくなってくる。


 「あ、出てきたッ!!」


 アイリスの言う通り、木の陰から勢いよくリルが飛び出してきた。そのまま着地すると、反転して森の奥へ吠え掛けた。


 「来たっ!」


 うっそりと木々の間から出てきた巨体。鈍色の鎧のような光沢をもつウロコ。頭から突き出した、三角錐のようなそびえ立つ2本の角。背中を走る、御神渡りの様に突き出た背びれ。太い丸太のような、大地を踏みしめる足。


 だいたい背の高さが4m、全長は8mくらいだろうか。間違いなく地竜(グランドドラゴン)の成竜だ。奥からは、もう一頭少しだけ大きい地竜も顔をのぞかせた。


 「つがい?」


 誰かのつぶやきが聞こえたが、それは無いだろう。少なくとも、片方は反動なのだから。


 地竜の方も、俺たちのことを見つけたらしい。岩を擦り合わせたような鳴き声を上げた。耳が痛い。


 「隊員は全員急いで下がれッ!」


 アンリの声に、隊員たちは後ろ走りに広場を出て、木々に隠れた。


 「こ、これが地竜……」


 アイリスの額に汗が浮かんでいる。竜を初めて見るならこうなるだろう。それでも、魔力を練るのは止めていない。まだ落ち着いているようだ。


 「アンリさん、アイリスさん、大丈夫。俺たちならどうとでもなるよ」


 シンジは焦らせないように、ゆったりした声を掛ける。緊張させないようにするには、これがいい。


 「じゃ、俺は向かって左に、アンリさん達は右に仕掛けてね。リル、お前は俺と一緒にこっちだ」


 リルはバウッ!と吠えた。やる気満々だ。


 俺は、氷の剣を横構えにする。そのまま横に振りぬいた。


 魔力を十分含んだ剣先が光り、地竜を襲う。ガツッと岩をぶち当てたような音を立て、その頭に氷の槍がぶつかり、細かく砕けた。ぽっかりと空いた空間に降り注ぐ日光を反射し、キラキラと場違いに煌めく。


 ギシャオオォッという雄叫びが上がる。多少効いているようだ。


 そこへリルが疾走して体当たりをかました。竜が一瞬ふらついた。小柄なリルは、体重だけではなく、魔力を全身に纏って攻撃したのだ。


 「おおッ! やるなあ、リル!」


 あたぼうよッ! とでも言わんばかりに吠えるリル。


 「接近するっ! アイリス、援護ッ!!」


 「はッ!」


 もう一方でも戦闘が始まった。八双に剣を担ぎ、アンリが突貫した。反対側からアイリスも迫る。


 アンリが斜めに弧を描くように進み、右の前脚を狙う。一閃、鎧のようなウロコを切りつけた。そのまま後ろに駆け抜け、斜後ろに陣取った。


 脚のウロコはきれいに斬られ、一瞬遅れて血が噴き出した。


 まさか人の剣ごときに斬られるとは思っていなかったのだろう。地竜はギャオオッ! と痛みに驚いたような声を出した。


 逆側では、アイリスが後ろ足の指を狙う。人でも足指を怪我すれば歩けなくなる。狙い通り、地竜の歩みがふらつきだした。


 「いいぞアイリス!」


 だが、攻勢は長く続かない。地竜の足指は、斬られた端から再生を始めている。驚くべき治癒能力だ。


 動きが止まった地竜は、怒りのまま喉を膨らませる仕草をする。ブレスが来るか。


 「アイリス! 避けろッ!!」


 地竜がブレスを放つ! 土のブレスだ。拳大の石つぶてをぶちまけるようなブレスは、勢いのまま広場を超え、林立する木々の幹に当たり、木を薙ぎ倒す。


 近くに潜んでいた騎士が、慌てて後ろに下がるのが見えた。


 アイリスは、素早く竜の後ろに回り込み、無事だった。


 「騎士たちはもう少し下がれ! 巻き込まれるぞッ!!」


 アンリの声に、木に隠れていた騎士たちは、背を低くしながらより外側へ退避する。


 イラついている竜は、さらに喉を膨らませる。アイリスに注目していたアンリの方にくるりと向いた。


 一方の竜と対峙しながらも、傍から見ているシンジには、今度は土のブレスではないことを悟った。


 竜のブレスは、火や水など、竜の特性によって吐くだけではない。


 竜種の最上級の攻撃(ブレス)は、凝縮された魔力そのものを放つ。その時、魔力はプラズマ化されて数千度の熱量を持つのだ。下級竜には無理だが、中級竜でも力がある個体なら可能だ。


 タイミング的に。アンリは避けるのが遅れた。竜が口を開こうとする。


 「はッ!!」


 シンジが気合一閃、氷の剣を地面に刺す。


 その瞬間、地竜の足元から石の槍が飛び出した。ガインッ!と、ハンマーで殴ったような音を響かせ、石の槍は地竜の(あぎと)をかち上げた。


 たまらず地竜は空に向かってブレスを吐く。電磁ブレスは、空高く舞い上がった。


 「あっぶねー。アンリさん大丈夫?」


 「し、シンジさん、助かりましたッ!!」


 「気を付けてねーあぶッ!?」


 一瞬の油断。竜の太い尾が、シンジを襲った。


 シンジが竜の尾に弾かれる。そのまま周りの木に激突した。


 「「シンジさんッ!!?」」


 アンリとアイリスの声が、戦場に響いた。

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