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4節 白く、青く、疾い御業4

「どういう意味!?」

『プランターと吾輩を接続する。そしてエネルギーを引き出して、セインティアに還元する。上手くいけば出力上昇、稼働時間の延長他の大恩恵で大逆転だ』

「でもお前……さっきアレをヘブンズラックにしまおうとしたのに拒否られたんじゃ……」

『それはそれ! これはこれ! 収納は拒否られたが、聖杯自体は動力炉として使うもの、接続は出来る!! 仮に型が合わなくて拒否られたのならゴリ押せばいい! ハッキングしてプロテクトを解除してボロ雑巾になるまで引き出してやる!!! ……の為に、吾輩は聖杯との接続に専念する為に少し黙る。弊害として索敵や制御、反応が鈍くなる。具体的にはバランスは自力で取ってくれ』

「分かった! ……どの位頑張ればいい!?」

『分からん。すぐには終わるまい。もしかしたら限界ギリギリかも。だが全力は尽くす。だから、耐えてくれ。それと聖、不安にさせたくはないのだが敢えて言おう。……打開出来そうなら、別に打開してしまっても構わんぞ』


 その言葉を最後に何かが消えた感覚を聖を察した。それと同時に心身に例え難い強烈な負荷が掛かり、セインティアは立ち眩む。


「っく!! 急に辛くなった……!? アナの補助(たすけ)が無くなったからか!? っく! やってやる!! 果楠ッ!!!」


 奥歯を噛み締め、呪いの如く唱えて己を律する。目を見開き、耳を澄まし、威圧的表情で形から闘志を高める。改めて戦いの場を見渡し、自身が置かれた状況を再認識する。


 傾斜のきつい山肌。狼の群れが取り囲み、特に下方は青い雲と見間違える程の密集率。真上は雲1つ無い青空だが、機械狼の大雨(さきほどのたいけん)を強烈な連想させる。狼達の生みの親であるペイルライダーのベイバビロンは、セインティアと同じ高さで、狼達の遥か後方で構えつつも見ているだけだった。


(狼を突破しても向こうが対処して来る……か。じっくりやるつもりだ。煮込み料理にされてるみたいだ)


 飛び掛かる狼達。捌いていくも次から次に現れる後続は途切れない。終始動かされ、翻弄され、その場に釘付けにされる。


(ギアマリアの時はゴリ押しで何とか出来た。同じ事にならない様にベイバビロンだとこんなチマチマしたやり方……~~! チマチマでも長いと疲れる!! やっぱり、思った通りに限界来てこっちが負ける!! そもそも何で向こうは何十、何百も狼出せて平気なんだよ!? しかもさっきは狼みたいな姿に変形し(ばけ)たし!! 俺は出来ないぞ!! いや出来ないのか!? やった事ないから分からないし!! ああクッソ!! 向こうが強いのってこういうのもアリなのか!?)


 敵から学び、痛感させられる世界の広さ。しかして聖は屈する訳にはいかない。幼少期でも〝逃げる〟だけしか出来なかったが、それでも逃げるという立派な対処法(・・・)。ならば諦めず、この瞬間も足掻くしかない。


(周りを取り囲む狼。特に下と(うえ)の向こうにいっぱいいる。ペイルライダー(あいつ)は遠くでのんびり見てる……ああ、何も無くて広々だ、こっちは狼だらけで狭い――――え?)


 気付く聖、その瞬間に生まれた隙を突かれて狼がセインティアの足首に噛み付き、大きく転倒させられる。

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