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4節 白く、青く、疾い御業8

 そこは霊峰マチャプチャレから離れた場所に位置するヒマラヤ山脈。隆起する幾つもの刺々しい山々は、穢れなき純白の氷河に覆われていた。


 唯一無二の純白の世界は、同時に無音の、静寂の空間でもあった。外部からの干渉を受けないが故のその一帯は、聖域とすら形容出来る。




 ――――禁が破られ、踏み躙られる迄は。


 遥か上空から落ちる2人の巨人。乱れ無き白銀の世界に巨大な陥没と轟きを撒き散らす。前人未到の領域で起きた人知を超えた現象。それはまさしく神話の再演。


 城雪の巨大煙幕から飛び出すのは青い機械巨人、ベイバビロン。大きなステップを踏んで雪地を踏み荒らし距離を取る。


『はぁあ、はぁあ、はぁあ……ハァ――――…………っふっ! はーっふ、はーっふ、はーっふ――』


 スピーカー越しの様な荒い声質。乱れた息遣いに合わせて機体も揺れ、鎌を構えて前を見据える。ギアマリア(にんげん)時の聖は遊ぶ様に余裕の圧勝を。ベイバビロン(ロボット)時は高みの見物を決めて封殺を。悠々と圧倒さを見せた存在は、震えながら前方を見据える。


 舞い散る雪煙が落ち着く、中から蠢く白い巨大な何かが表れる。何かの中から、ベイバビロン・セインティアが這い出した。


「う……くぅう……! ア、アナ! 何これ!?」

『あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ! 吾輩はプランターと接続してエネルギーを引き出したと思ったら、何時の間にか出力がメッチャ上がってた。な……何を言っているのか、分からないと思うが、吾輩も何があったのか分からな――』

「うっく……! アナ! 頭が痛い! どうにかなりそう!!」

『っく! 説明してる場合ではないか!! エネルギーの余剰が頭に響いているのか!? 聖、気をしっかり保て!! 此方で調整する!! ……とは言うが、このエネルギーの上がり具合、相性抜群だとか暴走だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を……――ですら物足らんぞコレは!! 国1つ賄い潤う程のエネルギー生成量だと? 謙遜も甚だしい!! 星を0から生み出しては壊すの反芻を飽きる迄出来る程のエネルギー量だぞ!!? それこそ銀河を生み出すのも――――』

「痛い痛い痛いたいたいたい!!!!」

『聖!!』


 遂に聖は限界を迎える。セインティアは機体が弾ける瞬時に修復、そのまま大きく変容し始める。頭の2本の十字の角は歪んで枝分かれして増大し、輪っか寄りの巨大な冠へ。直線的で直角的な装甲は引き締まり滑らかに、より女性の肉体の裸体へ。極め付けは背中から白い魚群が溢れ出て、超巨大な翼を形作る。魚群から離れた白魚達には形状以外に魚の要素は無く、羽根が舞い散る風に空を泳いで塵と果てた。


 湯水の如く、草木の如く巨体を更に大きく広げ、複雑に入り組む巨人の変貌に、ペイルライダーは静かに呟いた。


『…………大鵬(ダァンフゥン)……』

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