カーディの町と新しい武器5
前話、投稿した途端に気づいたのですが前半がその前の話の後半とダブってましたね…
なんとか5です。
一区切りついたところで、一旦ログアウト、ということになると思います←
あの後、私はまた少しアイゼに職業やお金のシステムを教えて貰ってから、彼と別れた。
「中央ギルドいくんだっけ、道はわかるの?」
「うん!本当、色々教えてくれてありがとう。助かったよ。アイゼ…くん?」
「くん?って。アイゼでいいよ」
アイゼは、首をかしげる私に、笑いをこぼした。
「わかった。またくるね!」
「ん。待ってる」
そうして、私はアイゼに手を振って武器屋(?)を後にした。
「さて、次は中央ギルドね。」
私は初期金額を費やした、あの初期装備や目の色と不似合いなマスクを装着して、町を歩いていた。
まだポイント条件がどういうものなのか明確にわかっていないため、念のためである。
(あの広場の時は…)
先ほどの、知らない人に好かれる事件で、私を『ミカゼ』だと認識しなくても好く対象になるということもわかる。
(嬉しくないプレゼントってなんだろう。)
それだけが気がかりだった。
「でも今はお金を大事にしないと!」
そして。
「お嬢ちゃん、美味しい焼き鳥だよ〜」
「そこの貴女、服見ていかない?」
表通り。商店街という名の、誘惑である。
「お、お腹すいてないので……」
「焼き鳥はいらないのかい。」
嘘です。
「そうかい。じゃあ後のために一本どうだい?」
「では、一本だけ…」
夜ご飯前なのでめっちゃ空いてるんです。匂いしなくても美味しそうです。
「すみません、お金なくて…」
「じゃあこっちのスカートとかどう?たったの1000Gよ。」
サスペンダーのついた濃紺のスカート。
正直めちゃくちゃ欲しいです。
「い、スカートは今は…」
「間に合ってるの?」
「…欲しいと思ってたところです。」
・・・
そんなこんなで中央ギルドに着く前に、私の所持金は100Gを切っていた。
「うーー……」
(早くギルドに行って、素材を売ろう!もしその前にご飯の時間が来てゲーム終わらなきゃいけなくなったら困るし。この状態でログアウトしたくない、というか次回ログインしたくない。)
私は焦りながらも楽しんで、アバターを走らせる。
自然と、コントローラーの、進むボタンを押す指に力がこもる。
そして、目の前に飛び込んで来た何かに驚いて飛び上がる。
「わわっ」
けれどボタンから手を離すには手遅れで、ぶつかった
衝撃がゲーム機越しに伝わる。
(びっくりした…)
私は尻餅をついていた腰を上げて、立ち上がる。
「ててて…はっ。ごめんなさい!レイレイは急いでいました!」
目の前には、綺麗な栗色の髪をした、水色のワンピースの、可愛いNPCの女の子が立っていた。
そしてどうやら私に謝っているようだと気づくと、私は慌てて手を振った。
「い、いやいや!急いでたのは私もだし、こちらこそごめんなさい。」
私も謝ると、その子は不思議そうな顔をして私を見つめた。
「そうなのですか?」
私は頷く。
「うーん。」
その子は何やら考えている。
私は去っていい状況には思えなくて待っている。
「お姉さんもしかしてモンスターを倒せます?」
繋がりはわからないが頷いておく。
「ええ、まあ。」
言ってから、今は武器がないことに気づいた。
「あ、でも…」
「それなら話が早いです!」
「?」
「私はレイレイといいます。お願いしますお姉さん、助けてください!」
「えーと」
何が何やらわからなくて聞こうとした矢先、ピコンという音が鳴り、私の前に答えが現れる。
《クエスト:100年前に咲いた花 を受けますか?》
《 yes ・ no 》
「なるほど。」
私はほぼ反射的にyesを触っていた。
「私のお姉ちゃんがモンスターに盗られた特別な薬草を取り返しに、昨日の朝、北の森へ行ったのです…でもまだ帰って来ていないのです!お願いします、探しに行くのを手伝ってください!」
「うん、わかった。とりあえず向かおう」
「ありがとうございます!」
私はレイレイとともに駆け足で森へ向かいながら詳しい話を聞いていた。
その内容は、こうだ。
レイレイとその姉 (ルイルイというらしい)は、商人をしている両親がモンスターに襲われて亡くなってから、薬屋をやっている祖母の家に住んでいるそう。
そしてただお世話になっていたら悪いので、3日に一度ほど、教えられた薬草を取りに森へ行っている。
危なくないのかと思ったが、モンスター除けのポーションを持っていけば、もし遭遇しても十分逃げられるらしい。
ところで、二人は『癒しの千寿花』という、100年間に一輪しか咲かない花のことを祖母に教わっていた。なんでも、どんな怪我や病気でも徐々に回復して治るという、万能薬の原料らしい。しかし、わかっていることはその効能と100年間の間に一輪咲くということだけで、具体的にはどこに咲くかもいつ咲くかもわからない。それ故に希少で、それを原料にして作られた薬も、勿論その花自体もとても高価なものだった。一介の薬屋程度では扱うことも許されていないほどである。
だが見つけて国に差し出せばそれ相応の謝礼金がでるものだから、二人の祖母は二人にしっかり花の特徴を教え込み、「もしも見つけたらその時はその一輪だけでもいいから、必ず持って帰ってきなさい」と言っていたそうだ。
そして一昨日、二人が森に行った際にそれはあった。森の奥の方、やけに青々と茂った木々の先に、輝く一輪の花が。