カーディの町と新しい武器2
3話目の誤字直しました、あとイベントのお知らせは第三回となっていたんですが、よく考えたらこのゲームは発売されてあんまり時間が経っていない設定なので、第一回に直しました。
「ふう、焦ったー」
私を持ってきた椅子を座らせてHP回復ポーションを飲ませた店員は、かいてもいない汗を拭うような動作をしたあと、自分も椅子を持ってきて私の前に座った。
私のHPは、少ないせいもあってしっかり全回復している。
「えーと……ありがとうございます。」
とりあえずお礼を言う。
「どういたしまして。」
店員はにこやかに頷いてから、なにやら自分のステータスをいじりだす。
何か言ったほうがいいのだろうか。
「あ、えー…」
しかし、相手が自分のことをどう思っているのかわからないので怖くて迂闊なことは言えなかった。
好かれているかどうかは、条件ポイントを見ればわかるのだろうが。
何かを言うことも立ち上がることもできなくて、私は静かにフードを引っ張った。
「よし、どうぞ。初心者さん。」
その声に顔を上げると、目の前にポーションが並んでいた。
「え?」
「こっちの緑のがHP回復ポーション、黄色のがMP。2本ずつあげるから使ってよ。俺いっぱい持ってるし。」
そう言ってずいと押し付けてくる。
「えええ、いやいや、いいですよ。」
この人はなにを考えているんだろうか。
そう思ってついじーっと見てしまう。
「……どうしたの?要らない?」
店員が若干引き気味で問うことに少し首をかしげる。
(可哀想かな、)
私はコホンた咳払いをして、アイテム欄を呼び出す。
「……ありがたく頂きます」
「良かった」
にっこりと笑う店員。
それを見て、私は
(よく笑う人は好かれそうだな。)
となるべく笑わないようにしようと決める。
「それじゃあ改めましていらっしゃい。俺は
カナザワ。今はここ、カーディの町の『道具屋かなざわ』の店主だよ。御用は何かな?」
店員ではなく店主だったらしい。
それはともかく、何から言おうか。
「ええっと、私の名前はミカゼです。素材や魔石って売れますか?」
北の森でモンスターを倒した時の素材がアイテム庫に沢山あった。
「ミカゼさんか。素材はここでも買い取ることはできるけど、中央ギルドのほうがきちんとした値段で買ってくれるよ。魔石の方は、表通りの武器屋に持っていけば買ってくれるだろう。」
「そうですか。」
確かにそう言うこともあるだろう。
だがあまり人が多いところは行きたくない。
でも武器と顔を隠す装備も欲しいし…やっぱりお金は必要か。
「他には?」
「えーっと、少しお店を見てもいいですか?」
「もちろんもちろん。」
もしかしたら、良いものがあるかもしれないし。
私は立ち上がると、お店の棚をぐるりと見て回ることにした。
アイテム名をなぞりつつ、気になったものは詳細を開いて読んでいく。
HP回復ポーション、MP回復ポーションはそれぞれ200Gで、買って行こうかとも思ったが貰った分で足りそうなのでやめた。
他にもAGIを上げるポーションだとか、モンスター除けのポーションや水中呼吸のできるポーションもあったがまだ必要としていないので流していく。
それから爆弾や閃光弾、ロープや、鞄類、ちょっとした防具や、ゴーグル。
色々なものがあったが、私にまだその必要性はわからないものばかりだった。
しかし、
「マスクだ。」
マスクといっても、風邪をひいた時につけるようなのではない。顔を覆い隠すものである。
そう、私が求めていた顔を隠す装備だった。
鼻から下を覆うもの、目元を覆うもの、顔の半分を覆うものと色々あったが、私は特に鼻から顎までを全部隠してしまう黒いマスクが気に入った。
「あの、試しても良いですか?」
「どうぞー」
「どーも」
つける前にまずアイテムの詳細を見てみる。
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〈特別な付与マスク−黒−〉▲
《詳細》
付与マスク。付与が4つ以上のため、つけた者の技能によって色・形が変化する。
《効果》
サイズ調節
隠蔽効果(+20)
隠密効果(+20)
MP(+15)
DEX(+10)
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(色・形が変わる…?)
ウィンドウをいじってマスクを装備する。
すると、マスクが僅かに光って、ぴったりと顔を覆った。
「え?」
店の鏡を見ると、顔の下半分に加えて、右眼までを覆っていた。
だが私の視界はあまり阻害されていない。
目を覆っている部分は、私からは透けて見えるようだ。
「それにしても、」
鏡を見る私を見て、カナザワは楽しそうに手を打つ。
「お、可愛い色だね。」
このマスクは、私がつけることで、地色が濃い紫で、ピンク色の絵の具を塗りつけたような模様がついたマスクになっていた。
確かに可愛いが、私の目の色とはあまり合わない気がした。
「あ、そうだ効果は」
ステータスを見ると、確かにMPとDEXの隣に+表示がされていて、下に隠蔽と隠密の効果も追加されていた。
そして装備の欄を見ると、眼帯部分(変形による追加部分)のオンオフが可能になっていたので、オフにしてみる。
「おー、消えた。」
しかしよく見ると右眼の色がくすんだ紫色になっていた。
念のためマスクを外し、またつけてみる。
(マスクのせいなんだ…)
目を瞬きさせて見る。
少し離れる。
(でもまあ近づかないとわからないか。)
それなら良いのではないだろうか。
普通に可愛いし。
私は知らぬ間に笑顔になって、相変わらずにこにこしていたカナザワに向き直る。
「これは幾らですか?」
カナザワは、マスクの棚まで行って操作をする。
「3000Gだな。」
「さ、」
あろうことか初期金額まるまるだった。
「うーーー」
「どうする?」
「えーーー」
「買うの?」
「買います!」