第一章7 大拡大
「かあ……さん……!?」
毎日見た父の形見……これをつけてるのは母しかいない。
「君たち!!無事か!?」
医療班Dが駆けつける。
「は、はい!僕ら二人は無事です!でもアランは怪我を……」
「!?」
アランの腹と腕の傷は……完治していた。服だけが破れている。
「え……?そ、そんなわけ……」
「怪我を……なんだ?」
「怪我は……ないです!……それよりもじいちゃん……町の人がたくさん……多分手遅れです……」
「そうか……私はオスピタル医療班D、ミナだ。ミナ・スミス。で?肝心のヴェロウイルス感染者は……?」
「それが……アランが倒しました」
「倒した!?アランとは……あの少年が!?」
「おお!?メディクス候補生にしようぜ!?いきなり3rd倒すとか候補生どころじゃないかもな!」
そう笑う女子……ディナがアランの元へ走る。
「ちょっ!ちょっと……!おかしいな……君の友達……アランくんが感染してるとしたら……二人も検査漏れしてることになる……」
「え……!?アランは感染してるんですか!?」
「え……?いや……彼が3rdの感染者を倒したのだろう?メディクスのような力がなければ無理だろ……何か動物の力を使って……」
確かにアランの力だと思えなかった……でもあれは動物の力なのか……?
「動物……?ま、まあすごい力でした……でもそれが何か問題でも?」
「いや……昨日の検査にオッドからの感染者はなしと表記されていてね……だがアランくんに、3rdの感染者……感染漏れが多すぎる……」
「なるほど……」
「とりあえず、君も検査しなければ」
ミナがピンクの宝石を取り出す。
「まぁ、1日の感染漏れじゃ3人も……」
ファー……
「え?」
「え?」
ユンの額で宝石が赤く光る……
■
「おい!お前すごいな!!3rdを一人で倒すなんてメディクスの方々でも中々できないぞ!」
バシッ!とアランの肩を叩くディナ。
「……」
「お、おい!レディーを無視はないんじゃねぇか!?」
「……」
アランは未だ無視……
「(母さん……!俺が殺した……。感染しても生き残る可能性はあったのに……俺がそれすら潰した……)」
--「"血槍"」
「(守るために"あいつ"からもらった力なのに……)」
「おーい。おーい!コイツ聞いてんのか?まさか……」
■
「そ、そんな!?僕感染してるんですか!?でも!体になんの影響ありませんよ!?」
身体能力が上がったとも思えない……
「いや……多分検査漏れではなく単純に今日感染したんだろう……すまないが君は理想郷に行ってもらう……」
「おい!ミナさん!あの3rd倒した奴……自我を失ってるかもしれない!!」
焦った表情で駆けつけるディナ。
「まさか……それが本当ならアランくんもすぐに理想郷へ向かってもらいます……」
「アランが自我を!?で、でも僕を守ってくれましたよ!?」
「いや、悪いが可能性がある者を野放しにはできない……」
「「ミナさん!!」」
他の医療班が駆けつける。
「他に生存者はいませんでした……そちらは?」
「あぁ……生存者は二人、だがどちらも感染してる。とりあえず待機所に連れて行ってくれ」
「はい!!」
医療班がユンの腕を掴む。
「悪いが来てもらう……平和のためだ」
「ダリア、リン、タイト、カリン、シン、お前ら5人は二人を待機所へ!後の私を含めた10人で、3rdの死体を処理するぞ」
「「はい!」」
アランが腕を掴まれ、運ばれていく……
「おい!!アラン!さっき僕と話したじゃないか!自我はあるんだろ!?」
ユンの渾身の叫び……だがアランは……
「……」
「どうしたんだよ!?何があったか教えてくれよ!!」
「すまないがユンくん!話は待機所についてからにしてくれ。時間がない……もしアランくんに自我がなければいつ暴走するか分からない……」
「分かりました……」
■
アランとユンは待機所と呼ばれる施設……の中の牢屋に入れられていた。
「おい!アラン!なんか言えよ!」
ユンが鉄格子を掴み、正面の牢屋にいるアランへ叫ぶ。
「おい!!アラン!!」
「……だったんだ」
遂にアランが口を開く。
「え!?アラン!?やっぱりまだ自我があるじゃないか!なぁ!あの力はなんだった……」
「母さん……だったんだ」
「え……な、なんのことだよ!?」
「あの怪物は……母さんだったんだ……」
「え……?」
「俺が……殺したんだ……母さんを……自我を取り戻すかもしれなかったのに……」
「い、いや……でもそれは仕方……」
「仕方ねぇよ。そんなもんは」
ユンの言葉を低い声が遮る。
「誰も悪い奴なんかいねぇよ……みんなみーんな仕方ないんだ」
コツコツコツ……と男が歩いてくる……
「あ、自己紹介がまだだったな?俺の名前はハルド・スミス。お前らを天国へ送る天使さ!!」
その中年の男は、笑顔で短剣を構えた。
■
「ミナさんよー暇だよ〜」
「ディナ……まあ今日あんたの出番はなさそうね……」
「ラウネンさんの毒便利すぎるからなー」
他の医療班は、その「ラウネンさんの毒」と呼ばている物を使って、怪物の死体を溶かしている。
「仕事なしか〜……稼がなきゃ……行けないんだけどな……」
ディナが俯いて話す……
処理を終えた医療班が戻ってくる。
「「終了しました!」」
「よし!みんな並べ!ほら!ディナも!」
「ええー帰りも「アレ」すんのかよ……別にアタシ宝石持ってないし……」
と、言いながら全員が整列をする。
「よし……!宝石を掲げろ!!我らオスピタル!!この力は平和のため……」
ミナの顔が青ざめていく……
「ん?どうしたんだよミナさん?さっさと終わらせようぜ?」
「う、嘘……そんなわけ……」
「おーい聞いてる?何もおかしいことなんか……」
ファー……
「感染……してる……」
ミナを含めた医療班10人……その内、一人の男を抜いた9人の宝石が……赤く光っていた。
とりあえず、第一章完結までは毎日投稿しようと思っています!
よければ評価をお願いします!