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「血の英雄」  作者: 高丘
第一章 人々は彼をこう呼んだ
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プロローグ すべての始まり

 美しい大自然。

 神はこの景色を愛していました。

 だがやがて、「人間」という動物が現れました。

 彼らは生きる為に 必要ではない命をたくさん奪いました。

 自然を自身らの欲望のために壊し、穢しました。

神は怒りました。

 記憶を司る神、フォーゲ。

 過去を司る神、ワズ。

 未来を司る神、ウィル。

 そしてその三神を統べる「力」の神、シーラ。

 神は人間の絶滅のため、自ら「生物」を創りだしました。

 その「生物」の目的はただ人間を殺すこと。

 「生物」は瞬く間に人間を半分まで減らしました。

 ですが人間には「彼」がいました。

 「彼」は人間を守るため、何十匹、何百匹と「生物」を殺しました。

 「彼」は諦めませんでした。

 血の海の上にたった一人立つ「彼」を人々は称賛し、こう呼びました……




 当時まだ6歳だった俺……アラン・ロバーツは母に毎日この本を読み聞かせてもらっていた。それだけ憧れだった。


母は病弱で仕事をすることができず、毎日俺と一緒にいてくれた。裕福ではなかったけど、貧乏だと思ったことも一度もなかった。それだけ父は仕事を頑張ってくれた。


その日は10日に一度、父が帰ってきていた。かなり苦しい毎日を送っているはずの父だが、一度も弱いところを俺や母に見せず、ずっと笑顔だった。父は俺にとってかけがえのない存在だった。


世間ではちょうどそのころヴェロウイルスが本格的に拡大し始めていた。ヴェロウイルスってのは感染したら最後、たった2日で人間を襲う怪物へと変化する恐ろしいウイルスだ。


感染者は直ちに「理想郷」と呼ばれる島へ流され、そこで処理される。今でもまだこのウイルスについてははっきり分かっていない。今も昔もたった一つ、「人から人への感染はない」この情報だけーー



「こんにちは。定期検査です」


だから毎日検査しに来る。2日で怪物になるんだから、1日目で見つけて処理しなくちゃいけない。ピンク色の宝石の様なものを額につけ、赤く光ったら陽性、変化がなければ陰性らしい。


「えー今日はメディクスじゃないのー?」


メディクスとは、特殊な能力を持った選ばれし者のことで、彼らはヴェロウイルスへの対抗策を模索している。だがあまり良い結果はでておらず、世間からは能力があるだけの税金ドロボーなんて呼ばれている。


だけど俺は、その能力でみんなを守ろうとする彼らにとても憧れていた。


「ごめんねぇ、メディクスはいま理想郷にいるからねぇ」



ただの日常。いつもと変わらない一日だった。


「よ、陽性です……!」


父の額で赤く光る宝石を見るまでは……


「そんな……あなた……」


「お、お父さん……」


父は叫ぶわけでも悲しむわけでもなくただ呆然としていた。


「すぐに理想郷へ行ってもらいます……」


ショックであの時のことはあまりよく覚えていないが、父の最期の言葉だけは今でもはっきり覚えている。


「アラン……お前はお前のために生きるんだ……!」


行かないで……父さん……帰ってきてよ……





はっと目が覚める。


「(夢……か……)」


頭が痛い。


「(なんでまた10年前のことが夢に……?)」


グッと拳を握りしめ、


「(でも忘れちゃいけない!もう2度とあんな思いはしない……!させない!)」


「俺は英雄になる!」















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