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柊事情の件について…。

文章が…

展開が…


「一つ目の問題は教会にまだ行っていないこと」


僕は頷く。


「二つ目の問題はお金が無いこと」


柊は無言で紅茶を口に含む。


「三つ目の問題は政治的な後ろ盾が無いこと」


光は腕を組んで唸る。


「四つ目の問題は一人一人のスキルが未だ不明なこと」


黒星はなるほどと息をつく。


「五つ目の問題は佐久さんが行方不明であること」


伊織があくびをする。


修道女は微笑む。


「じゃあまずはとりあえず、教会での手続きを済ませてしまいましょうか!」


「いやいやいやいやいや!」


僕はつい立ち上がる。

朝食後の軽いティータイム。机には六つのティーカップ。座っているのも同じく六人。本来いるべき一人は何処へ…。


「でも日比谷君、剣城君を探す手立てはどこにも無い。それに対して彼はこの場所を知っている。むやみやたらに探すよりもここで待っている方が遥かに効率的。それなら先に教会で用事を済ませてしまったほうが断然都合がいい」


完全論破…。

佐久の苗字剣城っていうのか…。

よく覚えてたな…。


「そういうことです。部屋はとりあえず借りたまま、教会へ向かいましょうか」



教会へは僕とクリス、柊で行くことになった。

光、黒星、伊織はお留守番である。

教会へ行くのは楽しみだけれど、ぶっちゃけ怖いです。この二人。




「それにしても、人が多いな。そりゃそうか。首都だもんな」


「はい。これでも平日の朝ですからね、休日の昼なんかすごい賑わいですよ」


クリスの答えに僕は唖然とする。この人口密度で平日⁈横から後ろから圧迫されつつじりじりと進んでいる始末だ。これ以上人が増えたら圧死してしまいそうだ。息継ぎのために軽く背伸びをした僕は、遠くの方に人だかりを見つけた。不審に思い前を行くクリスにその正体を尋ねる。


「大道芸でも見ているんでしょうね。ピエロやアクロバット、画家なんかの出し物もあるんですよ。あぁ、もちろんマジシャンもね」


いたずらっぽい笑みを浮かべるクリス。僕は適当に返事をし、何となく顔をそらす。やはり彼は、前世での僕の生活事情を熟知しているのだ。マジックショーを騙り詐欺を働く僕の日常を。


「少し裏路地に入りましょうか」




裏路地というにしては活発だけれど、普通に並んで歩くことができる程度の道だった。城に向かって歩き続け、驚くことにそこにたどり着いたのは宿から出発してだいたい15分後だった。

イメージ通りすぎて逆に驚いた。真っ白い壁に明るい水色の三角屋根。てっぺんには輝く十字架が据えられている。この世界にもキリスト教はあるのか?だとしたらすごいよ、キリストの影響力。

五階建てのアパートくらいの大きさで、ちょっとした学校の様。実際、うっすらと子供達の歌声が聞こえてきた。


「おやおやクリス様!よくぞお戻りになられました!転生人の方々をお迎えに行かれたっきり、なかなかお戻りにならないので皆で御身を案じておりましたよ!」


頭の危うい初老の修道士がこちらに気づき、慌てて駆け寄ってきた。クリスはにこやかに答える。


「申し訳ありません。道の途中で色々とトラブルが起こったせいで、予定が大幅に遅れてしまいました。街に着いたのが遅くだったので、仕方なく街の宿を利用したのです」


修道士はご無事でなんとか心配でかんとか言いながら、僕たちを中へ案内した。それにしてもこの人、僕たちには目もくれない。転生人は手厚くもてなすものなんじゃなかったのか?クリスの方がよっぽど大事にされている様だ。

これまた想像通り、ベンチが並べられた奥にステンドグラスの輝く、集会に利用される聖堂。適当な場所に座り、待つように言われた。クリスは修道士と共に聖堂を出て行った。

神聖な空気漂う広い空間に、僕と柊。


…気まずい!


何か…何か喋らなければ!

僕がリーダーになるというのに、パーティーメンバーと会話が出来ないというのは笑えない。

そして僕は、腹をくくる。前世は絶賛コミュ障だった僕だが、こっちに来てからは調子が良い!このまま女の子との会話も攻略して…


「ひいりゃぎちゃんは」


噛んだ!


「何か好きなものはある?」


何とか言い切った!


「弟」


…ブラコンの方でしたか


「兄弟いたんだね、小さいのか?」


「同い年。双子の弟」


彼女の言葉は常に最小限で、そこからは感情が読み取りづらい。このまま会話を続けていいのか。それとも嫌がっているか。心を閉ざされないように、気を使いながら話しかける。


「もしかして、弟くんも転生したとか?」


柊は微かに頷いた。


「一緒に来て逸れたか、こっちに転生されたのが私だけだったか」


「…心配だな」


「全然」


即答。なんだか慣れてきた…。


「あの子は賢い。私なんか居なくても一人で十分生きていける」


「そうか…」


彼女がどこか寂しそうに見える理由はそれか。でもきっと、昨日宿で言っていた目的というのはその弟との再会だろう。弟くんは大丈夫でも、柊はどうか。

会いたくて会いたくて堪らないんじゃないか。

震えてるんじゃないか。…ちょっとふざけた。


「それでも、貴方達と知り合えたのは良かった」


私なんか居なくても…のくだりと全く同じテンションだったが、とても嬉しかった。彼女は心を開いてくれているみたいだ。

僕にはリーダーとして、仲間を守らなきゃならない。

柊の弟も、きっと探し出そう。


「一人で行動するよりよっぽどメリットが大きいから」





大変だぁぁ

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