第一章2 ご対面
「ア、アラン……?」
「残念じゃがその通り……お前はメディクスにはなれん」
アランを心配するユンとは対照的に、キンバルトが容赦なく現実を突きつける。
「もうそんな偽りの元気はいらん……また10年前みたいに笑顔でいてくれ……」
あぁ分かってた。ずっと偽ってた。
「焦る気持ちは分かる。だがもう終わりにしよう……諦めていいんじゃ」
母さんもきっと気づいてたんだな……
■回想
「もどってきて……あの頃のアラン……」
窓から聞こえる母の声。俺の耳にはしっかりと聞こえていた。
■回想終了
「いい機会じゃ。お前らにメディクスとはなんなんのか……その正体を教えてやろう」
メディクスの正体、能力の起源はオスピタルの中でもトップシークレットであり、ましてや一般市民である俺たちが知るよしもない。だがキンじぃは別だ……まさか?本当に……
「知ってるのか!?メディクスの秘密!」
さっきまでの落ち込みが消えたわけじゃない。でも興奮せずにはいられない……それほど俺はメディクスに憧れてる。
「あぁ教えてやろうとも。だがこれでキッパリ諦めるんじゃぞ……」
……!!!!!!!!
■
「嘘つけよ……」
俺は疲れでフラフラになりながら帰路についていた。[諦める]ってのはやっぱり悔しいししんどい、なんせ10年間の夢だから……でもそんなことより一番俺を疲れさせたのは[あの話]だ…
「嘘つくわけねぇんだけどな……」
正直悪趣味な嘘だと思いたい。でもキンじぃが言うなら真実なんだろう……真実?その話が真実なら……
「おーーい!アラーーン!」
ん?ユンが俺を呼んでる?なんか忘れ物でも……
「前!前見てみろって!」
おかしい。ユンがこんなに叫ぶことは滅多にない。俺は即座に俯いていた顔をあげた。
そこには……
「「逃げろぉー!!!」」
「「助けてくれぇー!!」」
街の人たちがこちらへ逃げて来ている……?一体何があった?
俺が驚きで固まっている間にもどんどん群衆が押し寄せてくる……
「わっ!ちょ!なにが……」
大勢の人が俺の周りを通り過ぎていく……
ドンッ!!
1人の男の人と肩がぶつかってしまった……おっと……とよろめきながらも
「ごめ……」
「すまんな!!!少年!!!怪我はないか!?!?いや!!そんなことをしている場合ではない!!ささ!!逃げるぞ!!」
馬鹿デカい声で叫んで去ってく……服の背中にはイカツイ赤の雷模様。ん?あれ……?
「(あいつ誰だ!?)」
知らない知らない知らない知らない!!!!誰なんだあいつは!?生まれてずっとこの街にいるがあんな奴は見たことない!
別にそんなに珍しいことじゃない……が、なぜか俺は底知れぬ恐怖を感じていた。
「早く!!アラン!!こっち逃げてきて!!」
逃げる……?一体何……
気づいた。
街の人たちが逃げていた理由。
「キャーーー!!お母さぁーーん!!」
ーーもしその話が真実なら……?
泣き喚く少女の腕を掴む人影。背丈は俺とあまり変わらない……だが!!
ーーもし……真実ならもしかしたら……
ネズミの様な顔面。毛だらけの体。そして……背中から生えたおびただしい数の大きな針。[ハリネズミ人間]と言ったらわかりやすいのかもしれない。
ーーもしかしたら……
ヴェロウイルス感染者「ステージ3rd」……この目で見るの初めてだった。
ーー父さんは生きているのかもしれない
とりあえず、一章完結までは毎日投稿しようと思っています!
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