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100.テンプレ的に、アイリスを言いくるめる俺。

シンジ君、アイリスさんをいぢめるの巻。

腹黒いシンジ君はスキですか?(ヲイ)


---------------

桁上がり達成。皆さまに見ていただければこそです。

これからもよろしくお願いいたします。

 その夜は宴会になった。村人としても、騎士隊が来ることは先触れで聞いていたので準備していたし、シンジもちょっと魔の森へ飛んで、ビッグボアを狩って来た。肉はこれで十分だ。アンリは頭を抱えたが。


 「シンジにーちゃん! あの人形劇また見たいなー」


 子供たちのリクエストもあったので、アイリスの人形とオークロードの人形、そしてノアの人形を、今度は1/3サイズほどで成形した。


 すげーすげーと騒ぐ子供たちに気分を良くし、あの人形劇を再現する。


 シンジ、再び扇子を取り出しての迷演説である。


 「逃げようとするオークロード! そこを逃がすものかと後ろから足を払うアイリス!!」


 パパンッ!


 「『村人に仇為すオークロードよッ! 正義の刃を受けるが良いッ!!』アイリスの剣が、オークロードの首へと突き刺さったッ!!」


 パパンッ! パン、パン、パンパンッ! パパンッ!


 「うぎゃあー! という声とともに、オークロードは、ついに倒されたのだったッ!!」


 パゴンッ!


 「あ痛ッ!?」


 「な、なぁにをやってるんですかもうッ!!」


 頭に衝撃を感じ、シンジが振り向くと、そこには顔を真っ赤にしたアイリスが仁王立ちしていた。


 最後の音は扇子ではなく、頭をアイリスがどついた音だ。思わぬ領主の勢いに、子供たちが一瞬で逃げ散った。


 「ぶったねッ!? 親父にもぶたれたことないのにッ!」


 「そんな事より! その人形と劇みたいなのは何なんですかッ!?」


 シンジのいきなりの小芝居を無視して、アイリスがシンジを問い詰める。


 「これ? 『英雄アイリス、オークロードを屠る』の巻。よく出来ているでしょ?」


 「そ、そ、それにッ!! あの銅像は一体ッ!!?」


 「もちろん『英雄アイリス像』。オークロードを倒した時の様子をアレンジしました♪」


 シンジ、絶好調である。


 「門扉のレリーフといい、この銅像といい、最後の、誇張しまくった人形劇といい、恥ずかしいじゃないですかッ!! どうしてこんなことをッ!!?」


 「……それはね、英雄が治める特別な地という認識が、村人たちに出来るからだよ」


 シンジが周りを一瞬で見渡し、誰もいないことを確認すると、急に真面目な顔で話し始めた。


 アイリスの怒りと周知の赤い顔が、一瞬で戸惑い顔になった。


 「え?」


 「この村は伯爵様の直轄地で、王族に食される小麦を作っている村だよね。村人たちも、魔物に襲われても出ていこうとはしなかった。つまり、それだけのプライドを持っているからだよ」


 シンジは、じっとアイリスを見た。


 「壁が出来て安全に耕作が出来ると喜んだのに、急に騎士爵に領主が変わった。伯爵直轄地から、一介の騎士爵の領地に。これって、格下げと感じない?」


 アイリスは、戸惑いながら肯く。


 「ただ、それが英雄の領地になったとなれば話が違う。しかも、自分たちを直接魔物から救った英雄の領地。大切にされていると思うでしょ。だから、それをもっと強調しただけだよ」


 アイリスは、驚いて目と口を見開いた。


 「それで統治もやりやすくなるなら、誰にとっても良い事だしね」


 シンジがニッコリと笑った。


 「……シンジさん、そんな深慮遠謀があったなんて思いませんでした。叩いてごめんなさい」


 アイリスが深々と頭を下げた。


 「いやいや、後付けの理由としては立派でしょ? ……あ」


 「はい?」


 シンジ、ペロっと本音が漏れた。


 見つめ合うシンジとアイリス。沈黙が流れる。


 「……シンジさん、本音は?」


 アイリスの目が座った。シンジは姿勢を正し、正座になった。


 「はい、作るのが楽しかったからです! 後は拙者、目立ちたくなかったでござる!」


 シンジ、ぶっちゃけた。


 それを聞いたアイリスが、深い、深ぁぁぁいため息をつく。


 「でももう、シンジさんだって騎士爵になったんだから、目立っても良いでしょうに」


 「いや、そんなことないよ。特に、武力や魔法で目立った場合は」


 アイリスが首を傾げた。


 「考えてみて。突然現れた俺が、ひとりでオークロードを倒して魔物暴走(スタンピード)を壊滅させたり、仙桃茸を見つけたりしたら、みんなどう思う?」


 「……それこそ英雄、ですよね」


 まさに、すい星のごとく現れたヒーローだ。


 「そう。でも、その英雄は、何もこの国にルーツのない、どこから来たのかもわからない謎の男だ。味方か敵かもわからない。民衆は持ち上げるだろうさ。カッコイイし、ヒーローだし」


 肯くアイリス。


 「でも、為政者は? どう考えると思う?」


 ハッと気づいた顔をするアイリス。


 「国や貴族は、自分たちに無害で役に立つなら、鎖を付けたいよね」


 「……それはそうでしょうね」


 「でも、鎖を嫌がったら? 或いは、国内の政治バランスを崩すような存在になったら? 民衆を扇動するような事をしたら? ……大事になる前に人知れず葬るしかない」


 シンジはチュートリアル中に、この世界の歴史も学んだ。特に、転移者が滅ぼされた事例をいくつも。


 だからこそ、目立ちたくなかった。


 「でも、同じような力を持った人間がいて、それが国にとって、確実に信用できる者なら? それが複数いるなら? 安心して使う事が出来るよね」


 「それが、……私ですか?」


 「アンリさんもだね。ふたりで俺を抑えられるという形が出来れば、皆ハッピーじゃん。実際のところ、俺は裏切られない限りは裏切らないし」


 国王が突然シンジを見に来たのも、直接どういう人間かを探るためだろう。もちろん伯爵もだ。このふたりは、シンジの存在を知ってすぐに動いた。そういう意味では、ふたりとも切れる為政者だ。


 「だからね、アンリさんとアイリスさんには、どんどん力を付けてもらう予定」


 アイリスの顔が、緊張でこわばった。


 「ま、そんな訳なので、しっかりと俺を抑えてくださいな」


 シンジがニッコリと笑った。

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