1節 征く為に言葉は贈られる2
(オカマ……だっけ。本当にいたんだ……しかも凄いムキムキ……)
女性の様に振舞う男性がいる事自体、聖は分かっていた。しかし、身の回りではその存在はほぼ皆無である事、更にはテレビといった情報媒体でも見掛けない容姿に、少年は圧倒されて動揺せざるを得なかった。
「聖ー? 客かー? 食事の余りを食べないなら――」
行って戻らない聖に痺れを切らしたアナが玄関に着くと、ドアの向こうにいる偉丈夫を目撃する。
「アラ、お嬢さん。こんにちは」
「ひぇ!! 化け物!!」
「何ですってェェえええ!?」
「ひぃぃィイイイ!!!」
異様な風貌への反射的反応、それに伴うマイルズ怒りの豹変。鬼の如き表情に、アナは甲高い悲鳴を上げて聖の脚に組み付く様に逃げ隠れた。
「ちょ! おま! ……すみません、ウチの子が失礼な事を……」
「まあ、こんな格好だってのは自覚してるし、そんな反応された事は今日が初めてじゃないから、気にしてないわ。だ、け、どっ! 人に酷い言葉を言うのは感心出来ないわね。するべき事があるんじゃないかしら?」
「う、うむ……すまぬ……」
「はい、良く出来ました」
アナの謝罪を聞いたマイルズは笑顔で返す。慈しみを感じさせる屈託の無い笑顔に、聖は男性でありながら聖母を連想させた。
「じゃ、じゃあ、立ち話もアレですし、応接室に案内しますね……」
「あ、だったら、秦さんの執務室に案内して貰えるかしら? 実は用事があるの」
「分かりました……?」
言われるままに聖は修道院の奥へと進み、マイルズも入口の近くに置いた大きな箱状の荷物に取り付けられたベルトを持って聖の後を追い掛ける。
背後から異様なオカマの接近に気付いたアナは、駆け足で聖の前方に回り込むと一気にジャンプし、聖の胸元にしがみ付いた。
「うわっ!? 何してるんだ、アナ!」
「彼奴は今の所慣れぬ。安全の為だ、構わず行け」
「ふふっ。甘えん坊なのね、アナちゃんは♡ 可愛いわぁ~、人工知能とは思えないわぁ~」
「おのれぇ……」
幼女は震えた声で聖の肩越しに威風、異風とも言える、性別を超越した生物を睨み付ける。呆れた聖は、アナを落さない様に両手を身体に添えて抱き抱えて歩き続けた。
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