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第707話、ソロ戦闘と司教レベル50まとめ

 あらすじ:アイシスパペット6体編成にソロで挑むぞ!

 事前準備として、特殊アビリティの追加スキル1枠に〈モノマネ芸〉をセット。仲間スキルを使えるようになる〈モノマネ芸〉には、猫又ジョブのパッシブスキル〈無音妖術〉をコピーさせてもらった。後は光属性魔法〈インビジブル〉で姿を消して、潜入するだけだ。

 見えない、音も聞こえない状態にすれば、アイシスパペットの索敵を免れるのはレスミアが実証済みだからである。


「おっと、念の為にレスミアのミスリルサーベルも貸してくれないか?

 俺の黒刀より、攻撃力は高い方が良いんだ」

「はい、どうぞ。

 でも、失敗した時は合図を出してくださいね。援護に行きますから」


 透明化状態で、差し出されたミスリルサーベルを鞘から引き抜いた。すると、一拍おいてからサーベルも透明化していく。〈ステルス迷彩の術〉は術者を中心とした範囲を透明化するが、〈インビジブル〉は掛けた者(装備品含む)だけ透明化する。装備品と認識されれば、後追いでも透明化してくれるようだ。

 ちょっと心配そうな顔を見せたレスミアに、笑い掛けて……透明化で顔が見えないだろうから、努めて明るく、楽勝だとアピールしておいた。


「ハハハッ、援護も要らないって。

 失敗した時は、〈緊急換装〉で聖剣装備にして、更に〈超加速〉で全部ぶった切るからさ」


 ぶっちゃけると、レベル上げとか気にせずアビリティポイントを贅沢に使えば、51層でも楽勝だろう。ただし、〈超加速〉は毎回使うと身体の負担が重いし、何より巨大ダンジョンをソロで移動するのはつまらないからな。仲間達とワイワイ喋るのも重要なストレス発散なのだ。

 それでも、ソロで戦えるか確認するのは、考えた戦術の実用テストだな。机上の空論では意味がないし、良くても悪くても他の戦術を考える時の参考情報となるからだ。サードクラスで増えたスキルの特性を全部把握しているかと言われると、怪しい部分もあるからな。



 皆には見学を指示しておいて、俺は一人大部屋へと足を踏み入れた。

 〈無音妖術〉のお陰で、足音を潜める必要もない。軽く駆け足をしてみたが、全く音が出ないのは凄いな。いや、凄く便利なのは知っていたが、レスミアの世界を実際に体験するのは別物だからである。


 部屋の中央辺りに、アイシスパペット6体が横一列に並んでいる。ただし、周囲を警戒しているのか、別々の方向を向いていた。もちろん、全員の手には充填済みの〈ブリザード〉の魔方陣が光っている。

 アイシスパペット退治のセオリーである〈発勁烈波〉を連打したとしても、2体か3体倒せれば良いところだろう。ゴーレムコアが内部で破裂する音が響くので、気付かれた後は乱戦になる。まぁ、〈ブリザード〉3発分のダメージを許容範囲として受け止めるかは、個々の精神力のステータスやバフの有無によるな。


 ただ、今回は別のスキルを使う。理想は、不意打ちの一撃で6体をまとめて切り倒したいのだ。


 各アイシスパペットの向いている方向を確認し、死角を探す。ただし、時折向きを変えるのが厄介である。一定時間毎に、回れ右をしているようなので、位置とタイミングを見計らって、小声でスキルを発動させた。


「(〈雷光閃・裂雷〉)」


 国の英雄の切り札である。スキルなのに、ランク8魔法よりも1.5倍のMPを必要とするが、長大な雷剣を作り出して広範囲を薙ぎ払うのだ。昨日使った時は、楽々と一刀両断したので、威力は申し分ない。ただし、広範囲を薙ぎ払うといっても、心臓のゴーレムコア×6を狙うには、ある程度近付かないと狙いにくい。透明化して接近したのは、この為だ。


 口元を押さえ、発動キーワードを小声で言ったので、一番近くのアイシスパペットがキョロキョロし始めただけで、ギリギリ気付かれていない。

 ただ、スキルが発動すると身体が勝手に動き、右手のミスリルサーベルを頭上に掲げた。そして、刀身を包むようにして、紫のビームサーベルが伸びる……あっあっ、発動時の演出は止められないうえに、透明化出来ていない!

 雷属性の魔力圧?を検知したのか、アイシスパペットが全員一斉に振り向いた。


 掲げていた雷剣を降ろして、左構えにする。

 同時に、アイシスパペット達も魔方陣をこちらに向けた。


 ……南無三!

 右手を薙ぎ払い、心臓の高さを横一文字に切り裂くのと、敵の魔方陣が光ったのは、ほぼ同時であった。

 アイシスパペットが12個に切り裂かれたのが見られたのは、一瞬だけ。直ぐに視界は真っ白なブリザードで閉ざされた。しかも、〈ブリザード〉×6分の属性ダメージが身体を凍てつかせる。

 ……ダメージが痛いのか、寒過ぎて呼吸する肺が痛いのか分からん!

 HPバーが一気に削られて、6割減。ここまでHPが減ったのは久しぶりである。


 更に悪いことに、スキル後の硬直が長い。吹雪のドーム6重掛けは、身体の芯まで凍えるような寒さである。

 近くで落雷が6連打したが、気にする余裕もない。どうせ、〈雷光閃・裂雷〉の追加効果だから無視していいだろう。(雷弱点に追加で雷を落とす)



 寒さに震えながら、硬直が解けるのを今か今かと待つ。大技なだけに硬直時間も長いが、10秒もなかった筈……身体が動くようになってから、一目散に〈ボンナリエール〉で後ろに脱出した。

 しかし、吹雪のドームを脱出したのに、身体の震えが止まらない。それもその筈、視界の隅に映るHPバーの横には雪だるまマークが出現していた。凍結の状態異常だ。

 国の英雄は〈全状態異常耐性中アップ〉のパッシブスキルを持っているが、〈ブリザード〉6連続の判定ですり抜けたようである。想像以上にキツイな。身体が震えすぎて、ポーチに準備したヴァルムドリンクを取り出すのも苦労しそうだ。


 今回は保険の〈空蝉の術〉や〈リアクション芸人〉はセットしていない。何故ならば、相打ちになった場合に、転移や吹き飛びでこちらの攻撃が中断されてしまうからである。

 6発喰らっても死なない核心はあったし、別の保険をセットしておいたのだ。その保険は、俺が状態異常に掛かってから、自動で発動するタイプである。いつの間にか左手に灯っていた奇跡の魔方陣が勝手に充填されており、程なくして完成、発動キーワードを言わずとも光を放った。



【スキル】【名称:自動薬箱】【パッシブ】

・自身のHP 3割以下になった場合、〈キュア〉の回復の奇跡を自動で充填、発動する。

 また、自身が状態異常に掛かった場合、その状態異常回復に対応する奇跡を自動で充填、発動する。

 ただし、対応する状態異常回復の奇跡を習得していなければならない。MPが足りない場合は発動しない。



 発動したのは、凍結を癒す〈ディスフリーズ〉である。魔方陣から溢れ出た淡い光に包まれると、すっと寒気が消えていった。司教レベル50までで、石化以外の状態異常を治す奇跡を習得しているので、セットしておくだけでも安心感が違うな。

 難点としては、充填するまで身体の痛み等を我慢しなくてはならないのと、自分にしか効果がないくらいだろう。今回の様にソロで状態異常になるのは致命的なので、新しい保険としてセットしておきたい。


 それと、現在のHPは4割くらいなので、〈自動薬箱〉のHP回復と状態異常回復、どちらが優先されるのか、はたまた両方が同時発動するのかは確認出来なかった。仕方がないので、自前で〈キュア〉を使って回復する。ドロップ品のアイシスメタルやゴーレムコアを回収し、皆と合流した。






 ここで司教レベル50までのスキルを確認しておこう。例によって、確認済みのスキルの説明は省略する。


【ジョブ】【名称:司教】【ランク:3rd】解放条件:司祭Lv50以上、『他者を治療する、バフを掛ける、状態異常を治療する』を累計で100回以上行う

・位階が上がり、創造神の奇跡を体現する者へとなった。神の代弁者として〈真偽の裁定〉を使い裁判を執り行う役目もある。神へ魔力と祈りを捧げる事で、欠損すら癒す回復の奇跡を授かる。状態異常に治せぬものは無い。

 ただ、打たれ弱いのは相変わらずなので、パーティーの後方で結界を張って仲間を回復することに専念しよう。


・ステータスアップ:HP大↑、MP大↑、知力値中↑、精神力大↑、敏捷値小↑

・初期スキル:司祭スキル、真偽の裁定、ホーリーフィールド

・習得スキル

 Lv 10:HP大↑

 Lv 20:魔封耐性中↑、キュア・アイサイト

 Lv 25:フィリングシールド、キュアサークル

 Lv 30:麻痺耐性中↑、ソファンフィールド

 Lv 35:ディスデェフ、アネスシージア

 Lv 40:毒耐性中↑、自動薬箱

 Lv 45:ディスクローズ、ホーリーピラー

 Lv 50:盲目耐性中↑、ディスフリーズ、ディスシール



【スキル】【名称:真偽の裁定】【アクティブ】

・一定時間、青い球体を召喚する。その後、術者の質問に対して返答された内容が真実か判別できる。真実なら球体は青のまま、嘘なら赤くなる。ただし、中立の第3者が10名以上いる場でなければ使用出来ない。


【スキル】【名称:ホーリーフィールド】【アクティブ】

・害意を寄せ付けぬ結界の奇跡。術者中心に巨大な防御結界を展開。その内側の味方の防御力をアップし、更に属性ダメージを軽減する。

 この時出入りは自由であるが、魔方陣の内側に入った魔物には忌避感を与え、攻撃性を減退させる。



【スキル】【名称:キュア・アイサイト】【アクティブ】

・対象の視力低下を治し、正常化する。ただし、〈ディスブラインド〉とは違い盲目の状態異常は治せない。



 この世界で眼鏡が殆ど普及していない理由だ。目が悪くなったら教会に行ってお布施を払い、このスキルを掛けてもらうのが一般的らしい。

 まぁ確かに、眼鏡を掛けて範囲魔法が飛び交う階層に行けるか?と考えたらNOだろう。〈ブリザード〉で眼鏡が曇ったり、〈フレイムスロワー〉や〈アシッドレイン〉で溶けたり、〈ストームカッター〉で飛んで行ってしまったり、〈グランドファング〉の石片で割れたりするリスクを考えたら、裸眼が一番だ。

 一般人にも有用だが、本来はこれもダンジョン攻略をサポートする奇跡なのだろう。


【スキル】【名称:フィリングシールド】【アクティブ/パッシブ】

・ダメージが発生する攻撃を受けた際、充填済みの魔法陣があれば、自動発動する。魔法陣に込められていたMP分のダメージを軽減する。


【スキル】【名称:キュアサークル】【アクティブ】

・指定範囲内の味方を対象としてHPを大回復する。あらゆる外傷を癒し、骨折すら正常な状態へと戻す。ただし、神経を断裂するような大怪我には効き難く、外側の怪我は治せても、内部の神経には効果が薄い。また、手足などの欠損も再生出来ない。


 〈フィリングシールド〉は魔道士(初期スキル)、〈キュアサークル〉は聖騎士(レベル50)で覚えたものと同じだ。説明は省略。

 〈キュアサークル〉は司教レベル25習得なので、本来はこちらが先なんだろうけどな。


【スキル】【名称:ソファンフィールド】【アクティブ】

・術者を中心として、周辺の環境を和らげる奇跡。高温や低温、日光、強風、砂塵、豪雨等の劣悪環境を弱める結界を張り、少しだけ過ごし易くする。この結界は術者に追従して動く。

 ただし、魔法等による属性ダメージは防げない。


【スキル】【名称:ディスデェフ】【アクティブ】

・対象の身体的な難聴の症状を治し、正常にする。難聴の原因が魔法的、毒物的、肉体の損傷的であれ、難聴に至るものであれば、何にでも効く。



【スキル】【名称:アネスシージア】【アクティブ】

・対象を全身麻痺させ、痛みを感じなくする、麻酔の奇跡。

 対象が奇跡を受け入れれば100%効くので、手術が必要な場合は事前説明をしよう。



 一風変わったスキルだ。この世界の手術は、悪い患部を切除して、〈リジェネレイト・キュア〉で再生すると聞いているが、その補助をするスキルなのだろう。

 俺個人としては、あまり使い道はないかも? 


【スキル】【名称:自動薬箱】【パッシブ】

・自身のHP3割以下になった場合、〈キュア〉の回復の奇跡を自動で充填、発動する。

 また、自身が状態異常に掛かった場合、その状態異常回復に対応する奇跡を自動で充填、発動する。

 ただし、対応する状態異常回復の奇跡を習得していなければならない。MPが足りない場合は発動しない。



【スキル】【名称:ディスクローズ】【アクティブ】

・対象の身体的な緘黙(かんもく)の症状を治し、正常にする。緘黙の原因が魔法的、毒物的、肉体の損傷的であれ、緘黙に至るものであれば、何にでも効く。



 緘黙……声が出なくなる状態異常だな。スキルや魔法の発動キーワードが喋れないので、結構面倒である。俺だけなら〈無充填無詠唱〉で対応可能だが、普段は付けていないので、〈自動薬箱〉の方が対処は早いかも。



【スキル】【名称:ホーリーピラー】【アクティブ】

・魔を払う聖なる光を空から照らし、範囲内の敵に誅罰を与える。全ての属性に等しく効果がある。

 また、アンデッド系に限り攻撃力が極大アップし、大ダメージを与える。倒した場合、浄化して消し去る。



 光属性魔法の〈ライトピラー〉の亜種である。空から光の柱が立つのは同じだが、『全ての属性に等しく効果』とあるように、光属性ではなく無属性。アンデッド系に特攻なのは〈ライトピラー〉には無い効果なので、使い分ければ良い。



【スキル】【名称:ディスフリーズ】【アクティブ】

・対象に掛けられた凍結の状態異常を解除し、即座に平熱に戻す。また、凍結で壊死した身体も癒し、凍り付いた装備品や服も乾燥させる。


【スキル】【名称:ディスシール】【アクティブ】

・対象に掛けられた魔封の状態異常を治し、正常にする。魔封の原因が魔法的、毒物的、肉体の損傷的であれ、魔封に至るものであれば、何にでも効く。



 魔封の状態異常……身体の中の魔力が動かせなくなるらしい。まだ掛かった事はないので想像でしかないが、魔法やスキルが発動できないのは勿論、装備している武具にも魔力が流せないのがデメリットだと思う。ミスリル系の防具の売りである『魔力を流すと鎧全体が保護され、抗魔力状態となり魔法攻撃のダメージを和らげる』効果も使えなくなるのだ。

 この状態でも〈自動薬箱〉は効くのかね?




 司教の総評としては、〈キュアサークル〉と〈自動薬箱〉がある時点で、パーティーに1人は欲しいジョブである。ただし、新スキルの内、半分を占める状態異常を癒すスキル群のせいで目新しさは少ない。交渉や尋問に使えそうな〈真偽の裁定〉や、防御結界を張る〈ホーリーフィールド〉は便利そうだが、〈自動薬箱〉の便利さには負ける。


 ただ、便利だからといって、追加スキルで常時付けておく事は出来ない。〈自動薬箱〉も各種状態異常回復のスキルや、〈キュア〉等の癒しの奇跡がセットされていなければ意味がないからだ。この場合、司教ジョブごとセットするか、追加スキルの枠を増やすしかない。どちらにせよ、アビリティポイントを圧迫するので自由度は減る。


 聖騎士と比較すると、〈キュアサークル〉が使えるので回復性能は同じ。

 聖騎士は攻撃系スキルや聖馬が使えるので上位互換に見えるが、状態異常対策は司祭までしか使えない(毒、麻痺、盲目対応のみ)ので、それら以外は〈全状態異常耐性中アップ〉で掛からない事を祈る他ない。


 結局のところ司教は、状態異常に全対応出来るのが売りだろう。

 ただ、状態異常は薬品で対処することも出来るので、パーティーの編成次第、懐事情次第でもあるかな。


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