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1節 征く為に言葉は贈られる4

修道院の食卓。聖は食べ掛けの料理を食べ終え、水をコップ1杯飲んで一息ついていた。


「……凄かったな……あの人」

「慣れるだろうが、それは吾輩には苦難だろう……」

「俺の苦難はこっちだろうな……」


 溜息交じりで、聖は先程のやり取りを思い出す。投げ槍気味で終わった指示。今後の自分の方向性を自身で決めねばならぬ事に、不安を感じていた。


「皆……忙しいか……俺だけで出来るかな。独学は、料理や家庭菜園でやったけども、理屈は違うし……」

「聖、違うぞ」

「え?」

「吾輩がいる。圧倒的演算力と、ネットに繋がった吾輩に死角無し。ついでに地下に置いた代行者何某もいる」

「うん……」


 それでも払拭し切れぬ不安。聖は手渡された物を確認する。首から下げる社員証の様な職員証。そこには何時の間にか撮られていた自分の正面顔写真と、自身の名前、ID番号。更にもう1枚紙があった。


 〝我等、聖教守護者団は汝、代羽聖を聖なる一員として向かい入れ、汝が身命を賭して世界の為に戦う事を認め、奮闘する事を是に証明する。よって、汝の振るう力に〝セイマリア〟、〝ベイバビロン・セインティア〟の名を授ける〟


 そう書かれた紙の名前に、聖は首を傾げた。


「セイマリアとかセインティアって何だ……?」

「力とあるから、ギアマリア、ベイバビロンの事だろう。ギアマリアは総称だからな、個別識別の名前が必要なのだろう」

「大変だな……まあ、それは良いや。当分はトレーニングだな。頑張ろう」

「うむ、やる気があるのは良い事だな」

「折角、皆が俺の為に協力してくれてるんだ。俺もそれに応えなきゃ」


 聖は自分に言い聞かせる様、気持ちを高める。一方で、アナは聖の言葉に思う所があった。


(その聖の為に協力(・・・・・・)してるのが怪しいのだがな。ネットでは〝キナ臭い〟と言うのだったか。元幹部級の息子と言えど、一個人の聖に支部長やら組織の最高責任者等が身近で親身に面倒見るのは都合と融通が過ぎる。なのに活動内容は命懸けの激務。死地に赴くのなら万全な状態にするのは分かるが、本当にズブのド素人を鍛えて特別強い敵のいる場所に出向かせようとするのは狂気の沙汰だ。無茶苦茶とも、強引過ぎるとも言えるだろう。聖教守護者団(むこうがわ)の言い分では、圧倒的人手不足だからと言っていたが……それだけか? ……――聖、吾輩達は何か、もっととんでもない事に巻き込まれてるのかもしれないぞ……)


 今迄の経験、習得した知識。そして今に調べた情報からの推察。機械ながらも、アナの心中に不安が立ち込めた。


「聖」

「ん? 何だ、アナ」

「危ない事、怪しい事には気を付けるんだぞ」

「お? おう…」


 不意の忠告に戸惑う聖だった。

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