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第732話、仲の悪い素材達

 自分担当のツインヘッドリザードを倒した後、周囲の状況確認をした。

 ベルンヴァルトは既に倒した様であるが、何故か切り落とした首の方に斬撃を加えている。試し斬りかな?

 ルティルトさんの方は、緑の首だけのツインヘッドリザードと戦闘中だ。頭が一つなので、爪と噛み付きによる素早い連続攻撃に苦戦……いや、善戦しているな。嚙み付きをステップで回避し、前脚の薙ぎ払いを〈シールドバッシュ〉で打ち返し、カウンターでミスリルスピアを突き刺している。よく見ると、ツインヘッドリザードの方は鱗が穴だらけだ。結構タフだな。


 そして、レスミアの方も戦闘中だ。〈ステルス迷彩の術〉が切れたのか姿を現しており、足元に炎の車輪を出して高速移動をしている。猫又ジョブの〈炎華輪(えんかりん)〉だな。赤い首だけのツインヘッドリザードを中心に、ぐるぐる周りを走りながらヒット&アウェイを仕掛けていた。

 スカートをはためかせ炎のブレスを回避し、鋭角で方向転換。急接近して長い首を斬撃している。ただ、俺と一緒で、鱗は斬れても致命傷には遠い。


 どちらも善戦はしているが、手伝った方が良いか?

 少し迷ったので、後衛のソフィアリーセの方へ目を移すと、手を振り返される。そして、彼女は手にしていたビームソード、『虹閃光の孔雀扇』の先に付いた赤い魔剣術を構え、振り払った。


「〈エレメンタル・ヴォイドオーバーブラスト〉!」


 ソフィアリーセの凛々しい声と共に、空間の歪みが半球状に広がっていく。〈エクスプロージョン〉の威力を強化した魔剣術の超広範囲スキルは回避など不可能である。高速に広がる歪みが、ツインヘッドリザード2体を飲み込んだ。高威力の属性ダメージが叩き込まれ、ルティルトさんと対峙していた緑のツインヘッドリザードが倒れ伏した。

 ただし、レスミアと対峙している赤のツインヘッドリザードの方は、よろめいただけで直ぐに復帰する。こちらは火属性に耐性があるから、倒しきれなかったようだ。首によって弱点が違うのは面倒である。

 残った1体は、〈影縫い〉で拘束し、レスミアに止めを任せた。〈狩の本能〉で急所の位置は分かっていたらしいのだが、〈炎華輪〉の高速移動中に狙うのは難しかったのと、意外とツインヘッドリザードが急所を庇うのが上手かったそうな。

 そんな話をしていたら、ルティルトさんが走ってきた。


「待った、ミーア! 急所の位置は私にも教えてくれ」

「良いですよ~。頭の急所は目の後ろの辺り……この辺ですね。ただ、私の攻撃では1回当てても、切れなかったのですよ……たあっ!」


 レスミアが頭蓋骨らしき場所にミスリルサーベルを振り下ろしたが、傷が付いただけである。急所だけに守りも硬いようだ。


「〈不意打ち〉が効いていた時は、首を輪切りに出来たのですけどね。途中から〈ステルス迷彩の術〉を見破られたみたいで、執拗に追っかけてくるし、結構苦手な魔物かも?」

「透明なのを見破るか……これかな?『相方の頭を倒した敵へ突撃する』、何らかの方法で察知して、敵討ちをしようとしているとかさ。セルフで〈挑発〉状態になっているのかも?」

「考察はそれくらいにして、そろそろナイフが抜けそうよ。次は、私に試させて」


 ルティルトさんはミスリルスピアを構えると、裂帛の掛け声と共に一突きする。丁度、レスミアの付けた傷口から吸い込まれた一撃は、見事頭を貫通するのだった。


 これにて、敵の全滅を確認っと。投げナイフを回収し、後衛の2人にも終わったことを伝えると、ようやくフィオーレが〈癒しのララバイ〉を弾き始めた。大してピンチにもならなかったので、弾くタイミングを逃していたのだろう。少しだけ減っていた前衛陣のHPが回復し、戦闘での疲れが消えていく。まだ、本日1戦目なので、あんまり疲れてないけどな。

 フィオーレに演奏中止を伝えていると、近くに居たベルンヴァルトが笑いながら合流した。


「はっはっはっ! 今回の魔物は戦い易くて良いぜ。この、ミスリル武器で首をぶった切るだけだからな!

 おらっ! っと、この通りだぜ!」


 上機嫌に笑ったベルンヴァルトは、昨日手に入れたばかりのミスリルフランベルジュを大上段から振り下ろし、頭に穴が開いたツインヘッドリザードの首を切り落とすのだった。

 流石は鬼人族の膂力と、ミスリルフランベルジュである。俺のミスリルバスタードソードでも〈一刀唐竹割り〉していれば、多分両断出来ていたと思うけど(謎の対抗心)。

 亡骸が霧散化し始めたので、反省会は後回し。ドロップ品を皆で回収した。


 手に入ったのは、第2部隊も手に入れていたトカゲの鱗皮が3枚(緑2枚、赤1枚)、バゼラードくらいある歪曲した大爪(緑)が1個、後はアイシスメタルが2個だ。



【素材】【名称:ツインヘッドリザードの鱗皮(緑)】【レア度:B】

・風属性の力を蓄えたリザードの鱗付きの皮。ミスリルには及ばないものの、軽くて丈夫であり防具の材料として人気がある。最後に残した方の首の属性がドロップする為、倒す順番に気を付けよう。

・スキルエンチャント時:〈風属性耐性 中〉



【素材】【名称:ツインヘッドリザードの鱗皮(赤)】【レア度:B】

・火属性の力を蓄えたリザードの鱗付きの皮。ミスリルには及ばないものの、軽くて丈夫であり防具の材料として人気がある。最後に残した方の首の属性がドロップする為、倒す順番に気を付けよう。

・スキルエンチャント時:〈火属性耐性 中〉



【素材】【名称:ツインヘッドリザードの大爪(緑)】【レア度:B】

・風属性の力を蓄えたリザードの爪。ミスリルには及ばないものの、ウーツ鋼の盾でも貫通出来る威力を持つ。

 最後に残した方の首の属性がドロップする為、倒す順番に気を付けよう。

・スキルエンチャント時:〈突風〉



 赤と緑で2色あると思ったら、首の色が関係していたのか。それぞれ火属性と風属性を備えているので、これで武具を作ったり、付与スキルの素材にしたりする時は、欲しい方の首を後に残せば良いようだ。

 多分、ミスリル装備を整えるまでの繋ぎだろうな。後は、ツインヘッドリザードに苦戦するパーティー用とか。両方の耐性を武具とアクセサリーに仕込めば、ブレスダメージを軽減出来る……いや、あいつらに苦戦=ミスリルを調達出来ないなので、付与の輝石が要るスキルエンチャントよりも防具を作った方が良いかも?


 大爪の方も同様だな。〈突風〉は宝石のエメラルドの付与スキルと一緒である。おそらく、風属性付与だと思うので、こいつを付与した武器なら、赤い首の弱点を突きやすくなるのだろう。その逆に、大爪(赤)は火属性で、緑の首の弱点を突ける。


 ……なんでこいつら、素材になってまで相方と仲が悪いんだ?

 片方を倒すと逆襲に来るのにな? 良く分からん魔物である。


 ともあれ、ミスリル装備を半分揃え、残りを発注している俺達にとっては、スキルエンチャントの素材くらいしか使い道はないな。これなら、お肉をドロップするブリッツホルンの方が美味しい敵だったとも言える。まぁ、出現魔物に文句を言ってもしょうがない。全員で集まって、軽く反省会をした。




 レスミアの話によると、弱点は胴体にもあるらしいが、お腹側なので四つん這いの状態からは狙い難い。それに、胴体にも攻撃を加えていたルティルトさんによると、穴だらけにしても平気で動いていたので、結構タフなようだ。首を2つ落とすのが早いだろう。

 そして、その首も開幕に範囲魔法を使えば、片方は確実に倒せる。さて、どちらの首を先に倒そうか?


 扇状に広がる、射程10mの炎のブレス。

 直線状に飛ぶ、射程30mの竜巻ブレス。


 どちらも厄介と言えば厄介である。ただ、どちらが組みやすいかと言えば、炎のブレスの方がマシなのだった。

 なぜならば、前衛陣(俺以外)の装備品に火属性耐性を持っているからだ。

 レスミア(とソフィアリーセ)の『氷華花咲くロングテールドレス』には〈火属性耐性 大〉。

 ベルンヴァルトの『血魂桜ノ赤揃え』には〈火属性耐性 中〉に加え、〈HP自然回復増加 大〉もあるので多少のダメージなんて回復してしまう。

 ルティルトさんは、火山フィールド攻略時の〈火属性耐性 中〉付きアクセサリーを持ってきていた。


「風属性耐性のアクセサリーも持ってきたから、どちらでも対応出来るわ。別々のアクセサリーだから、両方って訳にはいかないけどね」


 今朝、フェルスラーフさんからの鑑定情報を見てから、装備アクセサリーを変えて来たそうだ。武家のセアリアス家なので、その手の属性耐性、状態異常耐性のアクセサリーは充実しており、色々借りて持ち込んでいるらしい。個人の持ち物なうえ、高価なアクセサリーだから、貸し借りは出来ないけどな。


 一応、パーティー資産である『火属性無効のタリスマン』もあるのだが、誰に装備させようかと相談したところ、俺が装備しろと反論されてしまった。なんか、最近もあったようなデジャヴ。


「いや、俺は〈空蝉の術〉で回避できるし、〈封魔剣〉でブレスも掻き消せす事も出来る……レスミアが火傷しないように持っておいた方が良いじゃないか?」

「私は基本的にステルス迷彩していますから、狙われませんよ。次の作戦だと、ザックス様が狙われ易いのですから、持つべきです」

「そうね、〈空蝉の術〉は1回きり、〈封魔剣〉は事前に使っておかないと駄目よね?

 万が一を考えたら、ザックスが持ちなさいよ」


 などと、婚約者2人掛かりで説得されては、頷く他ない。全面降伏して、俺が装備する事になった。



 問題は、ベルンヴァルト以外だと、ミスリル武器であっても一撃では首狩りが出来ない点か。

 これを解決する手段は、簡単である。魔剣術による弱点を突けば、切れ味も上がる筈なのだ。ただし、ルティルトさんは魔導剣士も育てているのだが、風属性の適性が無い。

 その為、今回はフィオーレの祝福の楽曲を頼る事にした。丁度良い曲があるのだ。



【スキル】【名称:風劇のファンタジア】【アクティブ】

・味方全体の武器に、風属性を付与する祝福の楽曲。付与された状態で攻撃すると、風属性の追加ダメージ中を相手に与える。演奏している間、永続して効果が続く。



 属性付与の祝福の楽曲だ。宮廷楽師のレベルを上げた事により、初級の4属性は全てコンプ済みである。付与導師も初級属性の付与は覚えているが、全員に付与できる祝福の楽曲は使い勝手良い。


 開幕の火属性オーバーブラストで緑の首を倒し、残った赤い首は属性付与して倒すって寸法だな。結構シンプルな戦術である。後はアイシスパペットの戦術と混ぜて、2種類の魔物の数に合わせた対応をするだけだ。

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