2節 彼岸界淵1
多種多様な機器が並ぶ聖教守護者団バチカン本部の一室。白衣姿の多種多様な人種の研究者が、険しい顔付きで機器と向かい合う。自動扉が開かれると、代羽聖とアナが入室し、科学研究部門室長カーター・アレクサンドが出迎える。
「やぁやぁ聖君とアナちゃんや。いらっしゃい。すまないね。急に呼び出して」
「驚きましたよ。ネパールのマチャプチャレ時みたいにギアマリア専用の高速機で急いで来てくれって」
「それだけ大事なら、誠意を見せて貰えるんだろうな?」
「勿論だ。さぁ、此方へ」
手招きされて付いて行くと、一旦廊下に出て歩いて階段を下り、車が停車する巨大な通路に到着した。
「今から地下の地下へと向かう。向かいながら詳細を話そう」
言われるがままに車に乗り込むと、カーターが運転して車は颯爽に走り出した。
「時に聖君。〝ブループ〟って知ってるかい?」
「プ、プルーン?」
「それは果物」
「ソースは身体に良くて美味いとテレビで言ってたぞ」
「話が逸れるねぇ。ブ、ルー、プね」
「何ですかソレ?」
「海中で聞こえる正体不明の音の名前だよ。場所や時期、年代によって、アプスウィープ、スローダウン、トレイン、ユリア、ウィスルと様々なものがある。原因も、クジラや地殻変動、氷山の氷等様々だよ」
「ソレの正体がギアマリア絡みだと言う事か?」
「その通りだ、アナちゃん。音にはアナテマの波長も含まれてたんだ。昔は観測出来ても正確な音源までは特定出来ず、指を咥えて聞き耳を立てるしかなかったんだが……」
「特定出来た!?」
「ザッツライト!!」
子供の様な歓喜の声。それと同時に車は止まる。指示に従い降りると、そこはドームの様に広大な空間で、構造はさながら造船所か港。目の前には豪華客船の如く超巨大な鉄塊が水路の上に浮かんでいた。
「デカァァァァァいッ!! 説明不要!!!」
「いや説明してよっ」
「君には、ギアマリアにクロスアップしてから、この疑似アナテマの塊を巻き込んでテオシスライドして貰う」
「え??」
「なるほど、吾輩達にコレと合体しろと?」
「そゆこと。コレを巻き込んでベイバビロンになれば、例え君でもベイバビロンの稼働時間は飛躍的に上昇する。疑似アナテマには事前にプログラムが導入してある。自動で合わせられる筈だけども、アナちゃん側が事前に読み込んで各種調整しても良いよ」
「成程。然らば聖、善は急げだ」
「ああ。クロスアップ!」
両腕を☓字に組んで十字に回し、閂の様に右腕を引き抜くと、アナの身体は光に包まれると同時に光環が解き放たれ、聖の身体を包んで光で多い、聖女セイマリアに変貌する。
そのまま走り出すと大ジャンプし、鉄塊に飛び移ると両腕を☓字に組んで回し、両拳をぶつけ合う。
「テオシスライド!!」
セイマリアから発せられた光柱と数珠状の光は鉄塊を包み込む。光が晴れると、白と黒を基調にした鷲の意匠の潜水艦が現れた。
『海中潜(水)艦ヒージーリー!!』
「ノリノリだなお前……」
『こういのは形から入るものだ。モチベーションは大事と、存じます。という訳で、全速前進DA!』




