5節 虚ろは開かれた4
良いお年を(12月31日約336時)
静まり返った、闇夜の住宅街。聖の住宅たる修道院の内にある食卓の席に、オレンジのパジャマを着た果楠が静かに腰掛けていた。俯く少女の風呂上り故に身体は火照り、顔は赤く湯気が立ち昇る。が、赤みは次第に
(やばいやばいやばいやばいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!! やった! やっちゃった!! やらかした!!! やってしまった!!!! 何年振り!? 聖君の家でお泊り会!! 小学生の時は何度かやって、中学からは自然と止めてたから3年振り!? 分かってる!! 年頃の娘が同年代の男の子の家に泊まりに行く! しかも〝親不在〟!! アナちゃんはいるけども……――それでも尚、若い男女が屋根1つの下ならば、そういう考えは〝是非も無し〟!! 故に私がそういう思考に陥るのは必然……けれども!! そんなつもりは無かった!! 聖君の儚げな姿と違和感があったから!! お節介を承知で傍にいないといけないと思っただけで!! これはあくまでも聖君限定の、聖君だからこその行動であって……――いや? それだと尚更アウト!? あかんあかんあかんあかんアカンアカンアカンアカ――っは!!)
高速で行き交う心中の言葉の最中、果楠はある事を思い出す。泊りに行く直前、母から小さな紙袋を手渡されたのだ。
《……果楠、聖君の家に泊まりに行くんでしょ!? 向こうには奉さんがいないから、〝コレ〟がきっと活躍するわ! 大丈夫! 私達は親子だから! 私は貴女の味方よ!! 行ってらっしゃい!!》
(……お母さん!! お力を!!)
母の思いと優しさに縋り付こうと、果楠はその場から脱兎の如く離れる。向かったのはシスター達のある一室。聖から貸し出された部屋であり、手荷物はそこに置いていた。着替えと共にしまっていたハンドバッグの中にある紙袋を取り出し、中身を確かめる。
――――0.~と書かれた箱が一瞬見えた。
「ゴッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!?!?」
瞬時に袋の〝正体〟を把握した果楠は、すかさずそれを壁に向かって叩き投げ付ける。驚いた拍子に無理な汚声を発した影響か、堪らずむせてしまった。
「――っドぐほ!! ゲホッ!! ――……はぁ……はぁ……――ですよね!! 私がそう思うなら、お母さんもそう思いますよね! 無理も無い!!」
「果なーん?」
「はぃぃぃいいいい!!!? ひ聖君ん!!?」
「え……晩御飯出来たけど……大丈夫……?」
「大丈夫です! イキまず!!」
声を裏返しながらも少女は返事し、食事へと臨む――。




