1節 想いは迸り突き抜ける9
あろう事か、果楠は虚ろな口調でヘルティガンディを聖と思い込まされてしまう。聖ことセイマリアは血相を変えて立ち上がろうと奮起するも、身体に力が満足に入らない。
「果楠……果楠ッッッ!! クソ!! 果楠!!!」
セイマリアの声が虚しく響く中、ヘルティガンディはニタニタと不愉快な笑顔で果楠の顔を撫でる。
『大事なモノは~……奪いたいよなぁぁぁあああ~?』
「ふざけやがってぇぇぇえええ!!!」
『そうか、略奪趣味の変態か!! 倒錯してる!!!』
「聖……く……ん……」
『そうだよぉ~。大好きだよねぇ~? カナァン……?』
「す……き…………」
『大好きならぁ~~……はいチュ~~~』
「好き……すき……?」
「果楠!!」
悪劣非道女が不愉快極まる抑揚で話す赤ちゃん言葉で果楠を唆す。果楠は酔った雰囲気でヘルティガンディに近付き――――。
首元に噛み付いた。
『は?』
「は?」
『ふぁ?』
その場にいた全員が固まる。数舜だけの静寂の後、ヘルティガンディは果楠を振り解いた。
『あ~……ぁあ?』
「――き。好き好き好きすきすきすきスキ! スキ!! 聖君!! スキ!!! 大好き!!! 大好きィ!!!」
白昼夢の如く呆けてた様子から一変。果楠は悶える身体を抑え付け、血走った眼で聖に好意を連呼する。唾液を垂らしながらでも開かれる口から放たれるのは、裏返る程に甲高い告白。それを聞いたヘルティガンディは、両手に稲光を迸らせる。
『〝ソッチ系〟はぁ面倒だよなぁあああアアア!!!』
閃光が果楠を呑み込んだ――。
※ご安心下さい。愛情込めた咬撃ファーストは済んでます




