5節 虚ろは開かれた1
晴天の昼近く。聖の自宅たる修道院。その玄関前で、果楠は深く深呼吸する。
「すぅー……はぁ~。……良し」
意を決した果楠はインターホンを鳴らした。前日、果楠は聖と遊ぼうと思うにも、連絡が付かず出来なかった。そこで今回は、事前に連絡をしてから伺った。その手に持ったバッグには、大量のハンバーガーセットとソフトドリンク入り大容量ペットボトル。極め付けに、果楠激押しの洋画〝黙示するシリーズ全巻セット〟。
前回はツメの甘さと予想外で不本意に終わってしまったが、それだけが敗因。故にそれをクリアした以上、彼女には恐れるものなど無かった。
そんな彼女を称えるかの様に、扉が開かれる――。
「……果楠」
「聖君! おはようござ――っ」
果楠の礼儀正しい挨拶を、聖は抱き締めて中断させた。
「ひひひひ聖君!?」
堪らず果楠は裏返った声で呼び掛ける。しかし、聖は答えない。
(ひ、聖君の濃い匂い……――)
「――ッハ! と、取り敢えず! そ、外ですし、な、中に入りまじょ!」
「……」
静止する聖を、果楠は無理矢理押し込んで一緒に家の中に入る。途中で扉に手を掛けて引き寄せて閉め――鍵を掛けた。
◇
聖は突如動き出し、扉に果楠を押し付けて顔を近付ける。
「あ……そんな……聖君……」
「果楠……もう、我慢出来ないんだ……」
「うっ! うぅ……―ぷはっ♡ あ……ぁ♡ そん、ひじ……君。駄目、こん、んっ♡ ……っは♡ 私達、まだ、子供で……お昼から……っあ♡ っめ……♡」
◇
(――って! なるのでは!? なるのではないのか!? 来ちゃう!? キちゃう!!? 私! シンデレラになって大人の階段登る時が――!?)
脳内で瞬時に未来予想図を果楠は描くが、聖の手の力が強まったのを感じた。
一瞬で思考が停止する。それと同時に、先程迄思い描いていた淫らな光景が白紙になる。無我の成り果てた果楠は、無意識に、本能的に、聖を抱き締め返す。荷物を持つ左手を肩に乗せ、前腕全体で背中を押さえる。右手は聖の頭に置かれ、優しく撫でる。優しく撫でつつ、その頭を自身の頭に寄せる。左手も同様に。慈愛の限りを尽くす一方で、自身の内へと取り込む様に、押し付けた――。
「――飯の香りがプンプンする!!」
「ゔぇ!?」
突如の大声。果楠は堪らず、裏返り気味の濁った奇声を零す。声の方に視線を向けると、アナが廊下の曲がり角から半身を乗り出して覗いていた。
「……吾輩も、こんな尊い場面に水差しが許されるとは思わなんだ。しかして、果楠の手に持つ素晴らしきかな至高なるハンバーガーの香りと、そんな至上の献品を持ってる果楠御客人を廊下で立たせる聖畜生の不躾な対応を看過する事は出来ない。――聖! お客様を中に通して差し上げなさい!!」
「……ぁあ。ごめん。果楠も、ごめん……」
「あ、いえ! 大丈夫ですよ、大丈夫! ハンバーガーが冷める前に、皆で食べましょう!!」
書くと飽きる。そんな調子で書く事をお赦しを。




