5節 虚ろは開かれた5
「果楠。顔も耳も真っ赤だけど……大丈夫?」
「だ、大丈夫です! お気になさらず!! そ、それよりもご飯を! 私、お腹が空いちゃいました! 聖君のご飯が食べたいです!!」
「吾輩も食べずにはいられない」
「ですよね! 聖君のご飯は美味しいから、毎日作って貰って食べたい位――は!?」
(これプロポーズのテンプレー!!!)
無意識の発言にまたしても絶句。堪らず歯を噛み締め俯いてしまう。
「はい、ご飯ー……果楠? どうしたの? 具合悪いの? 大丈夫?」
「聖。果楠は大丈夫だ、問題ない。吾輩が保証する。――な? 果楠?」
「は! ハイ! 大丈夫です!」
返事をした果楠が見たものは、黄金色の輝きの中で柔らかな白が散りばめられた親子丼だった。
「わ~! 美味しそうな親子――……どッ!?」
またもや失言。己の不意の言葉でフラッシュバック。〝親子〟と言った母の言葉と、共に送られたあの箱。オマケに、光の如き速さで脳内に親子である故に必要な〝行動の情景〟すらも生成される。
両奥歯を噛み締めて憤き出し掛ける感情を押し込む。
「果楠? どうしたの?」
「無いです! なんでもないです!! 親子丼と聞いて!!! いかがわしい考えなんて!!!! 一切合切ありません!!!!!」
「お、おう」
「然らば飯だ! 飯を食べるのだ!!」
「こらアナ! お客さんの果楠が先!」
「いいや食べるね! 今だ!!」
「はい! 私も!」
「果楠までッ?」
アナと果楠は親子丼を掻き込む。とろけるまろやかな卵の濃厚さと味わい。その奥から醸し出される和風出汁の香りと強く濃い旨味。程よい噛み応えの鶏肉からは、肉汁と脂が溢れ、甘くもサッパリしていた。
「美味しい!! こんな親子丼初めて!!」
「ありがと。鶏も卵も良いけども、出汁にムロアジ節っていうの入れたんだ。味が濃くて、鰹節と一緒に入れると美味いんだ。商店街の檀家の乾物屋さんがくれたんだ。まあ、親父のおかげだ」
「へぇ~。……そういえば、秦さんがいなくなって何ヶ月も経ちますけども、まだ帰ってこないんですか?」
「あ~~……――仕事が長引いてるって連絡があってね。まだ帰れないと思うね……」
「……――そうなんですか……早く帰って来るといいですね」
「だな」
静かな夜。聖は自室で眠りに着こうとした直後、誰かがノックした。扉を開けると、目の前にピンク色のパジャマ姿の果楠が立っていた。
「果楠? どうしたの?」
「聖君……一緒に寝ませんか?」
美味しい親子丼の作り方
A.具材
・鶏肉
・(お好みで玉葱or長葱)
・生卵
A1.下味用のタレ
・醤油
・砂糖
・水
B.丼タレ
・醤油
・砂糖
・みりん
・酒
・和風出汁(鰹節、昆布、ムロアジ節orサバ節)
・鶏ガラ出汁
C.お好みで付け合わせ
・刻み海苔
・三つ葉
・胡麻油
作り方。
1.Aの鶏肉を一口大に切る。
↳肉の部位は鶏モモ肉のみならず、ムネ肉、ササミ、手羽元等の複数種の肉を入れるのが好ましい。理由はモモ肉は脂が多いので脂っぽくなるので、他の部位も加える事でしつこさを抑えられる。割合はモモ肉と他肉で1:1位。触感や味わいも変わるので飽きずに済む。
2.あればAの葱も小さく切る。
3.卵を溶きほぐす。
↳卵白が残ってる位で良い。味に濃淡が出来て口直しになる。
4.鍋にA1の下味タレの材料を入れて混ぜて煮沸させる
↳あくまでも下味用なので、鶏肉が浸る程の水量に、適量で醤油と砂糖を加える。Bの丼タレもあるので、薄めの味付けで良い。すき焼きのタレ等でも代用可能。
5.4で作った、沸いたA1のタレに鶏肉を入れて湯通しする。
↳タレに入れて掻き混ぜ、鶏肉全体の色が変われば湯切りをする。氷水等に入れて冷まして余熱による硬化を防ぐ事例もあるが、手早く作る分には不要。
6.Bのタレを作る。
↳顆粒出汁やめんつゆでも代用可能。卵を加えるので醤油と砂糖も追加して味の調整も視野に。原材料によってはすき焼きのタレでもOKサバ節、ムロアジ節はめんつゆによっては入ってる物もある。
7.底の浅いフライパン、或いは小さめの鍋にBのタレと4.の鶏肉を入れて沸かす。
↳タレの量は鶏肉が半身浴する位の少な目の量でOK。多くて7割位の水位。葱系も入れる。(事前に焼き目をつけてもいい)
8.沸いたら、溶き卵を全体に掛かる様に加えて蓋をし、10~15秒程蒸らし、胡麻油を入れる。
↳固まり切ってないなら再度蓋をして蒸らす。半熟にしたいなら蓋をしないでそのまま煮固める。タレが多いと水分で固まり難い。
9.ご飯をよそった丼に8.を乗せて完成。
↳ご飯の上に海苔を乗せててから8.で、その上に三つ葉を添える。
僕も実際に作ってる物です。余裕がある方は、ご家族や知人等に振舞って上げてもいいかもしれません。僕は作っても皆、食べる気が無いからと誰も食べてくれませんので1人で食べてます。




