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第725話、足りないミスリルインゴットの数は?

 改めて試作ミスリルフルプレートを見せてもらったが。メタリックレッドなので合金化された物と思ったが、実際はメッキらしい。これも鍛冶親方のスキルだな。



【スキル】【名称:インスタントメッキ】【アクティブ】

・インゴット系の金属素材を使用し、術者の想像する指定箇所に、金属薄膜をムラなく塗布する。イメージを強くする事で、紋章なども描ける。

 ただし、スキル付きのインゴットを材料にメッキしても、スキルは継承出来ない。

 更に、本体よりもレア度の高い素材でメッキした場合、完成品のレア度は上がらず、剥げ易い。



 今まで使ってきたミスリルメッキの黒短刀も、このスキルでメッキされている。黒魔鉄製の短刀なのでレア度C、ミスリルはレア度Bなので、その差の分だけメッキが剝がれやすいのだ。まぁ、刀系の武器を使うときは魔剣術を使って〈エレメンタル・ソードガード〉で保護しているから、剥げた事も無いけどな。

 それは兎も角、レア度が同じで類似金属(合金)なので、この赤いミスリル合金メッキは耐久性があるそうだ。



 色合い以外だと、鎧の形状は特殊アビリティ設定の特殊防具であるミスリルフルプレートとほぼ一緒。違いは付与スキルが無い点である。


●参考データ(特殊防具、ミスリルフルプレートの付与スキル)

・〈堅固〉:耐久値極大アップ

・〈接地維持〉:両足裏に自動発動。地面、及び堆積しているものを踏みしめている限り、足が滑る事は無い。

・〈緑閃光の揃え〉:純ミスリルの武器と盾を同時に装備した場合、全ステータスを大アップする。


 俺のミスリルフルプレートには有用な付与スキルが付いているので代用にはならないが、何か有用なスキルを付ければ、普段使いには十分だろう。

 メタリックレッドな色が少し派手だが、ミスリル装備は大抵メタリックなので、目立つのはしょうがないと思おう。風車の紋章も、ソフィアリーセとの婚約を許された証(一族入り)みたいなものだからな。

 それに〈超加速〉を使えば2倍速で動けるけど……3倍には足りないから、『彗星』の異名は付かないと思う。


 ミスリルフルプレートの各部を見せてもらい、ガントレット部分を外して試着し、サイズがぴったりな事を確認していると欲しくなってしまった。取り敢えず、値段交渉を試みたところ……


「それならば、この形の鎧の量産する権利を頂きたい。了承して頂けるのならば、オーダーメイド費用の5千万円と相殺に致します。

 ただし、材料であるミスリルインゴット20個と引き換えになりますが……」

「ええと、そこはお父様におねだりしても駄目だったの。ミスリルが不足しているのと、これ以上ザックスに肩入れすると、功績が霞んでしまうせいね」


 ダンジョン前の拠点作りをして貰ったのも、結構ギリギリだったらしい。本来なら実家の援助はあってしかるものだが、俺の場合は婚約者の家からの支援である。あまりに、おんぶに抱っこでダンジョンを攻略したとしても『女を誑し込んだお陰だろ』なんて悪評の一因になってしまう。更に俺の場合、ディゾルバードラゴンを倒した功績まで疑義が生じる可能性もあるそうだ。


 ソフィアリーセの解説で状況は理解したが、ミスリルインゴット20個かぁ。

 昨日の採掘でも1.5本分しか取れていないのだ。今後も同じように手に入ったと仮定しても、単純計算で14日は掛かる。

 まだ、他の装備(カイトシールドや弓等)や付与の輝石を加えると、装備が揃うのに何日かかる事やら……

 先にダンジョンを攻略し終わってしまったりしてな。



 無い袖は振れない。メディウス子爵には状況を説明し、赤いミスリルフルプレートは取り置きしてもらう事となった。そのついでとして、残りの装備更新についても相談する。先ずはレスミア用の弓であるが、現在使っている物が複合弓なので、ミスリルを使ってバージョンアップ出来ないかと聞いてみる。


【武具】【名称:パイロキルシュ・コンポジットボウ】【レア度:C】

・幽魂桜の木材と黒魔鉄の合板を張り合わせて作り出された複合弓。弦には魔力で収縮するパイロシルクが使われている。その為、弦を引いた状態で魔力を流す事により、張力が強くなり威力がアップする。魔力を流し易い素材で作られているのでスキルも使い易く、魔弓術を多用する中級者以上に人気がある。

・付与スキル〈筋力増加 小〉〈火属性耐性 小〉


 『黒魔鉄の合板』をミスリル製に替えれば、量が少なくとも使えるのではないかと踏んだのである。

 ただ、所詮は素人の浅知恵だったようで、メディウス子爵は取り出した弓を一瞥しただけで首を振った。


「ウチの(店の)量産品のコンポジットか……レア度Cの弓の中では出来が良い物ではあるが、ミスリルを使うのは勿体ないな。仮にミスリルの合板に替えたとしても、幽魂桜の木材とパイロシルクの弦では魔力の流し易さが違い過ぎる。ミスリルの魔力伝導率を活かすのであれば、同程度の素材でなければなりません。

 私としては、折角ミスリル武器に替えるのですから、一番良い総ミスリル製のコンポジットをお勧め致します。

 心材に純正ミスリル、弓のしなりを生み出すミスリル合金の本体、そして柔軟性と強靭さを両立させて細い弦に加工したミスリル合金。この3種類を組み合わせたミスリルコンポジットボウは如何でしょうか?」


 自信有り気なメディウス子爵が指を鳴らして見せると、近くに控えていた店員さんがアイテムボックスを開き、弓を取り出した。



【武具】【名称:ミスリルコンポジットボウ】【レア度:B】

・複数のミスリル合金の板を張り合わせて作り出された複合弓。弦もミスリル合金で作られており、魔力の通しやすさは随一の弓と言えるだろう。総金属であるが軽量なミスリルの特性故に、女性でも取り扱い易い。

 また、ミスリル弓の特徴として、魔力を通していると魔弓術の威力を底上げし、弾速も上げる。



 メタリックグリーンに輝く豪華な弓である。どこかで見た事あると思ったら、増援メンバーのDダイバーも使っている装備品と同じに見えた。既に普及している物ならば、その信頼性は高いと言える。現に発売元の工房が自信をもって勧めてくるのだから、なおさらだ。


 ただし、即決で買えないのも分かりきっていた。だって、総ミスリルとか、どう考えても使用量が多いからだ。


「是非、購入したいのですが、これもインゴットは必要ですよね? 何本要ります?」

「ミスリルインゴット3本、それ以外に加工料金と他の合金材料代を合わせて1千万円でございます」


 店員さんは、にこやかに答えてくれた。値段はミスリル武器なので大金貨が相場となるのは分かるが、ミスリルインゴットの量も多いな。これも手持ちじゃ無理だ。


 この後、盾についても相談しておいた。その結果、カイトシールドはミスリルインゴット5個、タワーシールドは15個必要らしい。アクセサリー類(ブレスレットや髪飾り)は質量が小さい分、インゴット1個以下で作って貰えるが……こっちは形状が複雑化する為、加工料金が高いそうだ。一旦、保留だな。全部揃えるとなると、インゴット43個以上(+加工料金は別)になるからである。


 ただ、何も収穫が無かった訳でもない。


「領主様からも、出来るだけ協力するように仰せつかっているからな。売れ筋の汎用品と同じで良ければ、先に作っておこう。ミスリルインゴットが調達出来次第、交換という事で良いかね?

 ああ、勿論引き渡しの際に、個人向けの調整くらいはサービスしよう」

「それでお願いします」


 既に完成しているミスリルフルプレートは兎も角、他の装備品についてはインゴットが調達出来てからオーダーメイドしても、時間が掛かるだけだからな。

 この後は、ミスリルフルプレートの試着とフィッティングを簡単に済ませ、レスミアの方もサンプルのミスリルコンポジットボウを試射させてもらって、調整をお願いした。

 カイトシールドとベルンヴァルト用のタワーシールドは、ウーツ鋼製の形状と同じ汎用品でお願いしておく。何だかんだいって、使い慣れた形状が良いのもある。オーダーメイド出来るからと言って、全員が細かく注文する訳でもないらしく、こういった汎用品の需要はミスリル装備になってもあるそうだ……あんまり特異な形にすると、メンテが大変になるし、加工料金も跳ね上がるせいでもある。

 その他にも、カイトシールドの正面に紋章も入れられると勧められたが、俺自身は家紋もないので断っておいた。白銀にゃんこの看板はあるが、アレはちょっと可愛すぎる。そういうのは、実際にダンジョンを攻略して、貴族位を貰ってからでも良いだろう。なんて話したら、ソフィアリーセとルティルトさんが乗り気になった。俺達がフィッティング中で暇だったのもあるだろうが、テーブルに紙を出して相談し始めたのである。


「以前考えた紋章案も途中だったわね。確か……虎の横顔だったけど、今ならディゾルバードラゴンに替えた方が良いかしら? ドラゴン退治で有名になったのですもの」

「ドラゴンモチーフの紋章は多いから、似通った物がないか確認が必要だな」

「それなら、お父様の文官に紋章担当が居るから、見せれば良いわ。簡易拠点で過ごす間に、10個くらい考えてみましょう。わたくしがアイディアを出してラフ画を描くから、ルティは見栄え良く描き直して頂戴」

「ああ、向こうでの暇つぶしには持ってこいね。マルガネーテに持って行ってもらう絵具を増やそうかな?」


 俺としては、紋章に詳しくないので、お任せしたいくらいである。領地の旗に描かれた紋章くらいなら知っているけど、他の貴族の紋章なんて、ルティルトさんのような騎士団員の装備品に描かれているのを見た程度だ。勿論、見たところでどこの家なんて判別出来る訳もない。

 なんて静観していたら、店を出た後に「ザックスも、アイディアを出しておいてね」と、宿題を渡されてしまうのだった。

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