第一章3 選ばれし者の正体
「メディクスの正体は……」
ゴクリ……
緊張が走る……
だがかつてないほど興奮もしていた。
「ヴェロウイルスの感染者じゃ」
「は……?」
「え……?」
キンじぃは聞き返す隙も見せず話し続ける。
「ヴェロウイルスには感染深度の段階を示す、[ステージ]ってのがある」
「[ステージ1st]、身体能力が飛躍的に上がり、2日……感染から48時間後に自我を失う。」
「自我を失った後、人間を襲うようになる。他の生物には目もくれず、人間だけを狙ってくる。そして体の一部分が他の動物のものに変化する……これが[ステージ2nd]」
「そして……次が[ステージ3rd]……体全体が動物の様に変化し、より残虐性が増す。じゃがそこまで到達してしまう条件はまだ分かっていないんじゃ」
「わ、分かったけど……その話とメディクスは関係ないんじゃ……?」
「話は最後まで聞けぇい!! メディクスはその[ステージ1st]で自我を失うことがなかったものたちじゃ」
「その中でもヴェロウイルスの力を使いこなし、自我を失うことなく[ステージ2nd]、[ステージ3rd]に到達したものをメディクスと呼ぶんじゃ」
「じゃから努力したところで必ずなれるものではない!」
「お前の人を守りたいと言う気持ちは素晴らしい。だからこそ無駄に努力せず、自分の道を進めばよいんじゃ!!」
「……!!」
そうか……キンじぃは俺にこれが言いたかったのか!他言厳禁のメディクスの秘密まで話して……
「と……言うことでそろそろ帰れ。もうワシ限界、ちょ〜眠い」
え……?
いやいやいや!まだ信じ切れねぇよこんな話!もうちょっと詳しく……
「ちょっとまっ……」
「じ、じぃちゃん!最後にもう一つだけ!理想郷に行った人たちがメディクスになることはないの!?」
ナイスだユン!これで足止め成功……
「メディクスは感染者一人一人が自我を失うのを待ってから処理する……まあ一度、自我を失った奴が自我を取り戻し、メディクスになったこともあるんじゃがな……はい!終わり!解散!」
待ってくれ……?じゃあ感染した人もみんなメディクスとして生き残る可能性が……?
ピシャリ!と外へ締め出されてしまった。速っ!……やっぱキンじぃ怖えわ。
■
「グワァァァァ……!!」
「(怖い、逃げたい、ユンが呼んで……メディクスは今理想郷か!?、この怪物も街の誰か?てかなんで[ステージ3rd]まで!?定期検査に漏れがあったのか!?)」
ーーいろんな感情が入り混ざる……
「アラン!早く!」
「おい!!アラン!!こっちへ逃げてくるんじゃ!!」
キンじぃまで大きな声出して……
ーーでも……
ーー俺の中で今一番強く思ってるのは……
「守らなきゃ!!あの女の子を!!」
なんの策もない……でも走り出してた……!
「アラン!?何してるの!?」
「馬鹿者が!犠牲を増やすだけじゃぞ!今……メディクスは全員理想郷……6時間は帰ってこない!!」
「そ、そんな!!じゃあアランは……助けなきゃ!」
「無理だユン!あいつと同じ道を辿るな!アランはもう助からん!!」
「離せぇぇぇぇぇ!!」
「(倒さなくていい!この女の子を逃す!)」
ぐんぐん加速しながら跳躍……!怪物の頭に飛びかかる。
「(10年前の俺とは違う!守ってやる!1人でも多くの人を!)」
渾身の右ストレートが怪物の額を捉える……だが、
ゴン!
怪物はピクリともしない、それどころか……
「グワァ?グワァ……」
口元がニヤリと曲がった……
--ゾワッ!!!
今まで押し殺してきた恐怖が一気に……
怪物は女の子を掴んでいる手と反対……左手で俺の右手を掴み……
ゴキュウ!!
そのまま地面に叩きつけた。
--痛い痛い痛い痛い!!!
頭を強く打ってしまった……意識が朦朧とする。
「グワァァァ!!」
すかさず怪物が俺の頭に足を添え……
グキグキグキグキ!!!
「あああああああああ!!!!!!」
頭を潰し始めた……やばい……意識が……
「(死ぬんだな……俺……)」
消えゆく意識の中でそんなことを考える。
「(結局、俺は誰も救えなかったな……)」
正直勝てるなんて思ってた。10年も修行したんだから……あぁこれじゃあ死にに行った様なもんだ……
分かってたはずなのに……自分が一番……!自分が無力なことくらい……ごめん……父さん……母さん……約束守れない……
「グワァァァ!!!??」
怪物が弾き飛ばされる……
「ハァ……ハァ……」
頭が割れそうだ……でも助かったらしい。メディクスが到着したのか?
「お前はカッコいいなぁ!?」
「(一体……誰が……?)」
だいぶ意識が戻ってきた……
「おじさん震えちまったぜ!」
--よく知ってる声だ……
とりあえず、第一章完結までは毎日投稿しようと思っています!
よければ評価をお願いします!