表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/175

第8話、講義

 昼食の後、応接室でエヴァルトさんの講義となった。


「まずは宗教からですね。全世界どこの国でも信奉されているので、知らないでは済まされません。

 この世界シュピルフィーアを作られた2柱の神様、光と昼の女神フィーア様と、闇と夜の神トーヤ様の夫婦神です。

 昼をフィーア様が守り、夜をトーヤ様が守っている為、地の底にいる邪神は地上に出てこられません。ただ、邪神は諦めが悪く、地上侵攻の為にダンジョンを作っていると言われています。

 伝承ではダンジョンを攻略する様に神託があったとか、大神殿に神授の宝具があったとか、ダンジョンを放置すると魔物が溢れてくる事などから、実在すると信じられていますので注意して下さい」


 神様が実在するとか言われても、日本人的には胡散臭いと思ってしまうが、自分がこの世界に来た時の状況を思い出した。


「私がこの世界に来た時の光の柱。あれを考えると否定はし難いですよね」


「あれは前例が無いとはいえ、神の御技としか思えませんからね」




 それから、この国の歴史や国内情勢などを概略で教わった。詳しく知りたいなら後日時間があればとの事。

 約500年前に統一国家崩壊した際、中央平原を治めていた貴族が独立、建国したのがラントフェルガー王国。

 一番驚いたのは、大都市と大都市は転移ゲートでワープ出来る事だ。貴族と商人しか使えないらしいが、それ以外の人でも商人にお金を払えば使えるらしい。

 転移ゲートがある大都市は一定間隔で作られており、転移ゲートを使った流通路として経済を回している。


 転移ゲートは統一国家時代の遺産らしく、新たに作る事は出来ない。その為、大都市を中心に町や村が点在しているが、移動には主に馬車が使われている。

 魔道具の一種で馬型ゴーレムを使ったゴーレム馬車と言うのもあるが、動かすのにMPが多く必要なので貴族向けにしか普及していない。俺が来週行く村へも馬車移動になるそうだが、たぶん動物の方の馬車になるそうだ、残念。



 生活様式については、昨日と今日で体験したように、貴族なら現代日本に近い水準にある様だ。冷蔵庫やエアコン、ガスコンロ、湯沸かし器、照明、上水、下水等の魔道具が普及している。

 この魔道具を動かすのに必要なのが、ダンジョンで取れる魔水晶。所謂電池みたいな物らしい。いくらあっても需要は尽きないため、買い取り価格も安定しており金策にはおススメだそうだ。


 しかし、その一方でテレビや電話、ラジオと言った通信技術は殆ど無い。

 いや、領主以上しか使えない都市間通話の魔道具はあるが機密の為、公開はされておらず、砦や一部の騎士に渡されている緊急通話の魔道具も高価過ぎて(通話1回で大銀貨1枚=10万円)普及していない。


「もしかして、昨日王様に相談に行ったのは、この都市間通話の魔道具を使ったのですか?

 数時間で帰って来たので、てっきり王城が近くにあるのかと思っていましたが……」


「ああ、その通りだ。この領地から王都までは結構距離があるからね。転移門を使えば謁見出来なくもないけれど、転移門から距離があるし、なにより公務の時間を過ぎていた。緊急の都市間通話と言う事で話を通したのだよ」




 このラントフェルガー王国やアドラシャフト領は、戦争等も無く平和ではあるものの、あまり余裕はない。これはどこの国にも言える事だが、ダンジョンの対応に追われているからだ。


 ダンジョンからは、魔道具に必要な魔水晶や、薬草、鉱石、魔物素材等が取れるメリットはあるものの、放置すると魔物を吐き出して土地に魔物が溢れるデメリットがある。

 つまり、ダンジョンに対応し続けないと領地が減って行くのである。


 各国、各領地の騎士団は定期的に巡回し、ダンジョンが新たに発生していないか魔道具でチェックしている。

 そしてダンジョンが見つかれば攻略して潰すのだが、50層以下の場合にはダンジョンコアが無く潰す事が出来ない。その場合は騎士隊を常駐させて、コアが育つまで監視しなければならない。


 逆に80層以上あった場合はもっと厄介だ。現状では攻略出来ないので80層未満の魔物を狩り続けて、ダンジョンが成長しない様にしなければならない。ここで放置すればダンジョンが魔物を吐き出すからだ。

 そして魔物を狩り続けるには拠点が必要なので、ダンジョン近くに村や町を作るのだが、そこが辺境だった場合が問題になる。

 近くに他の村や町がなければ補給を受けられず、ダンジョンから取れる食料や素材のみで生活しなければならないが、大人数を賄うのは困難だ。


 採算が取れず、人数が足りずどうしようもない場合は、周辺の領地や国に相談するが、それでも無理な場合は放棄され、魔物が溢れて領地が狭くなって行くのである。



 貴族の男はダンジョン討伐が義務だとか、ダンジョン討伐した者へ貴族籍を与えるのも、50層以上で戦える人手の確保のためである。

 因みに貴族の娘は25歳までに、貴族の嫁に行けば貴族籍が貰える。




 言語が日本語だったので今更だが、通貨単位も円だそうだ。紙幣は無く、金貨や銀貨で取引されているので金貨何枚でも通じる。基本的に食料は安く、贅沢品や魔道具、スキル付き武具は高い。

 金貨と銀貨は大小の2種類で、銅貨のみ大中小の3種類。

・小銅貨:10円、中銅貨:100円、大銅貨:1000円

・銀貨 :1万円、大銀貨:10万円

・金貨 :100万円、大金貨:1000万円

 どの硬貨も10枚で上位の貨幣になるので単純だ。1円相当の硬貨は既に廃れており、仮に商売で数円が出ても切り上げか切り捨て、もしくはオマケを付けることで対応するらしい。



 そんな感じで講義は続き、夕方には終了した。

 そのまま離れの屋敷に泊まったのだが、知っている執事さんや洗濯メイドのエルマさんはおらず、若い従僕(執事さんの部下らしい)と、若いメイドさん2人しかいない。

 どうも恐れられていると言うか、得体の知れない者の様に見られているみたいで、事務的な会話しか出来なかった。

 まだ6日は離れの屋敷で暮らすのだから、仲良くしたいものである。(お風呂も一人で入ったよ……)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ