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第728話、女性特攻カードとフォーチュンエンチャントの当たりハズレ

 錬金術師協会からのサポートとして、レシピ4個に採取用魔道具2個を受け取った後は、レシピカタログと魔道具カタログを見せてもらっていた。特にレシピ代が浮いたので、その分だけ追加購入出来るのだ。

 先ずは、付与の輝石のレシピからだ。ハイマナポーションと並ぶ必需品ともいえる。カタログに載っていたレシピは1種類のみで5千万円もするけどね。登録数が少ないのは、薬品系と違って創造調合するのが難しいのだろう。10面体なうえ、各面に盾や剣十字等の文様が入っており、何がどう意味するのか分からないからだ。


『No501 付与の輝石×3個 スキルエンチャントの触媒。ミスリルインゴット+魔結晶+ポゼストーン』


 ポゼストーンは幽霊系が落とす奴だな。墓地フィールドの亡霊餓鬼が稀に落とすくらいであるが、増殖させて大量に倒したので10個程手持ちにある。付与の輝石30個分にはなるので、十分だろう。もし足りなくても、『飢餓ノ脇差(ダイエットの剣)』を手に入れるために墓地フィールドに通っている、セアリアス子爵家から購入する事も出来る。この辺はルティルトさんとも交渉済みなのだ。(飢餓ノ脇差は、まだ再ドロップ無し。血魂桜ノ赤揃えは1個ドロップ)


 ミスリルが貴重な時期ではあるが、レシピと対となっている登録用現品なので、問題なく買えた。ちょっと、値段が高過ぎるとは思うけどな。今後は好きに付与スキルを付け替えられると考えたら安い物である。


 ただ、ファイリーナ叔母様にちょっとだけ、援助して貰ったけどな。正確には商売を持ちかけたのである。


「そう言えば、ファイリーナ様。以前催促されたアレ、新たに作れたのですが、ご入用ではありませんか?」

「……アレと言うと……ダイエットカードですの?!」


 そう、婚約式の自己紹介を交わした時に『ダイエットカードの再入荷はいつになるのかと念押しされた』のである(495話)。あれからも、手の空いている時に〈道楽者の気まぐれスキル〉によるダイエットカードチャレンジは続けている。勝利の鍵は、遊び人レベル50で覚えた〈雛壇の支配者〉のお陰だな。


【スキル】【名称:雛壇の支配者】【パッシブ】

・自身の使用制限があるスキルのクールタイムを半分にする。

 一流芸人になり、数多くの舞台に上がれるようになった。多少の融通を利かせられる。


 こいつのお陰で、1日1回しか使えない〈道楽者の気まぐれスキル〉と〈ダイスに祈りを〉が、朝と夕方で2回チャレンジ可能になったのだ。フィオーレにも使わせれば4倍チャレンジできる。その為、50層でレベリングしている間に当てる事が出来たのである。

 ファイリーナ叔母様の前にブラックカード(燃焼身体強化)を10枚程積み上げて見せると、黄色い声援を上げた。


「〈中級鑑定〉!……まあまあまあ! これが欲しくて仕方がなかったのよ! しかも、10枚も頂いて良いの!

 ありがとう存じます、ザックス。言い値で買わせて頂きますわ」

「そこまで、喜んで貰えるとは思いませんでした……ええと、以前と同じ値段で構いませんよ?」

「いいえ、そう言う問題ではないの。ダイエットカードを使ったシェイプアップの効果を知ってしまうと、カード無しの普通のダイエットに身が入らないのよ。

 爆破された錬金釜の代わりを買い付けに、王都に何日も滞在して接待、接待の毎日を過ごしていたら、太ってしまって……」


 ファイリーナ叔母様は、自分の頬を軽く撫でて見せた。言われてみると、婚約式の初対面の時と比べて、ちょっとだけふくよかな気がする。そこまで気にする程か?と思うレベルなのだが、周囲の女性陣は一斉に頷き返していた。


「分かりますわ、叔母様。パーティーやお茶会が続くと、太ると分かっていても食べなくてはならないものね……いえ、わたくしはダンジョン攻略で沢山歩くようになって、お祭りの分は清算しましたけど」

「甘いわよソフィ。子供を産んで、30歳を超える頃になると、もっと痩せ難くなるのよ。自分の理想の自分を維持するのが、どれだけ大変な事か……頑張ってダイエットを続けても、ふとした時に『ダイエットカードがあれば……』と考えてしまうの」


 その言葉には、ファイリーナ叔母様の側近の皆さんが頷いた。

 ……女性に大人気とは知っていたが、既に麻薬レベルになってきていないだろうか?

 ちょっと影響力が高くて引いていると、隣のソフィアリーセが耳打ちしてきた。


「(ザックス、今後はゴールドカードで量産しては如何かしら? 効果が高くなって、使用回数も増えるのですから……)」

「あら? ゴールドカードで作ると、使用回数が増える?」


 聞き返してきたのは、狐耳をピコピコ動かしたフィナフィクスさんである。持ち前の地獄耳で、こちらの耳打ちまで聞いてしまったようだ。

 その言葉を聞いて目を光らせたのはファイリーナ叔母様である。そっと取り出したカバンに手を入れたと思ったら、大金貨2枚を俺に差し出してきた。


「この10枚のダイエットカードの代金です。もし、多いと思うのであれば、次回はゴールドカードで準備して下さいませ。

 もし金鉱石が足りないのであれば、わたくしがカードの量産を代行してもよろしくてよ。来週までに、白銀にゃんこのロゴを入れた無地のゴールドカードを100枚単位で準備しましょう」

「ちょっと待って下さい!

 一応、流通させるカードは王族がゴールド、伯爵家がブラックと決められていた筈です」

「いえ、ザックス。取り決めではなく、ヴィントシャフト家とアドラシャフト家が勝手に配慮してブラックカードにしただけなのよ。それに、投入する予算としても、流石に金鉱石は高過ぎたから……」


 俺の言葉を遮って説明してくれたのはソフィアリーセである。流石の伯爵家でも、消耗品として配るのにゴールドカードは厳しいらしい。ブラックカードなら黒魔鉄なので、値段は雲泥の差だからな。予算としても、その殆どが俺への作業工賃だと思う。


「それなら、エディング伯爵とお姉様(トルートライザ様)に相談すれば、実現できそうね。

 ええ、ダイエットカード分くらいなら、派閥の奥様方が挙って資金を出してくれると思うわ。今夜にでも食事に誘って、打診してみましょう」


 嬉しそうに話したファイリーナ叔母様は、側近を呼び寄せると、面会予約や馬車の手配を指示するのだった。




 もう俺の手が届かないところの話になってしまったので、カタログの続きを見始める。気になったのは、各属性の宝玉のレシピを見つけた事だろうか。1種類1千万円。1つ、2つ程度なら買えるが、全属性分揃えると、7千万円か。ちょっとキツイ。

 そんな雑談をしていたら、フィナフィクスさんが代案を出してくれた。


「それなら、レア度Bの宝石10個と、お好きな宝玉を交換できるサービスもありますよ。1回50万円ほど手数料を頂きますが」

「ルビーの宝玉は1個100万円だったよな? 調合代として50万円は高い気もするけど、レシピ代よりは安上がりか」


 取り敢えず、保留だな。今後、どれだけ宝石が産出するのか、宝玉としての使い道があるのか決めてからでも遅くはない。〈フォーチュンエンチャント〉でガチャが出来る程、宝石が貯まれば利用を考えよう。


 この雑談のついでに、宝玉をスキルエンチャントに使ってみた場合について質問してみた。


【宝石】【名称:ルビーの宝玉】【レア度:B】(※文章略)

・スキルエンチャント時:〈烈火〉、〈火属性耐性 大〉  ←ここが複数書かれている件についてだ。


「それくらいの話なら、サービスで教えてあげましょう。

 『耐性』の方が防具かアクセサリーにエンチャントした場合ね。もう一つの方が、武器にエンチャントした場合。〈烈火〉は確か……『火属性を付与し、攻撃に追加属性ダメージ大を加える』だったかしら?

 原則として1回のスキルエンチャントで、2つ付与される事は無いわよ。

 それと、初級属性の宝玉は〈フォーチュンエンチャント〉に使われる事も多いの。中級属性の宝石と違って手に入る量も多いせいかしら?」

「もし、気に入らないスキルが付いた場合でも、〈付与スキル全消去〉を有料で承っております。

 是非、宝石を集めてチャレンジして下さいね」


 錬金術師協会にてスキルエンチャント業務があるせいか、色々と情報が集まっているらしい。


 〈フォーチュンエンチャント〉でのハズレは、付与導師が自前で付与出来るステータスアップや耐性アップスキル。他にも効果の薄いスキル等(〈逃げ足〉や〈交渉術〉のような非戦闘系ジョブのパッシブとか)。

 当たりは、戦闘系ジョブのスキル(〈フェザーステップ〉等)や、他にはない新規のスキル(〈対ブレス〉や〈MP吸収〉、〈熱無効〉等)。

 大当たりは、各種攻撃魔法。弱点を突くのがセオリーなダンジョンなので、魔法が使える手段が増えるのが大人気。俺のブラックカードと違って、何度でも使えるのが良いそうだ。初級属性ランク7、8や中級属性ランク3魔法が付与された武具は、貴族家の家宝として扱われる程。


 個人的には新規スキルが良いなぁ。〈MP吸収〉とか武器について欲しい。逆に魔法系はブラックカードで十分なのでハズレ枠……あれ?俺的にハズレの方が多くないか? 複合ジョブがあるので、他のジョブスキルが当たっても嬉しくないのだ。むしろ、ステアップや耐性アップの『大アップ』の方が嬉しい気がする、

 そう考えたら、〈フォーチュンエンチャント〉の熱も冷めて来たな。

 色々勧めてくるファイリーナ叔母様とフィナフィクスさんの話を受け流して、カタログの続きに戻った。




 魔道具のカタログを見ていたレスミアが、保温の大皿や鍋を欲しがったので購入を検討する。簡易拠点では大活躍だったからな。以前、綿菓子機を作る際に『属性動力コア』を購入したが、それの発展形らしい。火や風が出るのではなく、皿や鍋自体が一定温度に温まるように調整されているそうだ。魔結晶動力なので誰でも使え、放置しておけるのも良い。

 キャンプ飯(外飯)が続く男性陣向けに、保温の大皿は何枚あっても良いからな。特にお代わり用のパンとか、寒空の冷気でカチカチになってしまうのだ。焚火で焼くのも悪くはないが、毎日だと面倒になるだろう。

 色々温められるように数枚購入しておいた。

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