101.テンプレ的に、大物を引き当てちゃう俺。
シンジ君、ルーレットで大当たりの巻。
しょうがないよね、てんぷれだもの。(マテ)
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まだまだ忙しい日は続いています。4月上旬まで引きずるかも。(/_;)
シンジは、アンリたちとは別行動をとった。実際にテンプレ反動が起こるかどうか、森の中を確かめるためだ。
もともとが偵察であるアンリたちは、森の中をそれほど深くは入らない。魔の森でも、木を伐採できる場所があり、その周辺をパトロールするのが基本だ。
シンジは、深い森の中を進む。藪はあまりない。木の陰になって、背の低い藪は育たないからだろう。苔と木の根でうねるような地面が続いていく。
こういう深い森の中は、慎重に歩かなければならない。朽ちた木が積み重なり、天然の落とし穴になっている場合があるのだ。
体験者が言うのだから間違いない。……シンジは、チュートリアル中にこれを体験している。朽ち木を踏み抜いて、真っ逆さまに落ちたのだ。
リルは、木の根も問題なく軽やかに超えていく。所々でシンジを振り返るのは、安全な道を教えてくれているのだろう。頭の良い子だ。
「ありがとうな、リル」
「うぉん!」
しっぽを振り振り、上機嫌に跳ぶ様子がかわいらしい。……フェンリルなのだが。
その時。
「ウウウ……」
急に止まったリルが森の奥、はるか先を見て唸りだした。
続いて、あの謎のピコピコ電子音が頭の中に響く。
「ほうぁッ!?」
またしてもユカイな声を上げてしまうシンジ。
そして、再び飛び出すようにステータスボードが開いた。
ノートサイズの四角いステータスボードの中は、5cmほどの六角形に埋め尽くされており、ど真ん中の点滅する文字がやはり意味なくL字に折れて。
『反動敵接近中』
と極太明朝体で書かれていた。しかも、白字なのに何故か『敵』の字だけ赤字になっている。
「やっぱり女王蜂か新世紀だよね、これって」
しばらくそのまま放置すると、文字がフッと消えて、羽の生えたトースターが斜めに飛び始めた。
「スクリーンセイバーかよッ!?」
幼女の懐古趣味に戦慄しながら、シンジはイヤイヤながらもボードを押した。すると、以前同様にトースターが消えて文字が回り始めた。
ファンファーレとともに、文字が表示される。
『発生:グランドドラゴン2頭』
「2頭ぉッ!? アイエエエ! ニトオナンデッ!!?」
見事に中級ドラゴンである属性竜を引き当ててしまった。
「いやいやいや、これはまずいよね。どう考えても」
正直シンジは、カードテンプレの反動がこれほど大きいとは思わなかった。
「中級ドラゴンだと、アンリさんとアイリスさんの剣じゃ、届かないよねえ」
少なくとも、アイリスに渡した魔剣では、中級竜の鱗は貫けない。
「んー、ここは大盤振る舞いするしかないかなぁ」
シンジは後ろ手で頭を掻きながらつぶやいた。
中級竜2頭なら、今のシンジでもひとりで倒すことは可能だ。
だが目立つ。果てしなく目立ってしまう。
ちなみに、シンジの手持ちの魔剣には、竜斬剣がある。……何十振も。
チュートリアルで鍛冶も鍛えていたのだ。能力半減のため、現界では最高級クラスの剣が作れなくなったとはいえ、鍛えた剣が無くなったわけではない。
実際に、普段使いにしている氷の剣も、実は下級龍である水の属性龍の鱗が練り込まれているのだ。だからこそ、シンジの魔力に負けずに氷の槍を放つことが出来る。
もちろん、シンジが鍛った最上級の剣は、五色の龍の鱗から作られている。が、普段使いなどとても出来ない。見るからに神々しすぎて、その刀身が放つオーラだけで、とんでもない剣だという事がバレてしまうからだ。
「しょーがない。下級属性竜の鱗を使った竜斬剣だったら、スッパリイケるでしょう」
2階級上の剣を使う。これなら、アイリスでも中級竜と互角に戦えるだろう。
シンジは、未だ森の奥を警戒するリルを見た。そこで、ふと思う。
「……ねえリル、もしかして、ケガをしてたのって、竜と戦ったの?」
わふ、とリルが答えた。
もしかしたら、1頭は元々いた地竜で、もう1頭の地竜が反動だったのかもしれない。
「……まあ、今は推測しても仕方ないよね。アンリさん達に合流するか。リル、行くよ」
リルは、未練がありそうに森の奥を一瞥すると、来た道を慎重に戻り始めたシンジを追いかけた。
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