3節 青白く、恐怖はもたらされる6
遅くなりました、申し訳ないです。感を取り戻す最中です。最善はつくします
暗黒の中を力強く駆けるセイマリア。衣服も髪も肌も焼け焦げ、傷だらけのセイマリアは、その見た目とは裏腹に、力強い足音が通路に轟き、傷口から飛び出た鮮血が石畳に静かに撒き散らされる。怯む様子も見せずに階段を猛虎の如く駆け上がる。
『前方から接近する影が5つ。狼だ!』
「強行突破ッ!!」
セイマリアは腹の底から振り絞って声を出すと同時に盾を装備。斜めに傾けながら迫る群狼と激突、強引に弾き返す。押し通った聖女はすかさず後方に爆弾を複数個投げ放ち、狼達と階段を爆破、追撃を阻止する。尻目に駆け抜けた聖女は大広間に飛び出た。部屋の中央には狼の群れを従える青白い出会ったばかりの仇敵ペイルライダー。ペイルライダーは鎌を構えて迎撃態勢を取ると、群れの内1匹が離脱して出口へ向かって行く。
『逃げた1匹にプランターの反応! 持ち逃げされたぞ!! アレを追うんだ!!』
「ああ!!」
歯を噛み締めて力強く地面を蹴る。その行く手を阻もうとペイルライダーは群狼をセイマリア目掛けて飛び掛からせた。敵の行動出だしで白聖女はすかさずロケットランチャーを取り出してロケット弾を何発も発射。破裂音を上げながら飛翔体は宙を切り裂き狼達を弾き飛ばす。舞い上がる爆炎とアナテマの欠片が闇に舞う中、一瞬だけ空いた穴目掛けてセイマリアは飛び込み突破する。
抜けた先のすぐ目の前、ペイルライダーが鎌を構えながら狼の群れと共にセイマリアに強襲していた。
「アナッ!!」
『手筈通り、タイミングは任せろ』
意を決した聖は、歯を噛み締めてより一層踏み込む。最初に立ちはだかるのは狼の群れ。鋭い牙が自身を取り囲むその直後、セイマリアは前方にスライディングし、狼の下方を掻い潜る。その先で待ち受けるは鎌を振り下ろす青聖女。
『今だ!』
「ロザリオフィールド!!」
『感覚遮断!』
瞬間的に全てを弾く光の領域。その名前をセイマリアが叫ぶと光帯が飛び出て攻撃を弾き逸らし、セイマリアはペイルライダーすらも躱し切る。それと同時に後方で光が炸裂。一帯を強烈な閃光と音が埋め尽くした。
『グッド! 動きが止まった! 遮断解除! このまま抜けろ!!』
「ああ!!」
最初に会った際に向けたライトでペイルライダーは眩しがっていた。それに加えて頭を割る様な強い音を放つスタングレネード、予想通り敵を行動停止に追い込んだ。光と音によって怯んだペイルライダーを尻目にセイマリアは起き上がってダッシュ。一目散に出入口に向かうが、後方から影が3つ接近する。
『後方から3つ!』
「もう来るか!? クソったれ!!」
予想外の反撃の速さに悪態。セイマリアは爆弾を複数、ヘブンズラックから取り出すと後ろに放り投げる。爆発による衝撃に自身の身体が揺らぎつつも、左手に長剣を出して目の前の狼に投げ付ける。プランターを咥えた狼はサイドステップで飄々と避けるも、それによる一瞬の浮遊を隙を突き、セイマリアは瞬時にショットガンを出して弾丸を放つ。地に足付けぬ態勢から高速の散弾を浴びた狼は吹き飛び、何度も地面に跳ねてから起き上がった。その直後、瞬時に距離を詰めたセイマリアが狼を首から踏み倒す。勢い余って地面を引き轢り、プランターを咥える口元に銃口を空いた手を突っ込む。
「寄越せッッッ!」
怒号と共に散弾は放たれ、空いた手がプランターを奪い取る。狼の頭は跡形も無く砕け、セイマリアはそのまま出口へと駆け出した。
『聖! 背後!』
聖が尻目に見たのは、またも鎌を振り上げて迫るペイルライダーだった。




