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4節 白く、青く、疾い御業10

 静寂の雪原で機神が唸る。蹲る機神ベイバビロンの節々から強烈な光が木漏れ日の如く溢れ出る。


 光は雪原を容易に溶かし、貫いた。


『聖! 大丈夫か!?』

「うっぷ……!」

『先程迄エネルギーが安定したと思ったのに! ゲロビームが止まってた分が溢れたか!?』

「うう……崩れそう……!!」

『聖! 気張れ!! エネルギーが完全に解放されたら、山どころかネパール、アジア、ユーラシア大陸……――いや、地球が無くなるぞ!! 果楠も死ぬぞ!?』

「か……な……」


 アナの言葉に、聖は僅かに動きが止まる。光も若干だが弱まるも、それに合わせて機体が膨らむ。破裂しそうになる機械巨人の表面は徐々に光沢が強まり、所々が発光し始める。


『クッソ吾輩だけ(・・)では止め切れない!! だから聖! 其方止めろ(やるきだせ)!』

『――だから()が来た!』

『ファ!?』


 突如入る通信に思わず驚くアナ。それと同時に、空の彼方から光が雪原へと着陸した。舞い上がる粉雪は煌めき溶け、紫の白のマーブル装甲が隆々と稼働する。


『美とは私を指す言葉! 美が齎すは揺るがなき強さにして不動! 即ち私に叶う者無しっ! マイルズ・ブロークンこと〝ヴィオレスマリア〟こと〝ベイバビロン・メアリール〟! ここに推参ッッッ!!』

『ナイスタイミング! だがもっと早く来てくれ!!』

『不名誉は! 活躍返上!! ホトトギス(レッサーカッコー)!!!』

『不安過ぎて吾輩鳴きそう!』


 ベイバビロン・メアリールは各部が光る。


『不滅の愛は彼方まで!!』


 詠唱の後、メアリールは変形する。上半身は左手に、足は腕に。機械巨人はその身を巨大な左前腕と化すと、機体は細分化して内部より光が溢れる。腕はその場から上昇しつつも依然として光が溢れ、やがて超巨大な光の巨人が出現した。


『デッカ!?』

『〝万端溢れ満たす(フィリアガーペ)永愛の機与神の威光(・アフロダイタン)〟!!!』


 怒髪天を突かんばかりの機械巨神は、光源と化すセインティアに抱擁す(おおいかぶさ)る。


『本来の用途ではないのだけれどねぇ~……――やってやろうじゃねぇか!!』


 女性の声からあるまじきドスの効いた口調。それと同時に、爆弾と化したセインティアが弾けた。


 光の巨人も同様に限界まで膨張。破れんばかりな勢いで身体が大きくなるも、数分の後、巨人は飽和する様に光に還った――。




 ◇




 雪原に幼女アナが顔面から墜ちて突き刺さった。


「ゔぇ!」


 すぐさま抜け出して起き上がると、空を必死に見上げ見渡す。


「う~~~ん……――おや~ぁあ? かっ! なら(・・)――……ぃったぁあ! 空からギアマリア解除した(おんなのこじゃない)聖が!」


 アナは大股に雪を乱雑に踏み越えて、聖の真下に向かって行く。到着すると周囲の雪を搔き集めて小山を気付くと、小さな両腕を天に掲げ、更には髪の毛すらも上に向かせて束ねる。


『やってみる価値はありますぜ~! ――げふっ!』


 幼女の髪と腕、足元の雪小山が押し潰される。雪が大きくばら撒かれ、煙幕ならぬ雪幕が晴れる。雪に埋もれ気味でうつ伏せになる聖と、それに下敷きになるも抜け出したアナに、何者かが歩み寄る。ベイバビロン同様の、紫と白のマーブル装甲のドレスを纏った筋骨隆々の大柄なギアマリア。マイルズことヴィオレスマリアだった。


「無事で何よりだわ」

「ヒ! 筋肉モリモリマッチョウーマン!」

「何ですって?」

「アレは嘘だ」

「オーケー! ……――で、本当に大丈夫なの? 聖君」

「ブーメランだな」


 アナの視線の先。ヴィオレスマリアは、左半身の装甲が融解し、露出した素肌も酷い火傷を負っており、所々が抉れていた。


「大丈夫よ。慣れている。寧ろ、ワビサビの如き美しさでもあるわよ?」

「ア、ハイ」

「それで。もう一度聞くけどその子は?」

「ああ。怪我は無いが意識は失ってる。……オマケに聖杯(プランター)も無い。先程の爆発時に飛んで行ったのを、先に拾ったペイルライダーに持ち逃げされた。聖の姿を探している時に抱える姿を捉えたが、対応出来なかった」

「まあ、ドンマイね。生きてるだけで十分よ。ご苦労様」

「……聖の初の大仕事だ。敗北(くろぼし)は、苦い経験として聖の今後に影を落とすだろうな……」

「まだマシね。プランターとの取り合いで、苦い経験として味わえない方(・・・・・・)が当たり前(・・・・・)ですもの……」

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