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第79話、リベンジ

 その後、昼までに9層から7層までの採取地巡りをした。

 3層分も、よく時間があったなと思うかも知れないが、走って廻った訳では無い。

 攻略済みの階層の場合、〈ゲート〉とエントランスの転移ゲートの組み合わせる事で、片道で採取地巡りが出来る事に気が付いた。


 9層 で採取してから、一旦〈ゲート〉のスキルで外に出て、転移ゲートで8層に降りて採取地へ向かう。そして、採取後にまた〈ゲート〉で外に出て、今度は7層にと言う具合だ。


 まあ、低層で巡っても、蜜リンゴくらいしかお金にならないけどな。これを12層以降でやりたい。

 午後からはレスミアが合流する事だし、12層、いや、最近進んで居ないので13層を目指したいなあ。




 お昼時になり、ダンジョンの外に出た。

 いつもの様に、ダンジョンの裏手に敷物を引き、装備品を外して一息つく。新装備の硬革シリーズは少し重くなったが、その内慣れる程度の重さで、グローブやブーツは内側が硬い様な感じがするが、使っていれば柔らかくなっていくだろう。つまり、問題無し。

 おっと、泥まみれになったブーツは今のうちに洗っておこう。


 〈ウオーター〉で泥を洗い流し、手入れをしていると、レスミアがやって来た。


「お疲れ様です。お昼にしましょう」

 アイテムボックスから料理を取り出して、準備し始めたので、俺も手伝う。


「今日は一昨日手に入った、ローストポークをサンドイッチとタコスにしました。サンドイッチの方は野菜と一緒に挟んだだけで、タコスの方は刻んでピリ辛ソースを掛けてあります」


 炎上したジーリッツァがドロップした焼豚の事だな。早速いただいてみると、柔らかくジューシーだが、ちょっと薄味かな? 塩味とハーブの香りはするが、パンに塗られたバターがあって丁度良い味になっている。タコスのピリ辛ソースも薄味を補う為のようだ。悪くない。

 更に言うなら、昨日のご馳走トンテキの記憶が残っているので、味は1段……いや2段は落ちるな。

 レスミアに、そう言った感想を伝えると、


「昨日の黒豚と比べては駄目ですよ! アレは忘れましょう。そうすれば、次食べる時に新鮮な気持ちで楽しめます。


 ただ、そこ以外はザックス様と同感ですね。でも薄味なのは、個人で塩や好きな味のソースを追加して楽しめますから、左程マイナスでは無いですよ。

 むしろ、既に調理済みなのが良いです。忙しい時に、切るだけでオカズになるのは助かります」


 メイド視点で考えるとそうなるのか。確かに調理済みの料理がストック出来るのは良い。レスミアの熱意に押されて、今後ジーリッツァを倒す際、可能なら炎上させてから倒す事になった。


 ジーリッツァのドロップ品の実績を、ストレージ内を数えて見ると、ノーマルドロップのラードが7割、レアドロップの肉(ロース、バラ合わせて)が3割。ここに炎上した業火猛進状態になると、ノーマルドロップに焼豚が加わる。ラードと焼豚の比率は分からないが、肉の確率が増えるのは間違いない。


「そこで、どう倒すかだけど、業火猛進状態になるとスーパーアーマーが付いて、ちょっとの攻撃じゃ怯まなくなり面倒だ。だから、脚をつぶし動けなくして、その後で火を点ける。これで、どうかな?」


 レスミアはスーパーアーマーが通じ無かった様で、首を傾げていた。 確かゲーム用語だったか? 通じるわけないか。〈詳細鑑定〉の説明文にあった内容を説明する。


「確かに、最初から強くさせる必要はないですよね。

 でも最初から燃えている場合はどうしましょう? 一昨日は何で燃えていたのか、分からないのですよね」


「あー、それもあったな。あの周辺を調べてみる必要もあるか……」


 昼食後のお茶の時間まで、対処法について話し合った。




 11層に降りてきた。

 ジョブは戦士レベル8、スカウトレベル7、職人レベル7に、追加スキルで初級ランク0と1を装備した。レスミアもスカウトレベル7だ。


 そして、採取地を無視して進むと、ジーリッツァとワイルドボアのセットに出くわした。発動待機させていた〈エアカッター〉でワイルドボアを倒し、突進後の方向転換でまごついているジーリッツァの脚を槍で突き刺す。反対側では、レスミアもスモールソードで別の脚を突き刺している。更に、別の脚を突き刺して、4つ脚全てを怪我したジーリッツァは倒れ伏した。ちょっと念入りにやり過ぎた気もするが、まだ死んでいないので問題ない。


 ランク0の便利魔法〈トーチ〉で火を点けると、着火地点から炎の波が円状に広がり、あっという間に燃え広がる。以前は見る余裕など無かったが、近くで見ると羊毛が燃えているのではなく、表面の油が燃えているだけ。ロウソクの芯材……いや、時代劇で見た行灯の方が近いかな?

 毛皮に滴るほど溜め込んだ油が燃え尽きるまでは、業火猛進状態が続くのだろう。それに、命を削ってなんて説明文にもあったし、もしかしたら内臓脂肪も燃やしている可能性もある。


 炎上したジーリッツァは、怪我をした脚で立ち上がると、上をみて咆哮を上げた。業火猛進状態に移行したのだろう。


 まあ、それはそれとして、五月蝿かったので、槍を喉に突き刺す。元々死に体だったので、また倒れ伏すと、そのまま動かなくなった。槍を引く抜く際、穂先に付着した油に、喉元の毛皮から火が引火して焦ったが……穂先は金属なのでセーフ。


 ドロップしたのはローストポーク、もとい焼豚だった。死にかけを炎上させても手に入る事が立証された訳だ。その後も、この方法で倒して行くが、ジーリッツァ2匹の場合は手間が倍掛かって面倒過ぎた。レスミアと手分けしたからよかったものの、ソロの時は片方をサッサと始末した方がいいな。


 そんな調子で進み、前回火の玉……業火猛進状態のジーリッツァを目撃した分岐路に到着した。各分岐先に耳を傾けて、音を探っていたレスミアが報告してくれる。


「遠くで走り回る足音が、聞こえます。奥に向かっているような…………多分2匹かな? こっちの道の部屋の向こうだと思います」


 ちょっと自信なさげに、指し示したのは、前回とは違う道だった。万全を期すために、ジョブを狩猫に切り替えて〈猫耳探知術〉を使って貰う。目を閉じて猫耳に集中しているレスミアを眺めていたいが、俺も事前準備を始めた。


「ザックス様、地図貸して下さい…………ここですね。奥へ走っている2匹が、3つ先の小部屋に突入しました。あ、鳴き声と足音が4つに……地図によると行き止まりなので、ここの分岐路まで戻って来そうです」


 レスミアが地図を指し示しながら、現状報告をしてくれる。〈猫耳探知術〉を使ってから、報告内容が詳しくなった。音響レーダーかな?

 どの道、放置して前回の二の舞いになるのは避けたい。あれから手札も増えて、〈猫耳探知術〉で事前に察知出来たのだ。4匹相手でも、迎撃して先に倒すぞと、レスミアに話した。


 2つ先の部屋くらいなら、普段の猫耳でも察知出来ると言うので、レスミアのジョブをスカウトに戻しておく。



 ステータスを閉じると、レスミアが笑顔で両手を差し出していた。残念ながら、ハグを要求しているわけではなく、その熱い視線は俺の右手に注がれている。まあ、魔物の数が多い時の役割分担として話し合った結果なので、しょうがない。右手に持っていたミスリルソードを手渡した。


「やったー。この間は無我夢中でしたし、ちゃんと使い勝手を試す前に終わってしまったんですよね。…………これです、これ! 剣が軽いだけでなく、身体まで軽くなるような感覚!」


 早速、鞘から抜いている。身体が軽いのは、ミスリルソードの付与スキルのせいだろうに。

 業火猛進状態だと近付くのも危険で、遠くから矢を射掛けても、木製部分が燃えて勿体ない。魔法か槍ぐらいしか対抗手段がなかった。その槍も一撃で倒せる訳でも無く、柄は木製なので、攻撃した時に油が垂れてきて延焼の危険性もある。

 そこでミスリルソードだ。ロングソード並みに長く、斬撃耐性の上からでも攻撃が通る(筈、素材的に)。そして、俺は魔法があるので、レスミアが使いたいと熱望して来たのだ。


「レスミアは、俺の魔法で討ち漏らした奴だけでいいからな。最初に範囲魔法を使うから巻き込まれるなよ!」

「分かってますよ~……っと、豚肉達が隣の部屋に入ったみたいです」


 その言葉に、魔方陣への充填を始めて、通路の先へ目線を移す。奥から火の玉がポツポツと出現して、近付いて来ているのが見えた。

 通路の半分が過ぎた頃に充填が終わり、点滅魔方陣が天井に現れる。先頭から2匹目にロックオンしてから発動した。


「〈ロックフォール〉!」


 点滅魔方陣が茶色に変わり、釣鐘状の岩塊が出現して落下する。先頭のジーリッツァは走り抜けて、落下箇所から逃げ延びたものの、後続の3匹は岩塊で押し潰された。


 レスミアはミスリルソードを手に持ったまま、猫耳を押さえていたが、討ち漏らした1匹がこちらへ向かっているのを見ると、剣を構えて駆け出した。付与スキルのせいか、普段よりも軽やかに駆け、燃えながら突進してくるジーリッツァとすれ違うように剣を振るう。緑色に光る剣閃が円弧を描くと、ジーリッツァの片側の脚2本を切り飛ばした。


 ジーリッツァがゴロゴロと転がって行くが、その転がり跡が地面に炎の絨毯をつくっている。油を溜め込み過ぎだろ、焼夷弾か何かだろうか?……ともあれ、ミスリルソードなら斬撃が効くようだし、後はレスミアが止めを刺すだろう。俺は一足先に〈ロックフォール〉の岩塊を回収に向かった。ドロップ品が出る前に回収しないと、押し潰されてローストポーク煎餅になってしまうからな。

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