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ぶっ壊れた日
ぶっ壊れたその日は、起きた時から変だった。
何故か目が覚めると、涙が出た。
身体は痺れ上手く呼吸もできなかった。
耳鳴りが頭の中で響きわたっていたのに、
その他の音は耳に入ってこなかった。
視界もいつもより悪く見え辛かった。
それでも、身体は勝手に動いた。
顔を洗い、歯を磨き、化粧をして、スーツに手を通した。ヒールを履き、家を出て、車で仕事場まで行く。朝が早いこともあり、まだ信号は点滅している。いつもなら気が付かないところも、何故だか目がいってしまう。
そして仕事場に着いて、
上司に挨拶しようとして気付いた。
あれっ…声ってどうやって出すんだっけ?
それから、頭が真っ白になった。
最後に見たのは大嫌いな上司の驚き焦る顔だった。