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件…。

ちょっとガタガタしてきましたぁ!


朝ごはんは大きな麦パンメインに、目玉焼き(何の卵かは分からない)、ソーセージ(何の肉かは分からない)、野菜のサラダに果物という、昨晩の店の豪快な雰囲気からはかけ離れた印象のものだった。作りたてで温かく、味も申し分ない。だが、僕は食事を楽しむなんてこと、全く出来なかった。


こいつは一体…何なんだ?


「もう予想がついているとは思いますが、皆さんがこの世界にいらっしゃったのも、間違いなどではありません。天界のルールも、破らせていただきました」


そう言って明るく微笑む修道女。


「昨日お見せしましたが、私たち修道女は神様との会話が出来ます。私はその術を身につけ、直接神様と交渉したのです。私が求める人間を、この世界に召喚してほしいと」


「ちょっと待て、ってことは、僕たち元からここに来る前提だったのか?」


「そうです。神様は頼みを聞き入れ、皆さんにとっての『前世』の世界から適当な人材を見繕ってくださったのです」


身もふたもありゃしない。そもそも僕たちには選択権が無かったのだ。


「もちろん皆さんの情報は神様から事前に受け取っています。好きなもの嫌いなもの、性格に家庭事情、悩み事まで全部」


それを聞いて僕は居心地が悪くなる。目の前に座る修道女(姿のオス)は、僕たちのことを知り尽くしているのだ。そして今度は柊が質問する。彼女は少し怒っているのか、声が強張っているように聞こえた。


「それじゃああなたは、その情報をもとにして私たちの行動を予測したということ?」


頷くクリス。完全に話に聞き入っていた僕は、食事の途中だったことを思い出し慌てて残りを口に詰め込んでいく。何気なく隣の席を見ると、黒星は感慨深げな表情で珍しい食材を味わっていた。彼女は気が弱そうに見えて、どこかマイペースで度胸があるように思える。クリスに対して何も思わないのか?と、僕は若干の苛立ちを覚える。さっきから気分が悪い。それはもちろん、クリスのせいだ。


「気持ち悪い」


びっくりして顔を上げる。突き刺すような言葉を吐いたのは柊だった。冷たい瞳でまっすぐ見られたクリスは、臆することなく苦笑いを浮かべる。


「でしょ?私もそう思います」


クリスの性格は、たまに溢れる言葉遣いからうかがえる。捻くれていて、それでいて相当賢い。いくら人格を把握しているからといって、人の行動を思い通りに操ることなんて、並大抵の頭脳では不可能だろう。


「私は昔からこうだったんです。先を読む力に長けていて、大体の人の行動は予測が付いてしまう。こう言えばこいつはこう返す。こうすればこいつはこうしてくる。人間関係の立ち回りに関してはかなり優秀でしたよ」


クリスはほとんど吐き捨てるように言った。雰囲気がおかしい。どんどん余裕が無くなっているように見える。


「それでもこうするしかなかった。他に方法がなかった。貴方達の協力が必要だ。お願いだよ。力を貸してくれ」


それは一切布を着せない、クリスの本音だった。

体裁もプライドも捨てて、彼は必死に頼んでいた。

挑発的な態度から一転したその姿に、僕たちは動揺を隠せない。


「嫌」


即答⁈


柊さん即答しました!


「だけれど、私の目的とは別に相反しないし、私も貴方の協力は頂きたいところだから、手を組むということでどう?」


最初からそう言ってよー!

胸を撫で下ろした僕は、一度深呼吸してから言う。


「ていうか、みんなひとまとめ、仲間って事でいいじゃん。何でわざわざそんな固い言い方すんのさ」


柊とクリスの応酬をただ見ていた衆は、僕の呼びかけに気がついて、慌ててうんうんと首を縦に振った。


「元々そのつもりでしたからねぇ、クリス嬢の性格の悪さが表に出ただけのことですねぇ」


それもそうだ。まぁさっきはクリスも本音で話してくれたみたいだし、信用できないってことは多分ないだろう。最初は僕たちを騙していたけれど、別に損した訳でも無かったからね。

何だかんだピリピリした空気が流れはしたものの、話がまとまってからは、僕たちは健全に冷めきったご飯を味わった。


「そういえば佐久さんはどうしたんですか?」


黒星が尋ねた。




整えます!

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