102.テンプレ的に、イケない剣を与える俺。
シンジ君、襲来に備えるの巻。
ただ、ヤバいものも目覚めさせたようで。(ヲイ)
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すっかり間が空いてしまいました。
ですが、この忙しさ、再来週まで続きます……(/_;)
次回はもうちょっと早く更新します。何とか。
シンジは、リルとともに森の中を急いだ。この深い森の中で、シンジの足取りに迷いはない。それは、アンリとアイリスの魔力を感じ取っていて、その方向を目指しているからだ。
アンリとアイリスは、この場でも魔力循環しながら動いているようだ。見知った魔力が濃密に感じられるのだから、迷いはない。
暫く歩いていると、木の切り株がちらほら見えてきた。どうやら、この辺で伐採が行われているらしい。なるほど巨木は多いが、先ほどまでの鬱蒼感からはかけ離れていて、木も真っすぐなものが多い。そういう植生なのだろう。
かなり向こう側に、チラリと人影らしきものが見えた。あれが騎士隊だろう。もちろん全身鎧ではない。いかに騎士隊でも、森の中で全身鎧は自殺行為である。
向こうでも、シンジたちの接近に気付いたようだ。
「はろはろー」
シンジが軽く挨拶する。言葉は軽くても、存在と敵意がない事を示すにはこれが一番よいのだ。
「シンジさん、ご無事でしたか。森の奥はどうでしたか?」
アンリが安堵したような色を滲ませながらシンジに尋ねてきた。
「うん、大物がいるよ」
「大物?」
アンリの目つきが厳しくなった。
「うん。グランドドラゴンが2頭だね。こっちに向かってる」
「……はい?」
アンリたち、騎士隊全員の目が点になった。
「だから、グランドドラゴンだってばよ」
「……またまたシンジさん、ご冗談を。そんな大物のドラゴンが、こんな森の端まで出てくるようなことは。ハハッ」
「マジマジ。ホントホント」
シンジとアンリたちの間に、沈黙の時が流れた。
「そ、そ、そ、それはた、た、大変、なことに……ッ!?」
アンリが泡を食ってキョロキョロとあたりを見回した。アイリスや騎士隊の面々も辺りを忙しく見渡す。
「うん、大変。だから、俺とアンリさんとアイリスさんで殺ッチャオウヨ」
「……はい?」
再び、アンリたち騎士隊の全員の目が点になった。
「ドラゴン、ですよね?」
「そうそう」
「殺ッチャオウ、ですか?」
「んだんだ」
「む、無茶言わんでくださいよぉ……」
アンリが頭を抱えた。無理もない。そんなことが出来るのは、神に認められし英雄か勇者みたいな存在だけなのだから。
「ダイジョウブダイジョウブ。問題ナイね」
何しろこちらは、神に認められし使徒と、その使徒に認められた英雄なのだから。一緒一緒。……たぶん。
「し、シンジさんに言われたとおり、一番いい武器を持ってきましたが、森の中で全身鎧は無理ですので、皮鎧なんですよッ!?」
たまらずアイリスも反論してきた。
「当たらなければどうという事はない?」
「そ、それはそうですが……ッ!! そ、それに、小隊長として部下を危険に晒すことは……ッ!!」
なおも心配顔のアイリス。
「うん、そーだね。だから、今回は剣術や魔術四段未満の方はご遠慮願います」
シンジはこっそり全員を鑑定していた。狙い通り、四段以上はアンリとアイリスしかいない。これで人数を絞ることが出来る。
「と言う訳で、剣術や魔術が四段以上ある人、手ェ挙げてー」
もちろん手が挙がったのは、アンリとアイリスだけである。
(段数制、言い訳に便利。ナイス俺と神)
シンジ、自画自賛であった。
「ですがシンジさん、私もアイリスも魔剣を持ってきましたが、竜の鱗は斬れないと思います」
多少の魔剣では竜の鱗は貫けない。上位の竜の鱗を素材に使わない限り。それが常識である。
「うん、だから斬れる剣を用意してみました」
シンジは、アイテムボックスからこっそり2本の剣を取り出した。
「こ、これは……? 何か、すごい力を感じますが……?」
アンリの言葉が震えていた。剣の持つ独特な空気を感じ取ったのだろう。
「これ? ドラゴン特攻の剣」
騎士隊全員がブッと噴き出した。
「地竜レベルの中級竜でも、スッパリ斬れる剣です♪」
「それ、それ国宝級じゃぁ……」
アイリスが震える指で剣を指した。
「剣は使ってこその剣だよ。倉に納めていてもしょーがないじゃん」
「イヤ確かにそーですが」
ああだこうだ言うアイリスを置いて、アンリは剣を握るとスラリと抜き放ち、じっと見つめる。
「素晴らしい……この輝き、身に纏ったオーラ。超一流の剣ですね……。剣士なら、一度はこれで戦いたい」
魅入られるように剣身を見つめるアンリ。ヤバいスイッチが入ったヒトにしか見えない。
「おっしッ! やる気出たッ!!」
急に人が変わったようにやる気になった。剣のせいだろう。たぶんきっとめいびー。
「ああッ! また兄さんの悪いクセが……」
頭を抱えるアイリス。それを生暖かい目で見守る騎士隊の面々。カオスである。
「じゃあアンリさん、その他の人は危険だから下がってもらえるかな? 安全を確保しないとねー」
シンジの言葉に、アンリが肯く。
「お前たちは、伐採場の表の方で待機だ。もし、本当に竜が出てきたら、伝令を街へ飛ばしてくれ」
その時、ズシン……と、何か重いものを叩きつけるような音が微かに響いた。
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