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4節 白く、青く、疾い御業7

 天狼星に追い掛けられる半壊の巨人。ブースターを背負って(・・・・)天を駆けているか、はたまたブースターに磔られて(・・・・)天に召されてるか。過去最高の勢いにより、機体は大きく軋み、次第にひび割れ、剥がれ、欠けていく。


 茹で卵の殻を剥く様に、外装から剥離、飛散し、後ろの光の巨狼に触れて消失する。手足は欠けていく中、遂には基部からひび割れ、もげて飛んでいく。最も先で風圧を受ける頭部は表面から捲れて千切れ、飛び散っていく。


 手足を、頭を失い、胴体だけでセインティアは飛翔する。


(まだだ!! もっと! もっと!! あと少しなんだ、あともう少しで帰れる(かなんに)!!!)

死ぬ気で気合入れろ(セインティア)ァァァァァァアアアあああああああ!!!!!!」


 祈りと願望の果ての決死の咆哮。崩れる機体は内から装甲が盛り上がって溢れ出す。両肩から膨張する金属塊は、背面のブースター群と似た形状の巨大な両腕へ。頭部もセインティアのソレを半ば再生させると、左顔側は大きく隆起して円錐状に。横に割けて鳥の頭部へと成り果てた。


行けぇぇぇえええ(かなぁあん――――)ッッッ!!!」

『ピィィィィ゛ィ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!!!』


 聖に呼応した咆哮か、はたまた亀裂から軋み鳴り響く金属音か。半壊、半身同然の機械巨人は、噴炎束ねし焔の翼と羽毛を纏う機怪鳥へ。人鳥並べる双頭の――否、〝双貌(そうぼう)大鷲(おおわし)〟へと姿を変えて、大空を残像も残らぬ勢いで突き進む。一進一退の追走は、巨鳥への変貌(へんけい)によって一気に突き放す。


『ん!? ――チィ!!! また変に速くなった!!! 限界なのに(ベイバビロンで)変な奴!!! さっさと死んで消え(とけ)ろ!!!』


 敵ギアマリアの怒声。それに比例して星狼の首は次第に萎んでいくが、比例して速度が上がっていく。


 セインティアは一直線に飛ぶだけでなく、上下に向きを変え、時には曲がって敵を翻弄させて振り切りを試みる。しかして敵もそれに追従する。目まぐるしい機動の果て――――それでも敵を引き離せなかった。


(砕ける……! 蝋燭の火みたいに小さい狼の首(アイツ)に負ける……!! 果な――――ぁあっ?)


 悲壮になった聖は感じ取る。深く考える暇が無いからか、すぐさま意を決する。


「すまない、セインティア(・・・・・・)!!!」


 愛機への謝罪。同時に巨鳥セインティアは突然急停止、内に向かって機体が一気に潰れ、ずさんな球体状になると、側面の一ヶ所から小さな〝影〟が勢い良く押し出された。


(ぁぃ)っ!?』


 鳥の以上にペイルライダーは驚く。しかし極限にまで勢いが乗った光の狼は止まる事が出来ず、そのまま鳥だった塊を吞み込んで彼方まで飛んでいき、地へ向かって落ちる小さな影(・・・・)、聖杯を抱えたセイマリアは歓喜する。


「――っしゃああああああアアアアアア!!!! 勝っっった!!!!」


 先程まで、絶望と悔いに打ちひしがれる脆弱さは見る影も無かった。少年故の、年相応の無邪気な喜びの声を放つ。勝利を、生存を、果楠との再会を確信したのも束の間、彼方から青黒い影が急接近する。


『はぁぁぁああああああ!!!!』

「くっそ戻って――」


 影となって三度襲い掛かる敵ベイバビロン。人型となって手にした大鎌の切っ先が、塵程に小さい聖の顔面目掛けて的確に迫る。


『――待たせたな!』

「遅いぞ、アナ!!」


 ロザリオフィールド。同時に大きな装甲板がセイマリアの前に出現して攻撃を受け止めた。


『ここからは共同作業だ(トゥギャザーしようぜ)! プランターの解析、及び接続の完了! アナテマとフィールドを疑似的なケーブルとしてエネルギー供給する! 圧倒的量だ。テオシスライドが再構成可能(のおかわり)だ。受け止めろ聖、大逆転だ(とぶぞ)!』

「ああ、やってやる!!」


 孤独からの解放。それが相棒なら相応の。またしても危機に直面するが、聖、セイマリアの瞳に意志が宿る。1人では得られない力がそこにあるのだから。


「〝テオシスライド〟!!!」

『――――あ、やべっ』

「えぇ!?」

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