1節 征く為に言葉は贈られる5
「じゃあ、トレーニング行くか。こういうのって、すぐには強くならないんだろ? 善は急げだ」
「そうだな。だが、それは最初だけで、長く続けばあっという間に時が流れるらしい。気が付けば記憶の中ではダイジェスト気味だろう。アニメやドラマの様にな」
そう言うと、アナは振り返って指を前に突き付ける。
「そう言う訳で、ダイジェスト!」
こうして、聖のトレーニングの日々は始まったのである。
トレーニングルームとなった地下室。代行者を起動させるも、起動直後に機械人形は周囲を見渡して、内から外へと両手を何度も動かすジェスチャーをした。
「これどういう意味だ?」
「片付けをしようって意味だろうな」
最初に始めたのは片付けだった。
「てか喋れないのか?」
「喋れないのだろうな」
◇
壁際に大量の荷物が並べられたトレーニングルーム。そこでゆっくりと腕立て伏せをする運動着姿の聖と、その上で寝そべってくつろぐアナ。代行者はその横で、聖の動きと連動させる様にゆっくりと手を上下に動かす。
「~~~~10ぅぅぅうううーー!!」
「聖、よくやった」
「くっそ、腕立て伏せを10回、ゆっくり動かすだけでこんなに辛いか!!」
「毎日励んで肉とプロテインを貪って寝れば平気になる」
「はぁ……はぁ……プロテインって、地味に高かったな……」
息も絶え絶えで購入時の事を思い出す中、代行者は聖にサムズアップを見せて褒めると、次のトレーニングに移る様にとジェスチャーで促す。
「……分かるんだけど、分かり辛い……いやもう、喋ってくれよ……」
「無理ぞ」
「知ってる……でも言いたいんだ」
◇
「うおおおっ! 筋肉痛で鍋が振れねぇ!」
「次回からは、食事は事前に用意だな……」
ダイジェスト、はーじまーるよー!




