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4節 白く、青く、疾い御業6

 限界まで、いやそれ以上の負荷を迎えた先、聖の白紙化した脳内は寧ろ苦しみから解放されて全身から力が抜けた。楽になった心身は外界を捉え、、聖に1つ、認識させる。


(ずっと星の狼頭(アイツ)から逃げて……飛んで……――――飛んで(・・・)?)


 聖は自覚した。当然の様に、当たり前の様に飛翔する自分。しかし(じぶん)は人間故に単身で空を飛べる筈がない。当たり前の様に熟してた不可能に疑問を抱く。理由を考えると、遮るかの如く鳴り響く答え(ごうおん)が妨害した。


「……そうだ、〝ブースター〟……ってのが、セインティア(おれ)を飛ばしてくれる……――ッ!?」


 閃きの如き気付き、それは同時に記憶を再起させた。単身、傾斜の雪原を群狼に包囲される中、発想の転換で檻と化した一帯を脱した時。遥か過去の体験と勘違いしそうな程の、つい先ほどの出来事。


 聖は自身を飛ばすブースターに意識を向け、認識し、理解を試みる。腰から湯水の如く狂い吹く炎。それに伴う勢いが、機体を、自身を飛翔させる。


 それの勢いをもっと増せないのか――不可。先程からブースターが砕けそうな程に最大限まで強めているが、それでも追い付かれそうになっている。このブースターをどうにかして高める必要がある。腰に意識を集中し、その構造、原理を把握する。炎を吹き出す噴出口に、聖は既視感を覚える。


(――……〝ホース〟!! 水を出してる時、口を狭めれ(つぶせ)ば、水の勢いは増す! ブースターの口は今にも壊れそうに押し広げられてる……やるか? 果楠に帰れるなら(やるしかない)!!!!)


 意を決してブースターの推進ノズル(ふんしゅつこう)を意識、足裏で、手で掴む様に意識し、窄める様に力を込める。


 止めどなく溢れる炎の激流に一度は押し返されるも、強引に押し込んで炎を、勢いを凝縮させる。予想通り、炎の勢いは更に増して機体は加速。一層強い力で身機共に押されて堪らず怯む。


「うおっ!? っく!! 速くなった……けど! まだ足りない!! 他に出来る事!!!」


 再度思考。しかし先程の様な焦りは無い。隅々に意識を張り巡らせ、案が出れば芋づる式に様々な手段を自問自答で選別していく。


(もっと同じやり方で速くなる? 無理だ、これ以上は本当に出来ない。もっと強く……――というか、何で後ろから追い掛けるアイツは空飛べるんだよ!? こっちはブースターで飛んでるのに、あんなデカいのにブースターなんて無くて速いなんて……――デカい(・・・)? ブースターの巨大化(・・・)!? ベイバビロン(テオシスライド)もギアマリアからデカくなるんだから、デカいベイバビロンから更に大きくなれれば!? 出来るか!? 大きく出来るのか!? ……――駄目か! これ以上は大きくならない!!! 俺もアイツみたいな、全身太陽みたいな……――〝なってみる〟か!?

 ベイバビロンのペイルライダーは狼に変形した。俺も変形出来るか? 機体をブースターに作り替えて……!!)


 聖は念じる。腰で吹き荒れる一部、それを全身で行える様に。想像では機体そのものがブースターに変わる様にイメージ。敵が狼の首だけだからだ。しかし、機体は背面を中心に、随所に腰のブースターと同型のものを複数生成し、葡萄の如く房成りなっただけ。それでも各種推進装置も次第に点火、勢いを束ねてまたしても速さを追求してのけた。


「ブースターになろう(・・・)としたのに、機体(セインティア)勝手(・・)にブースターを増やした(・・・・)……!? けどこれなら……!!! でも、もっと!!!」


 尽きぬ欲求。今以上への速さの拘りと執念。溢れんばかりの思いに比例して、機体にヒビが奔った。

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