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第711話、ザクザク晶石、宝石ザックザックザック

 10個しか土山はないが、ミスリル鉱石が採れる事を願って、作業を開始した。いつも通り、俺とベルンヴァルトで土山を壊して行くのだが、今回は発破職人が覚えた新スキルがあるので、それを試したい。


 土山の一つに対して、〈穿孔(せんこう)〉を使用すると、上面に1㎝くらいの丸い穴が開いた。穴を覗き込んでみたが、結構深い。

 続いて〈簡易発破〉を使用すると、『ボンッ!』と()()()の破裂音がして、穴から粉塵が噴き出ると共に土山が崩れ落ちた。音が小さかったのは〈簡易発破〉と連動して自動発動する〈粉塵風防〉の効果だろう。半透明の緑色の結界か土山を包み込み、粉塵や大音が外に出るのを防いだのだ。

 そして、最後の仕上げに、岩石を分解して砂にする〈パルベライズ〉を掛ける。〈粉塵風防〉の結界の中に砂ぼこりが巻き上がったが、1分ほどすると納まる。緑色の結界が消えると、そこには砂山が残っていた。


「取り敢えず、こんな感じかな。後は、砂を掻き分けて宝石や金属を探すか、〈ライトクリーニング〉で砂だけ消すか。

 レスミアは自分で探す方が好きだよな?

 はい、この熊手を使ってくれ。こんな風に、砂を広げるように掻いてやれば…………」


 自作の熊手を取り出し、実演して見せる。砂山を崩して数回掻いてやると、直ぐに何かが爪に当たった。出て来たのは、緑色に反射するミスリ……ではなく、宝石のエメラルドだった。3㎝大の球体で結構大きい。50層未満で見つけた宝石よりもデカいな。単に51層だからマナが豊富で大きいのか、〈採取の心得上級〉の豊作効果なのか。

 手に取って皆に見せると、レスミアとフィオーレが喰い付いた。


「わっ! いきなりエメラルドなんてついてますね!」

「でっか! お貴族様が身に着けてそうな宝石じゃん」

「ははは、パッシブスキルの〈宝石狙い〉のお陰かな?」


 本当はミスリルを期待したのに、紛らわしい。いや、宝石は使い道が色々あるし、換金性も高いので、あって困る物ではないけどな。

 レスミアとフィオーレが熊手を使って宝探しを始めると、後ろから挑発するような声が降ってきた。ウーツ鋼製(自作)のつるはしを肩に担いだベルンヴァルトである。


「しっかしよ、スキル3回も使う方が手間じゃねーか?

 今まで通り、つるはし振るった方が早いぜ!」


 そう言うと、反対側の土山をつるはしでガンガン叩き、突き崩す。筋力値Aのステータスは伊達ではない。あっという間にバラバラにすると、今度はピック(尖った部分)とは逆のハンマー部分で岩を叩き、更に細かく砕いていく。

 以前は分担してシャベルで突き崩していた作業だな。最近はベルンヴァルトの作業が早いので、兼任出来るようにつるはしを改良したのだ。


 ある程度小さくしたところで向き直り、ルティルトさんに向かってサムズアップをして見せる。


「うっし、後はルティ先輩、〈ライトクリーニング〉を頼むぜ」

「ああ、それくらいは手伝おう。今日はこれで終わりなら、MPも余るからな。〈ライトクリーニング〉!」

「わたくしも、拾うくらいは手伝いますわ」


 ソフィアリーセは、砂にまみれて宝探しをする気はないようだ。レスミアの作業を眺めていたが、ルティルトさんに付いてベルンヴァルトの方を手伝いに行った。

 手分けして作業をするのは、いつもの事なので問題ない。メインが俺とベルンヴァルトと決まっているだけであり、他の面々は好きにさせている。疲れているメンバーを休憩させる事もあるからな。急ぐときは〈ライトクリーニング〉で土砂を除去して時短をしても良いし、レスミアのように宝探しを楽しんでも良い。

 まぁ、土山10個じゃ、大して時間も掛からないけどな。



 選り分け作業をレスミアとフィオーレに任せて、俺は次の土山をスキルで砂山に変える。2回目なので横着して、いきなり〈パルベライズ〉を使ってみたが、ランク3の範囲魔法くらいにはMPが必要だった。1回目では、消費した魔力はランク1よりも少なかったので、土山を壊さずに使うと燃費が悪すぎるな。俺なら兎も角、普通の発破職人ジョブには重い消費だと思う。


【スキル】【名称:パルベライズ】【アクティブ】

・指定範囲に存在する岩石を分解して砂にする。ただし、金属や宝石など硬度の高い物は分解できず、術者の足元は指定出来ない。この時、対象の岩石が大きければ大きいほど消費魔力が増える為、ある程度バラシておくと節約になる。


 鑑定文に合った通りだ。ついでに〈粉塵風防〉の結界もないので、分解して下に落ちた砂が舞い上がり、少なからず粉塵が周囲に舞ってしまう。風魔法ランク0〈ブリーズ〉で人の居ない方へ吹き散らしたが、人が近くにいる時は使わない方が良いな。

 ただ逆に言うと、MPを気にせず使える状況で、離れた土山を1人で〈パルベライズ〉するなら、時短になる。〈ライトクリーニング〉も連続して使えば、あっという間だな。ベルンヴァルトと競争しても圧勝だろう。

 この辺も状況によって使い分けだな。節約するなら〈穿孔〉〈簡易発破〉〈パルベライズ〉を順に使うか、全部手作業でやるか。急ぎや、今日みたいに帰るだけならMPを気にしないで良いので、〈パルベライズ〉〈ライトクリーニング〉で即行に終わらせるか。


 等と考えていたら、横から慌ただしい声が上がった。


「あっつ!! ナニコレ?! ザックスー、何か変なの出たよ~」


 ギィンッ、ギィンッと、何かを叩く音に呼ばれて戻ると……フィオーレが熊手で石球を叩いていた。ただ、普通の石球ではなく、赤黒く仄かに赤く光る球体だ。叩かれた場所が、更に赤くなっていた。

 見覚えがある素材なので、軽く注意をしてから〈詳細鑑定〉を掛けた。


「おいおい、それも重要な新素材だから、壊すなよ。そのくらいなら火傷する程の温度じゃないけど、魔力を込めるとミスリルを溶かす温度にまで上がる『豪炎石炭』だ」



【素材】【名称:豪炎石炭】【レア度:B】

・火属性のマナが無秩序に詰まった石炭。安定していないので、振動が加わるとマナが漏れ出て熱くなる。ただし、魔力を込める事で激烈に燃焼し始め、一気に火力が上がる。

 レア度の高い金属すらも溶かす為、鍛冶で重宝される。

・スキルエンチャント時:〈ディスポ・ファイアマイン〉



 以前、フェッツラーミナ工房に新型炉(王族からの支援)が入った後に、見学させてもらったので知っていた。その炉で使われていた燃料だな。ここのダンジョンで採れるとは丁度良い。ミスリルも溶かす石炭なので、セットで融通すると鍛冶工房に喜ばれるのだ。

 スキルエンチャントにも使えるようだけど、何だろうな?

 特殊な〈ファイアマイン〉と推測出来るが、『ディスポ』の意味が分からない。

 俺が頭を悩ませていると、今度はレスミアが弾んだ声を上げた。


「あ、こっちも初めて見る石ですよ! 黄緑色の魔水晶? 火晶石とかの属性違いでしょうか?」



【素材】【名称:深緑晶石】【レア度:B】

・ダンジョンの木属性のマナが凝縮した魔力の結晶体。魔道具の動力源になる他、畑や花壇に刺すと植物の成長を促す効果がある。ただし、成長に使うと晶石自体が消耗する。



 やはり属性が偏った魔水晶の一種だった。『深緑』なんて名前だが、石自体は黄緑なので色を示した名前ではないようだ。『深緑が深まる』なんて言葉もあるから、植物の生長関連かな?

 採れた鉱石を見てみると、既知の鉱石も多いが、魔水晶系も多い。〈魔水晶狙い〉のパッシブはOFFにしてあるのに……因みに、51層まで来たせいか、純粋な魔水晶は殆どない。大サイズの魔結晶や、各種属性晶石ばかりだな。中級属性の晶石は他にも産出しており、白っぽい『氷結晶石』と、紫色の『雷光晶石』である。



【素材】【名称:氷結晶石】【レア度:B】

・ダンジョンの氷属性のマナが凝縮した魔力の結晶体。魔道具の動力源になる他、水分に触れると凍らせる効果がある。ただし、冷凍に使うと晶石自体が消耗する。



【素材】【名称:雷光晶石】【レア度:B】

・ダンジョンの雷属性のマナが凝縮した魔力の結晶体。魔道具の動力源になる他、静電気を吸収する効果がある。

 吸収させた分だけ、内容量のマナが増える。



 成程、初級の4属性は魔水晶の亜種でしかなかったが、中級属性はバッテリー以外にも使えるようだ。氷結晶石は冷蔵庫や冷凍庫の魔道具を動かすのに良いと聞いた覚えはあるが、単体の効果は知らなかった。まぁ、〈フリーズタッチ〉の魔法があるから俺には使い道は無いと思う。砂漠や火山フィールドに挑戦するパーティーが、飲み水を冷やすのには使えるか? 費用対効果は微妙だと思うが。

 雷光晶石は冬場に携帯しておくと良いかも? 静電気でバチッとする前に吸収してもらえる。


 街に帰ってからの話であるが、この三種に〈相場チェック〉を掛けると、深緑晶石は【4万円】、氷結晶石と雷光晶石は【2万円】だった。結構お高い。深緑晶石だけ高いのは、農産物の収量を増やせるからだろう。




 さて、5個の砂山で宝探しを楽しんだ訳だが、あまり結果は宜しくない。目ぼしい成果は宝石3個のみで、残りは魔水晶系とウーツ鉱石や銀鉱石といった既存の金属だった。もちろん、レア度Bに上がって、含有量も球体に近いほどに増えている。掘れた個数自体も50層以下よりも多いのだが……



【宝石】【名称:エメラルド】【レア度:B】

・高密度の風属性のマナが凝縮した宝石。厳密には鉱物としてのエメラルドとは別物。

 内部に大量のマナを貯蔵することが出来、放出する時に風属性の魔力となる。魔道具の動力源や、魔法の発動媒体として使われるが、その美しさから宝飾品としての需要も高い。発動媒体にした場合、風属性の威力が上がる。

 外部から魔力を注ぐことで繰り返し使うことが可能だが、内包するマナが少ないときは強度も落ちるので注意が必要。

・スキルエンチャント時:〈突風〉



【宝石】【名称:モスアゲート】【レア度:B】

・高密度の木属性のマナが凝縮した宝石。厳密には鉱物としてのモスアゲートとは別物。

 内部に大量のマナを貯蔵することが出来、放出する時に木属性の魔力となる。魔道具の動力源や、魔法の発動媒体として使われるが、その美しさから宝飾品としての需要も高い。発動媒体にした場合、木属性の威力が上がるほか、回復の奇跡の回復量が上がる。

 外部から魔力を注ぐことで繰り返し使うことが可能だが、内包するマナが少ないときは強度も落ちるので注意が必要。

・スキルエンチャント時:〈樹木〉



【宝石】【名称:ムーンストーン】【レア度:B】

・高密度の氷属性のマナが凝縮した宝石。厳密には鉱物としてのムーンストーンとは別物。

 内部に大量のマナを貯蔵することが出来、放出する時に氷属性の魔力となる。魔道具の動力源や、魔法の発動媒体として使われるが、その美しさから宝飾品としての需要も高い。発動媒体にした場合、氷属性の威力が上がる。

 外部から魔力を注ぐことで繰り返し使うことが可能だが、内包するマナが少ないときは強度も落ちるので注意が必要。

・スキルエンチャント時:〈氷柱〉



 晶石はスキルエンチャントには使えないようだったが、宝石なら素材になるようだ。ただ、これも名前だけじゃ何か分からない……と思いきや、〈氷柱〉は見覚えがある。俺のミスリルバスタードソードに付与されている物と同じだ。(アイシスパペットのドロップ品、アイシスメタルも同じエンチャント)


・〈氷柱〉:武器に氷属性を付与。攻撃に追加属性ダメージ中を加える。


 つまり、属性違いの宝石なので、〈突風〉と〈樹木〉も属性付与のスキルと推察される。悪くない。杖やアクセサリーにすれば魔法の威力を上げ、武器にスキルとして付与すれば永続の属性が得られる。宝飾品に使われる事も加えれば、需要が多いわけである。

 ただし、肝心の付与の輝石、更にその素材のミスリル鉱石がないと付与には使えない訳で……ミスリル鉱石が0とはね。レスミアとフィオーレは、初めて見る種類の宝石で喜んでいるから、良いけどさ。


 ソフィアリーセ達とも合流し、互いの成果を報告しあったところ、互いに羨む結果になった。そう、向こうは宝石が出なかったが、代わりにミスリル鉱石と金鉱石が採れたのだ。


「でも、数では負けてしまったわね。宝石3つに対して、わたくし達が見つけたのは1個ずつですもの」

「エメラルドは初級属性だから、新規の宝石は2個だけさ。引き分けって事で。それより、ミスリル鉱石を見せてくれよ」

「ええ、勿体ぶった訳ではないのだけどね……」


 そういって差し出されたのは、2個の鉱石球である。直径10㎝の硬球サイズの球体に、金属が層の様に含有しているのだ。その鉱石玉にはそれぞれ、角度によってエメラルドメタリックに反射する層と、ゴールドな層が出来ていた。

 ただし、層の厚さは1㎝程度……少な!!


 ……いや、金貨換算だと数枚分はありそうだから、多いのか?

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