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ミカゼとアイゼ1

<(_ _)>〈 ゴン!〕


イベントが開始し、新装備の私はまず降り立った場所とその周辺を確認した。

左手(方角を確認すると西)の方向には、レイレイクエストで歩き回ったところよりさらに広く暗い森。

そして、今いる場所は岩が散らばった荒地で、東側は、かなり遠くの方にいくつかの建物が見えた。

「……で、アイゼ。どうすればいい?」

開始そうそう相棒に丸投げする私に、隣でライフルを抱えて座っていたレモン色の髪のの少年はため息をついた。

「何も考えてなかったの?」

「ご、ごめん。バトルの準備は万端なんだけど...」

そう。私は戦いの準備に気合が入りすぎてしまったのだ。イベント開始後の最初の動きや、その後の方針などはさっぱり。


「、、じゃあ、戦闘は期待して良いんだね?」

確認するように問うアイゼに、私は頷いた。

「もちろん!そこだけは私に任せて。」

「…おーけー。」

アイゼは呟くようにそう言って、自身の持つライフルを構えた。レバーを引き、弾を装填させる。

「?」

次の瞬間、パァン!と、およそファンタジーには不似合いな音が響いた。

(うおぅ。)

「動き出しているチームがいた。僕らもそろそろ動いた方がいい。」

「え、、撃ったの?」

「牽制だけさ。なかなか長射程の武器を持ち込んでるプレイヤーは居ないだろうから、近付いてくるのを少しでも防ぐためにね。」

(そ、そうなんだ)

「ねえ、戦闘でも頼っても……」

ギロ。

「ごめんなさい」


「とりあえず、東へ走るよ!」

「りょーかいっ」




事の起こりは一日前。


「あの!イベントの受付は…!」


私はログインして真っ先に中央ギルドへ向かった。

始めたときから気にしていた、イベントの参加締め切りが今日だったのだ。


「こちらで受け付けておりますが、、参加するメンバー全員で受け付ける必要があります。」

「えーっと、ソロっていうのは…?」

「可能ですが現段階で職業レベルがマックスの方のみとさせていただいております。」

(職業をとってもいない奴は論外ってか)

「そ、そうですか。また来ます…」

私はそう言ってサササッとギルドを飛び出した。


ピンチだ…。


(誰か私と出てくれそうな人いないかなぁ)


(お兄ちゃん、は論外。

カナザワさんは商人だし、…こう考えると、あんまり知り合った人居ないんだなぁ。

……武器屋のアイゼはどうかな?あんまりイベントとかに熱を入れるタイプじゃなさそうだけど、役には立ちそう!…失礼、仲間として頼りになりそう。)


早速頼みに向かった。


「ダメ。」

「そこをなんとか!」

仁王立ちで私を見下ろす少年は、私が初めて会った時と明らかに態度が違った。

「…聞いてないよ!アイゼがそんなにいうこと聞かない子だなんて!」

「いや知らないよ!ダメったらダメだ。僕は僕が楽しむためにゲームをしてるって言ったでしょ!それに今は鍛冶の修行で忙しいんだ。」

「絶対楽しいから!」

「いやいや、」

「ここでしか手に入らないスキルとかあるかもよ!?」

「そ、それは、そうかもしれないけど」

「ほら、アイゼ色んなことしてみたいって言ってたよね!!イベントも経験しといても良いんじゃないかな!」

「い、言ってない!!はず!!」

「ねえ、お願いアイゼ〜。助けると思ってさ」

胸の前で指を組んで上目遣いでアイゼを見上げた。

「ぐ……」


ー1時間後。


ミカゼはまだアイゼの足元に這いつくばっていた。

「一生のお願い!」

「ミカゼ……」

アイゼは、ハァー、と大きなため息をつく。

「君諦める気ないね?」

頷く。

「アイゼしかいないと思ってるから!」

ずいと顔を寄せると、アイゼは目を瞬かせてから気まずそうに目をそらした。

「…どうしても?」

「どうしても!!」

「なんでもする?」

「なんでもする!!」

言ってしまってから、はたと我にかえる。

アイゼの顔を見ると、笑っていた。


「ったく……今はそういうの出るよりスキルと経験値集めしたかったんだけど…。」

アイゼは観念したというように、その美しい顔を歪ませた。

「わかった。今回は僕が折れよう。丁度素材集めの護衛が欲しいと思ってたしね」


私は、現実でパァーっと顔を輝かせる。

「それじゃあ!」

「うん。一緒に出てあげるよ、イベント。」

にやにやが止まらない。

「ぃよっしゃー!!!」

私は天井に向かって拳を突き出した。



・・


「そうと決まればまず装備をどうにかしないとね。」

アイゼはそういいながら武器屋の戸を押した。

「もうすぐリーカ帰ってくるから、僕たちの防具を、」

と、そこで店側のドアから大袈裟に人の入ってくる音がした。

どういうことかというと、

ドンドンドン、ガチャガチャ、ギィィバタン、ダンッダンッ、ゴトン。

「アイゼー帰ったよー!」

という具合である。


「え、なに今の」

アイゼは、「リーカだ。」と小さく呟くと、はーいと戸を開けた。

そこに覗くは、20歳半ばほどに見える、可愛らしい女性だった。赤茶色のウェーブのかかった長い髪に、焦げ茶の切れ長のひとみ。それにかなりおしゃれをしているようで、率直に私なりの感想を示すと、

(おお〜)

という感じであった。

我ながら語彙力のカケラもない。


「おかえり、取材はどんな?」

(取材?)

「どーもこーもないわよ!」

入ってきた女性は部屋の脇の長椅子に勢いよく腰を沈めて舌打ちを繰り返す。

「なにが伝説の武器伝説の素材よ、ただのよくあるパチモンじゃない!!」

「あーー」

アイゼは苦笑いを浮かべつつ女性からカバンを受け取った。


私がその様子を、

(え、ええぇ、黙ってれば綺麗なのに。)

という心情で眺めていると、リーカは私に気づきアイゼに問いかけた。

「アイゼ、この可愛いのは?」

ビクっ

「ああ、知り合いだよ。で、あのさ」

(おい)

「ミカゼっていいます!」

さらっと流そうとしたアイゼを押し退けて名乗る。

「おお、ミカゼちゃん。アイゼの知り合いかぁ」


アイゼはムッとして私を見るが、一瞬後には気を取り直してリーカに向き直っていた。

「で、リーカに頼みたいことがあるんだ。


僕たちのイベント用の装備と武器なんだけど。」


一瞬、リーカの目がキランと光った気がした。

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