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4節 白く、青く、疾い御業5



「――ッ! クッソこのぉお!!」


 噛み付く機狼目掛けて散弾を撃ち込む。弾ける害獣。それと入れ替わる様に飛び掛かる。空を覆う群れを、斧で薙ぎ払ってすぐさま起き上がる。


(やるか? やってみるか? やれるのか!? ……下手に動いて危ない目には……でも機体が消えるよりも先に負けそうだし……)




『……打開出来そうなら、別に打開してしまっても構わんぞ』




 脳裏に過る相棒の言葉。まるでこの状況を嘲笑うかの如く挑発に聞こえてしまう。


「アナ……――っく! 果っ楠っ!!」


 三度唱える縋る(いのり)の言葉。聖は意を決し、わざ(・・)とうつ伏せに倒れる。それを察知して狼達は、一斉にベイバビロン・セインティアへ急接近。天蓋の様に頭上を覆うと、セインティアは腰のブースターを最大出力で稼働、焔を滾らせてながら放ち、その反動で斜面を這い昇る(・・)


『――ッ!? ァア!!!』


 悠々と立っていた青いベイバビロンは、少しして状況の不味さに気付き、堪らず擦れた声を掛けて追い掛ける。セインティアの背後と、上空から群狼が怒涛の勢いで襲い掛かるも、距離が開いてる為に躱される。やがて白い機械巨人は霊峰マチャプチャレの鋭い山頂を超えた。


『俺を倒すのに山の裏側(・・・・)まで狼は置かないよなぁあ!!』


 どれだけ一対多を強いらされても、この戦いが一騎打ちである以上、その範疇を超えた領域に手は回らない。山を離れるのなら降るか飛ぶかに限定されるのでその両方に狼は特に群れ、転倒した際に山頂付近の狼の数が少ないのを目視で確認。極め付けに、遠く離れた場所に佇むベイバビロン(おやだま)付近に狼がいなかった事。


 狼のいない場所が存在する――その直感は的中し、鋭く尖る頂点から見下ろす斜面は日陰故に暗く、麓の大地を眼下に見下ろせた。その間を阻む邪魔も無い。聖は力を超え、一気に山を急降下。


 ブースターの勢いだけではなく、足で山肌を蹴って更に加速する。背後から地響きが聞こえる。追い掛ける狼達のものだろうが、今迄苦しめていた山が今度は敵の追撃を阻む味方となってくれた。中腹を通過した辺りで、セインティは踏ん張り、空へ向かって飛び立つ。


『……戦狼似星(チェンランスーシン)!』


 微かに響く声。それと同時に、セインティアの背後が異様に照らされる。振り返ると、機体は光に包まれた――――。

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