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ズバリ、シスターさんの件について。

評価してくださる方が少しずつ増えてきてくださり、本当に嬉しいです


「はぁ⁈みんな、本当にそれでいいの⁈」


昼でも夜でも常に賑わう商業都市、シャギーン。

路地に入ったところにある宿『マジギレハンモック』の一室に、彼らはいた。ツンツンと飛び跳ねた黒髪につり目気味の、真っ黒いツノを生やした少年が仲間たちに向けた言葉だ。


「僕も色んなところを旅する予定だったし、レオ一人じゃさ、心配だよ。用心棒ってことでさ、どう?本当に危ない時は、助けてあげるよー。相手を傷つけないように叩きのめすことだって出来るかもだし」


妙に目からギラギラと鋭い光を放っている茶髪の少年。まくったジャージの袖からのぞく長い手足は、びっしりと鱗に覆われている。


「ワタシは断然アナタに興味があるのですねぇ!今まで見えなかったモンスターの側面を垣間見て、とても興奮いたしました!ワタシも元々旅をする予定でしたし、ぜひぜひお供させてくださいな!」


くせっ毛を短いツインテールにした少女は大口を開けてハキハキと喋る。着崩されたシャツにジーンズという現代チックな格好だが、彼女の耳の後ろから生えた魚のヒレのようなものはリアルで、そこだけが異質な異世界感を醸し出していた。


「私も!そこまで深いった旅をするつもりは無かったんだけど、せっかくみんなと知り合えたんだから、一緒に行きたいな!珍しい食材とかお料理とも会えるかもしれないし…」


艶のある黒髪の少女。その頭頂部からは白銀の蛇が二匹飛び出し、彼女の顔の横で絶えずうねっている。


「私はどうしても旅に行かなきゃならない事情がある。もし何か動きがあればみんなと別れなきゃいけなくなるけれど、それまでは、一緒に行かせてほしい」


無表情に言い放つ茶色猫耳の少女。学校指定らしきワイシャツとプリーツスカートに身を包んでいる。


「…何回も言わせないで」


説明を放棄した眠たそうな少年。けれども旅には同行するつもりのようだ。黒髪は長めで、目の部分はほとんど隠れている。白い歯に混じった4本の小さな八重歯が、彼が吸血鬼であることを証明している。


「それじゃあもちろん、私はそこに同行させていただきますね!異世界初心者の皆様に、色々なナビゲートをいたします!」


元気な金髪碧眼の少女は、金色の刺繍が施された純白のワンピースを身につけており、頭にかぶった髪を覆う布から彼女が修道女であることがうかがえる。


そして仲間たちの即決判断に驚きを隠せない、メンタルシュレッダーにかけられた直後の彼。

それが、僕だった。



「えぇ!だってみんな、そんな、いいの?」


全く要領を得ないその質問に、彼らは顔を見合わせて笑った。


「もちろんですとも!ワタシたちはレオ氏の旅に同行させていただきます!」


光の言葉に唖然とする僕。


「てことで、リーダーはもちろん、レオさんということになりますね!頑張ってください!」


クリスも元気よく言った。

いやいやいや、友達0(いやいや、今はゴブリンが一人。やったね!)の僕に、統率力を求める方がどうかしている。

それでも柊や伊織は、うんうん、と首を縦に動かしている。


「大丈夫ですよ!何かあった時はサポートしますから!」


黒星が純真そうににっこりと笑うので、僕も無下に断ることができなくなってしまう。僕は覚悟を決めて、立ち上がった。佐久がおぉっと声を上げる。


「分かった!僕がリーダーをやるよ!」


拍手が起こった。でも、と僕は続ける。


「共に旅する仲間になるからには、ちょっと解決したい問題が一つ!」


「レオ氏!なかなかリーダーっぽいですよ!」


やめてくれ!力が抜ける!


「それは…クリス、君のことだ!」


ビシッと指を指す。黒星ちゃんが横から手を出し、僕の手を人差し指だけ立てた状態から手のひら全体でクリスを指すような形に直す。力が!メンタルが!

でもこれは言わなければ!


「私のこと…ですか?何でしょう?」


クリスのその金色の瞳に、挑発的な光が宿ったのを僕は見逃さなかった。やはりそうだ。


「クリスさ、それ本当に素の状態?」


僕とクリス以外の全員がすっと黙り込む。

不穏な空気を感じ取ったのだろう。


「それは…どういうことですか?」


ゆっくりと聞き返すクリス。顔を下に向けてしまったため、その表情は見えない。


「思えば最初からおかしかった。君のいうこと所々に嘘が混じってた。表情どころか声からも分かるもんなんだよね。最初の、『魔王軍を倒す勇者を待っていた』から嘘なんじゃない?」


クリスは黙ったまま、続きをと促す。


「転生違いに焦っていたのも、演技だった。それにゴブリンにあった時。クリス、積極的に情報を出そうとしなかったよな?まるで、僕たちだけの力でこの場を解決させようと思っているみたいに。それに、僕たちを変身させたの、あれ魔法なんじゃないの?他にも、少しなら攻撃魔法使えるんじゃない?シスターさんだから無理なのかなとか思ったけど、ただのシスターさんでもなさそうだしね」


「…なかなか鋭いですね。メンタル湯葉のくせして」


んん⁈今のは褒め言葉としてのみ受け取るよ⁈

ていうか、口が少し悪くなったような…。もう一押しで剥がれそうだ。


「一緒に旅するんだったら、相手のことは心から信頼しておきたい。だから、何か事情があるのかもなって放置してた問題を、解決しようと思った」


しばしの沈黙。


笑い声。


過呼吸みたいな下品なクスクス笑いが、どんどん大きくなる。そしてついに、クリスがベッドに倒れこんで爆笑し出した。

先程までの上品なシスターさんは見る影もない。目の前のそいつは、ロングスカートを気にも留めず足を組んだ。腹を抱えて笑い続けている。この部屋にいる全員が突然の変貌ぶりに驚きを隠せない。


「あっはっはっはー‼︎‼︎最高だよお前。まさかこんなすぐに被った猫剥がされるとはなぁ!」


黒星が小さく悲鳴をあげた。(柊が『猫』というワードに反応したが、それは無視する。)

クリスの声はそのままの可愛らしい音色なのが、その汚い口調により不気味さを与えている。

はっきり言ってゾッとした。ずっと彼女は、真の人格を隠して僕たちと接触していたのだろうか。

豹変したクリスはしばらく笑い転げた後、涙の滲んだ目元を拭って言った。


「でも、それだけかよぉ、ホットミルクに張った膜みたいなメンタルのメンタリストくん?」


悪化した!僕のメンタルがどんどん貧弱になっていく!ショックを受けつつも、僕はその言葉に動揺する。それだけ?ってどういうことだ?まだ何か秘密があるっていうのか?たしかに、違和感を感じたところはあったはずだ…。なんだっけ…。


「俺、分かった気がする…」


沈黙を破ったのはなんと伊織だった。あれれ?伊織くん?ちょっと出しゃばらないでいただけるかな〜?これかなり大事な、僕のリーダーとしての初仕事なんだけど?僕の必死の制止を込めた視線を全く気にせず、彼は衝撃的な言葉を口にする。


「クリス、もしかして、じゃないけどさ…」





男?





時間が止まったかのように思えた。永遠に続きさえしそうな市場の喧騒が、一気に止んだ。ように感じただけなのだけれど。


「あ、当たり」


羽毛より軽いクリスの返事に、僕たちは思いっきり息を吸い込んだ。




ーしばらくお待ちくださいー




思う存分暴れまわった後、宿の主人らしき大柄な女の人にこっぴどく注意され、僕たちはやっと腰を落ち着けた。さっきと同じポジション。


「まさか…クリスが男だったなんて…嘘だろ?」


僕が呟くと、黒星が虚ろな目で言った。


「最初、『わあこの子、すっごく可愛いな、こんな素敵な女の子になりたいな』なんて思ってたよ。男の子に女子力で負けるなんて私は何なんだろう?マンドラゴラかな?」


マンドラゴラという言葉が何を揶揄しているのかは分からないけれど、たしかに僕たちは、転生してからここまで来るまで、それの5倍ほどのエネルギーを消費したのであった。


クリスは自分の寝床があるからと宿を出て行った。明日の朝にまた来て、具体的なことを打ち合わせしていこうと言い残して。

疲れたので、無言で食事をとり、尋問は明日にしてその日は素直に寝た。


こうして、僕たちの転生1日目は幕を閉じた。



クリス殿については完全に、

私の趣味です

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