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異世界の世界観について。

今回はやっとタイトルに絡んでくる内容となっています!

楽しんでいただけたら幸いです


黒星が悲鳴をあげるのが聞こえた。

光と佐久が歓声をあげるのが聞こえた。

伊織がいびきをかくのが聞こえた。


「うんぐるあ!!おげぶじゅ!ぎどれん!ごぎょ!」


十数匹いるそいつらの、先頭に立っている奴が声をあげた。よだれが飛び、柊が冷静に一歩下がる。


「クリス嬢!翻訳を!」


「無茶言わないでくださーい!」


光の無茶ぶりに半泣きのクリス。どうやらクリスは戦力にはならないらしい。

前方5メートル先に立つそいつらは、品定めをするようにこちらを舐めまわしたあと、戦士ではないと踏んで何やら命令らしい言葉を発した。大方、「持ち物、服、女、おいてけ!」みたいなことを叫んでいるのだろう。見た目は完全に、ゲームに出てくるような一般解釈のゴブリンそのものだった。緑色の肌はゴツゴツしており、ところどころから小さな棘のようなものが突き出ている。多種多様なボロボロの武器を手にした腕は細く、胴体が異様に太かった。よく見ると、体表の斑点の色や形、ブサイクな顔に少しの違いは見当たるが、ほとんど全員同じ顔。同じような鎧を着ているのでオスメスの区別すらつかない。先頭の奴が首から下げているものが小動物の頭蓋骨で作られたネックレスであることに気がつき、ゾッとする。


「多分、持ち物と女を置いてさっさと失せやがれ、このうんぐるあ!!って言っているんだと思う」


柊が興味なさげにいう。なぜうんぐるあを訳さない。そんなにひどい言葉なのか⁈


「佐久氏!出番ですよ!今こそその力を発揮するのです!」


「りょーかい!」


光の煽りに応じて佐久が一歩前に出る!者共見ておけ!これが異世界チートの力だ!ゴブリンも堂々とした佐久の振る舞いに何か不安なものを感じたらしく、リーダーの唸り声に応じて武器を構える。この世界のゴブリンは、ただの雑魚ではないのかもしれない、と思う。警戒の姿勢を見せるとは、予想以上に彼らは賢さを持っているのかもしれない。


「佐久さん!この世界のゴブリンは痛覚がありませんし、生命力も尋常じゃなく強いです!完全に形がなくなるまで叩きのめしてください!」


クリスが叫んだ。なかなか言葉が悪いのな、このシスターさん。佐久の雰囲気が変わったことに気づき、僕は少し緊張した。先程までのふわふわとした雰囲気から打って変わり、なんとなくトゲトゲしたようなオーラが彼の全身から出ているような気がする。これが殺気という奴なのだろうか。僕らも深刻な面持ちになった。佐久もそうなのだろうか。敵を前にして、真剣に集中しているのだろうか。もしくは、いつもみたいに、笑っているのだろうか。

ゴブリンの方が先に仕掛けた。


「うんぐるあ!!」


佐久悪口言われたっぽいよ!頑張れー!


「ごぶっくしょーん!」



「ご、ご、ご、ごぶっくしょーん!」


佐久のあげた、液体混じりのこの音。もしかして、くしゃみか?


「あら!佐久さん、ゴブリンアレルギーみたいですね!」


クリスの言葉を聞いて、俺は全身のこわばりが一気に緩むのを感じた。ゴブリンアレルギーとな?


「え?この世界にもアレルギーはあるんですか?」


黒星が尋ねると、クリスはええ!とにこやかに言って頷いた。


「色々ありますよ!ドラゴンアレルギーにゴーレムアレルギー、普通の食物アレルギーだってありますしね。転生された方々にもそういった人たちは珍しくないですよ?猫アレルギー持ちの方はもれなくケットシーに弱いですしね!逆に、転生人アレルギーだってあるんですよー」


何を呑気に会話など、と危ぶむが、ゴブリンの方もなぜか待っていてくれている。優しい世界。

それにしても、突然アレルギーなんて科学チックなことを言われて、少し萎える。異世界はご都合主義であるべきではないか?


「ごぶっくしょーん!」


なんかそのゴブリンアレルギーであることが分かりやすいように最初にゴブリンっぽい言葉を持ってきたようなくしゃみをやめろ!

佐久のくしゃみはなかなか止まらない。涙目になってきて、辛そうだ。これは少し、まずいのでは?今のところ戦力と呼べるのは佐久の超人的な身体能力ぐらいだったのに…


「ちょっとぼぐ無理っぽい!ごべんね、ご、ごぶっくしょーん!」


「もうやかましいわ下がってろ!」


見てられなくなった俺は佐久に前線離脱を言い渡す。

代わりに僕自身が前に出た。どうする?どうする?

ゴブリンの背丈は僕の脇腹に届くぐらい。といっても、向こうは10数匹いるため、全てを相手するとなると危ういと思う。加えてこちらは丸腰。

ゴブリン達は殺気ムンムン男がなぜか下がったことに対して疑問を抱いているようで、見るからにひ弱そうな僕が出てきても警戒心を解かないままでいる。

戦っても勝てる気はしないが、後ろの女の子達を傷つけるわけにはいかない。そこは男のプライドが許さない。僕がこいつらを惹きつけている間に、後ろにいる仲間たちは…


「私たちだけ走って逃げることはできない」


柊の声。僕は驚くが目はゴブリンたちを見据えたままだ。


「ゴブリンが私たちの前に現れた時、一瞬のことだった。性能の上がった私の耳が微弱な足音を捉えて、それからまもなくゴブリンは姿を見せた。多分、相当足が速いんだと思う。逃げてもすぐに追いつかれる」


…。僕はしばらく呆気にとられた。もう種族特性を使いこなしているとは…。何だかんだいって、この世界にいち早く順応しているのは彼女なのかもしれない。


「その通りです柊さん!ゴブリンはとても足がはやいです!」


クリスがその考察を裏付けた。そうだクリスがいたんだ。


「クリス!ほかにこいつらについて情報を教えてくれ!」


「えーとえーと、ゴブリンは一体一体の戦闘力よりも集団による戦略が厄介なモンスターです!この状況はゴブリンが圧倒的に有利です!」


「くそっ…」


何か!何かないのか⁈この状況を奪回する策は!一番の策だった佐久はもう使えないし!策だった佐久!駄洒落を言っている場合か!


「あぁ!あとゴブリンは、綺麗な丸いものが好きです!追い剥ぎを働くのも、そう言ったお宝目当てという目的があります!」


「レオ氏!ならいいものがありますよ!ほい!」


僕は身構えた状態は崩さずに、半身後ろに引いて投げられたものをなんとか受け取る。手を開いた僕は愕然とする。スーパーボール…?


「これでどうしろっていうんだよ!」


半ば自暴自棄になって叫んだ。


「それを投げてゴブリン衆が惹きつけられている間に…って無理ですよね〜」


「と思うなら提案するなよ!」


それでも手放さずその半透明の球体を片手で弄っていた僕は、懐かしい感触を覚える。

そういえば…前にもこんな球体を…!

そこでやっと僕は閃いた!

ゴブリン様方長らくお待たせして誠に申し訳ございません!


「ほらこれ見ろお前ら!」


僕はスーパーボールを掲げ、ゴブリン全員に見えるようにする。ゴブリンたちは僕の手の中に光る球体を見て、興奮しだす。もう何が何でも剥ぎ取ってやる、と言った風な意気だ。


「欲しいか?ならお前取りに来い!」


後ろの方にいた比較的弱そうな、槍を持ったやつを呼ぶ。槍ならいざという時なんとかなりそうだ。

そいつは少し戸惑いながらも僕に近づき、手を掴んだ。僕たちの言葉はどうやら通じるらしい。好都合だ。生暖かい感触は意外に良かった。思ったよりも滑らかで、柔らかい。


「んぶ⁈」


槍持ちゴブリンは驚きの声を上げる。無理やりに開かされた僕の手のひらには、スーパーボールは載っていなかった。僕は不敵な笑みを浮かべて、ゴブリンにいう。


「どっち掴んでんだ?お望みのものはこっちだぞ?」


最初にボールを持っていた左手をゴブリンにつかませたまま、僕は右手を晒す。その手には半透明の球体。


「うわぁ!すごいですレオ氏!」


後ろで光がいった。ゴブリンは大いに動揺し、急いで右手に摑みかかる。だがそこにはもう、スーパーボールはない。


「おい、お前、どこに挟んでんだ?」


僕はポカンと口を開けたゴブリンの右耳に左手を持っていき、そこからスーパーボールを抜き出した。

ゴブリンはますます大きく口を開ける。鋭い牙が並んでいるのが見え、少し焦るが、気を取り直す。いけそうなんじゃないか?

ゴブリンの仲間たちはパニックに陥った。槍持ちゴブリンの耳を我先にとまさぐりだす。その光景は、気持ち悪い見た目に反してやたら可愛らしかった。


「ぼげ!ぼげりぐ!」


同じく興奮した様子のリーダーが、もっとだせ!とでも言うように唸る。僕はその手にスーパーボールを握らせた。リーダーは拍子抜かれた様子で、それでも満足そうに手を開く。スーパーボールはない。


「どやああああああああ!!」


ゴブリンの驚きの声は、どうやら「どやあ」らしい。

何でそんなに自慢げなんだ。


「乗ってきたんじゃなーい?ちゃんと見てろよ?」


僕は懐に腕を突っ込んだ。


そこからは完全に僕だけのステージだった。

空っぽの手から花束をだし、スカーフから大量のトランプを出してみせる。複雑なトランプマジックはゴブリンたちには受けないと思うので、左右どちらかの手にジョーカーを持たせ、どちらがジョーカーなのか連続でバンバン当ててみせた。ゴブリンたちはすぐに感情が顔にでる。そのおかげでノリも良くて楽しかった。「どやあああ!」の波に乗って数々のマジックを披露した。(ちょうどあったのでゴブリンの剣を飲んで見せようかと思ったけれど、得体の知れない茶色がこびりついていたので止めておいた)


服に仕込んだ手品道具を使い尽くした頃、完全にゴブリンは手品の魔法で熱狂していた。

僕はリーダーのお気に召したらしい。彼が満足そうに差し出したものを僕は受け取る。それは細かい幾何学模様の彫刻が入った小さな骨細工だった。表面は滑らかに磨かれており、先細りの半月型をしていた。淡い乳白色はとても美しく、これをまさかゴブリンが作ったのか、と驚嘆した。


「それはゴブリンの名刺のようなものですね」


クリスがいった。


「同盟を組んだ時、戦った相手を認めたときなどに手渡されますが、気に入った相手に送る、というのはとてもレアなケースです。さすがですね、レオさん」


認めた相手への贈り物…。僕はなんだか嬉しい気持ちになる。手品をこうやって真正面から喜んでもらえたのは本当に久しぶりだ。ゴブリンの瞳からは攻撃的な意思は消え、同胞に向けるかのような温かい光が宿っていた。


「ありがとな、また見せてやるよ。お前名前は?」


僕はゴブリンリーダー、略してゴブリーの肩を叩く。


「ごぶりい」


ホントにゴブリーだった。


僕たちはゴブリーに別れを告げ、また右カーブの道を歩き続ける。ゴブリンを見事戦わずに退けたことに対し、僕は仲間から様々な絶賛を受けた。(佐久は少し悲しそうで、伊織は半分眠っていたが。)

転生された時は真上にあった太陽も、今では沈みかけている。


「そろそろ日が暮れそうですね、少し急ぎましょうか!宿もとらないといけませんし」


クリスがにっこり笑って僕たちに声をかける。そして僕の方を見ていった。


「本当にすごいですよレオさん、まさか攻撃的な種族として名高いゴブリンと無血で決着をつけたどころか、団のリーダーに認めてもらえるなんて。普通の人では不可能です。ゴブリンをただの経験値の餌として見ないその柔軟な優しさがありませんと。レオさんはきっと、素晴らしい勇者になりますね。こうやって素晴らしい仲間達もいらっしゃる事ですし」


僕は少し照れて、それを隠すためにわざと大きな声で言う。


「まあ、伊織はずっと寝てただけなんだけどな!」


その声にみんながどっと湧く。凍ったような無表情の柊でさえ、その口元が少し緩んだように思えた。


「さあ、もうすぐシャギーンに到着ですよ!」


道がどんどん太くなり始め、他の道と合流していく。遠くから市場特有の喧騒が聞こえて来た時、僕は何となく考えていた。

おそらくこの世界では、ゴブリンは当然悪者として駆除されているのだろう。しかし、彼らは人間の言葉を理解し、また喜ぶ心も持っていた。僕を認めることさえしてくれた。悪役として名高いモンスターでも、その気があれば分かり合うことが出来るのではないか。

ゴブリン達の楽しそうな「どやああああ」を思い出し、僕は微笑みを浮かべる。

もっと色々なモンスターと友達になりたいと思う。同じ喜びを分かち合いたいと思う。それは、この異世界を統一し、全ての種族が分かり合えるような世界にすることにも繋がるのではないか?

そう、


異世界征服における武力行使はもう古いんだ!



どうでしたでしょうか?タイトルに納得いただけましたか?

感想などどんどん受け付けております!

どんどんお願いします!

次回はまためちゃくちゃな事情が暴かれるはずです…

ぜひ読んでいただけると嬉しいです!

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