6節 獣は世々限りなくあるように
「30分って無茶だろおい!!」
無茶ぶりともいえる耐久時間に、ギアマリアは文句を怒声で吐き捨てた。
だがそれでも、ギアマリアは起き上がる謎の敵――ヘルティガンディから目を離さなかった。
車に対して、異常な執念と憎悪を抱く車を象った姿をする黒い女。
ギアマリアのようで、ギアマリアとは何かが違う、その格好の得体の知れなさと、錯乱したかのような怒りの叫びが、気味悪さをより一層引き立てた。
狂人――だが、その一言だけでは言い切れない何かを、聖は無意識に感じ取った。
『追伸で殺さずに倒せるとあったぞ?』
「そうは言う……――っておい!!」
得体の知れない敵の対応の仕方に戸惑る聖だったが、ヘルティガンディは、そんな事などお構いなしに、突如真横に走り出した。
『進行方向に熱源――車だ』
「くどいぞ、あいつ!!」
またしても、車を狙いにくさまに苛立ちを覚えるギアマリア。危険性が高い筈であろう、こちらを狙わず車を狙ったかと思えば、人間である白聖女を、車と認識して襲い掛かる。
戦い方も動きも、どことなく自暴自棄とも暴れているともいえる言動は、戦っているというよりも、話が通じない子供の相手をして駄々を押さる感覚だった。
『聖、アンカーロープを回転させて投げ飛ばすんだ』
「何!?」
『アンカーロープは、先端におもりが付いていている。上手く投げれば、相手に巻き付いて動きを封じられる筈だ』
「分かった!!」
そう言ったギアマリアは、ヘブンズラックを展開した。
数珠状に並ぶ十字の光の輪から、ロープの束を取り出して両手に持って引き延ばすと、先端に反しが付いた部分近くのロープを、右手で長く持って上に掲げて振り回す。
『照準補正はする……――今ッ』
「うおりぁぁあッッッ!!」
叫び声と共に、ありったけの力を込めてフルスイングと共に、アンカーを投げ飛ばす。弧を描きながらも、空気を切り裂いて真っ直ぐに飛翔するアンカーは、ヘルティガンディの背面装甲に突き刺さった。
『補正したのに投げる瞬間でズラす馬鹿がいるか』
「初めてなんだぞ!」
『変に力むな』
「だって――ッ!」
苦言を言うも、一方で攻撃された相手は、ギアマリアへと目標を変えて猛進し出した。
ギアマリアは、咄嗟にロープを捨ててナイフを取り出して構えようとした途端、またしてもアナが突っかかる。
『ロープを手放してどうする。それをありったけ引っ張れば、繋がっている向こうの体勢を崩せるものを』
「あーもう、分かった!!」
投げ槍気味に聖は答えてロープを拾おうとするも、相手は踵にあるタイヤを使って道路を滑走し、一気に距離を詰めて来る。
「ちょ――」
『間に合わない、フィールドでガード!』
「くっ!」
ヘルティガンディは肉薄して拳のタイヤを回しながら繰り出すと、ギアマリアは左手でガードするように手を出して、ロザリオフィールドを展開。幾つも回る十字数珠の光の輪が衝突し、轟音と閃光が眼前で舞い散った。
「っく……!」
光と音で頭が割れる感覚を覚えて、ギアマリアは表情を歪ませる。一方で相手は、バリアに攻撃を弾かれて、隙だらけな上体を晒け出した。
あからさまに無防備な姿に、戦闘の素人の聖でも攻撃のチャンスだと気付くと、フィールドを解除して右拳を振り被った。
「すいませッッッ!!」
謝罪しながらも放たれた正拳は、黒女の鼻先へと叩き込まれてそのまま殴り飛ばす。ヘルティガンディは大きく転げながら後方へと吹き飛ぶも、よろめきながらもすぐに起き上がった。
「痛っつ……マスク部分に当たった……硬い……!」
『其方は彼方よりも非力なのだ、ナイフを腹に突き刺せば良かったものを。それでも死にはしない筈だ』
「そっか……」
『――聖。以前の聖地戦のように、手足を狙おう』
「折るのか……」
『相手も、此方も生命あっての物言いだ。冷やかしで、今ここで戦っているのか?』
「……俺は――てっ!」
「車!! 車!! 邪魔するなああああああ!!!」
一瞬の油断から我に帰るも、すぐそばにまでヘルティガンディは迫って来ていた。ギアマリアはバックステップで攻撃を回避すると、ヘルティガンディの振り下ろした右拳は地面へと叩き込まれ、道路を叩き割った。
『埒が明かないぞ。日本支部のギアマリアが来るまで粘っていたら、死人が出なくても地面に大穴の蜂の巣が出来上がるだけだ』
「……そうだよ、俺はした、したんだよ。あのと――!?」
言おうとした途端に迫る敵の一撃。悠長に考える暇もなく、聖に問い掛けるアナに対して、ようやく少年は気付いた。
「アナ……わざとか? わざと話し掛けて、俺の邪魔してるだろ!?」
『ああそうだ。……〝煽る〟というのだろう? どの道、其方はここにいる限りは4択だ。
怖気付いて逃げるか、不様に殺されるか、30分に悪戯に町を壊すか、有無を言わさず奴の手足をもぎ取るなり、殺すなりして行動不能に追い込むか。
というかやれ。そんなやる気のない態度だから、聖地でエヴァランスことシーダマリアに論破されて、挙句の果てに殴り飛ばされるのだ。だからやれ、やるのだ。
他の言い方も試そう。やるのじゃ、やっておやり、やちゃっいなさい、やっちゃえ~☆ お兄ちゃん♡』
「頭ん中でおかしく喋るな!!」
覚悟したにも関わらず、未だに優柔不断と保身に走る聖に見かねて喋るアナ。
的確に、命令形で、果ては挑発的な喋り方をする少女の幼い声は、耳を通してではなく直接頭の中から聞こえるので、余計に苛立ちしか感じさせない。
しかしそんな聖を気にも留めず、お構いなしに依然として、ヘルディガンディは猛獣の如く殴り掛かって来る。
「車ぁぁぁああああああ!!!」
「――うるさい!!」
叫ぶ狂女目掛けてギアマリアは、ヘブンズラックから鉄骨を取り出して顔面目掛けて叩き付け、女を倒れさせた。
「元はと言えば、あんたが車、車と叫んでいるから! 車に嫌な目みたかもしんないけどさ、町荒らすことしなくても良いだろ!!」
戦う理由――本音をぶちまけたギアマリアの甲高い声が周囲に鳴り響く。
フラフラと立ち上がるヘルティガンディは。うわ言を喋り出した。
「……車ぁ……憎い……奪われた、無い、もういない! これ以上……奪わせない!! 消えろぉおおお……」
つんざくような声。それは、悲しみと憎しみと怒り。やり切れない感情を織り交ぜて放たれた言葉。
先程のギアマリアよりも響く、重く、悲痛だった。空気を震わし、鼓膜を通して聞いた聖は、目を見開いて立っていた。
ああ、この人は――吐息が出て、優しい声が出た。
「……嫌な目、あったんだな……だからこんなこと。良いこと、してるつもりなんだな。――良いことしてると思っても、それで誰かが迷惑するんだよな……」
『聖……』
聖はそういうと、相手を見据えてナイフを前に向ける。
「――人は殺したくないさ。綺麗事だけど本心だ。目の前で嫌なもの見たら、気分悪いから止めたくもなるし助けたくもなる。
……それが人の、本当に悪い意味での迷惑になるんだ、やってられないよな。正論なのにな。
正しいことが悪で、悪いことは仕方がないんだ。ゴミのポイ捨てを注意した子供を、大人は逆上して蹴って、良いことだからと人を殺して、人を助けたらそれが迷惑扱いで謝られて。
迷惑にならなければっ御咎めなしだって……――罪悪感とモラルの問題だよ、実際は」
「車は……車は……」
「勘弁したいよな。お互いにな。悪いことが無ければ言わなくていいんだからさ……。
――すみません、あんたの迷惑になるとは思います。けど、踏ん切り着いた。あんたの思いで皆が迷惑するから、邪魔させて貰います」
「憎い、憎いッ!! 憎いィッ!!」
「憎いよな。我慢ならないよな。――アナ」
『……やっとやるか』
「正しいとか悪いとか関係なくて、純粋な気持ちだったんだ。でも独善とか偽善とかって言えて。
だけどやっぱハッキリした。そういう風に区別はどうでもいい。素直に――あの人を倒す」
「憎いんだよおおおおおおおおおおおお!!!」
「迷惑を承知でさ。殺人じゃなくても手足破壊はどの道傷害罪さ! 世知辛いよッッッッ!!!!」
分かっていても、それでもと、だからこそ。
気持ちに踏ん切りをつけた聖に対し、気持ちのありったけを吐き散らして暴君と化したヘルティガンディ。雄叫びを上げる相手へと意識を集中させる中、栗毛の少女の顔が思い浮かんだ。
(果楠……もっと一緒に遊んだり世話になるからさ、許してくれ、ごめんなさい)
そう考えていると、突如ヘルティガンディの胸部にある長方体の一部が盛り上がり、歯車の形となって飛び出した。
車輪は泡のように、一気に同型の大量の歯車の山になると、塊は瞬時に形状と表面を変化させる。ギアマリアもどきから生まれたのは、見たことのある異質な巨人だった。
「機械兵……!! 作った!?」
『それだけじゃない。あのイドールの固体周波数は、吾輩と聖が鶴崎市で戦ったものと同一だ』
「――!? じゃあ、もしかして」
『ああ、一連の事件の主犯格は奴ということだ』
「苺の仇……! ――ッハ! 尚更やる気出たよ!!」
『其方が吾輩の力を求めたのはそれが目的だったからな』
「でも理由が増えただけだ! アナ! 力を!! 怒られるのは後!!!」
『良いだろう。其方に力を』
(食い物の恨みはかくも恐ろしい……か)
聖は気付いてなかったが、割り切ってやる気を出した時よりも、苺の仇だと分かった途端に脳波が変わってやる気が上がったのをアナは気付いていた。
猛犬の威嚇のような表示を向けるヘルティガンディと、その前方で佇む巨大な機械人形、イドール。
相対するは、己自身が成せることの重要性と必要性を見出して決意する純白のギアマリアこと聖とアナ。
ギアマリアがナイフを突き付けて構えると、黒女は手を前に出す。
「壊せえええええええええええ!!!!」
怒り狂った声でヘルティガンディはそう言うと、その声に従って巨大ロボットは動き出した。関節部の突き出た歯車が軋み、鈍い音と共に鈍重な足が動き出す。
それなりの速力と巨体故の脚幅で瞬時に距離を詰めると、ギアマリアに巨大な影を落としながら、剛腕を振り上げた。
『聖、相手はリーチが長いが動きは緩慢だ。タイミングを見ろ。弱点は頭部の範囲だ』
「――ああ」
静かに答えた聖は、目を見開いて相手の姿を捕らえた。頭上から振り下ろされた剛腕が隕石のように迫る中、ギアマリアはバックステップで大きく距離を取った。
クルセイドの剛拳はアスファルトを叩き割って穿ち、周囲を大きく揺らした。空気と大地が轟音と共に震える中、ギアマリアはヒールで細く尖った踵だとうとしっかりと着地し、側面へと駆け出す。
それに合わせて他のクルセイドが対処にあたるも、ギアマリアはヘブンズラックから生え出て来るようにして、艶消し黒塗りの巨大な円筒が上下2ずつ並んで取り付けられた長方形の物体を取り出すと左肩に担いで構えていた。
『ギアマリア用4連装ロケットランチャーだ……ロック完了、撃て』
「――っし!」
アナに照準を委ねた聖は、先程のアンカーロープの時のようにならないよう、余計な力を入れずに静かに引き金を引いた。後方部から煙と衝撃が連続で一気に放出されると同時に、4発のロケット弾がクルセイドの頭部目掛けて撃ち出された。
しかしクルセイドは、咄嗟に両腕を上げてガードをして攻撃を受け止めると、爆炎と黒煙に包まれた。爆音が静まり煙が晴れると、クルセイドの無機質で太い腕は大きくひび割れ抉れ、真っ黒に染まるもその原型は依然健在。
今度はクルセイドが攻めて腕を下して煙を振り払って視界を確保するも、そこには何もない。
ギアマリアを見失って僅かに動きを止めたイドールに対し、一方で金髪の少女は既に機械兵の背後に回り込んでいた。
左側頭部で纏めたサイドテールをたなびかせながら、ギアマリアは右足を前に踏み出してアスファルトをひび割り、そのまま一気に高く跳躍した。細かな黒い破片が舞い上がる中、それよりも高く、背の高い巨人よりも上を滞空するギアマリアは持ったナイフの刃を下に向け、自由落下しながら無垢な巨人の首へと突き立てた。
突き刺されたことでイドールは感じない筈の痛みで苦しむかのように身体を揺さぶると、ギアマリアの身体も振り子のように振り回される。しかしそれでも、歯を食い縛って耐えて鬼の形相を浮かべる少女は、右手はナイフを掴みながらも首元を左手で掴み、背中に両足を当てて身体を安定させると、より一層ナイフに力を込めてた。
刃元まで埋まる程に押し込むと、今度はナイフを両手で持ってそのまま力を入れる方向を下に向け始める。力の方向とイドールの動きが相まって傷口は広がり、遂には奥から放電が起きて機能を停止させた。しかしもう1機がすかさず、剛腕を振りかぶって仲間の死骸ごとギアマリア目掛けてパンチを放った。
「――ッ!?」
咄嗟に聖はイドールの背中を蹴って瞬時に離れると、巨大な拳が先程自分がいた背中を割り砕く。身体が2つに分かれたそのまま地面へと無残に転がる最中、意にも介さずクルセイドは方向転換してギアマリアを追い続けた。
反復しながら攻撃を回避し、背後に回り込む隙を伺うも、イドールも移動しつつもギアマリアを殴りながら追い掛けることで、聖に回避を専念させて反撃の機会を与えようとしなかった。
「なら!」
意を決し、重い気ってイドールよりも30m程に距離を取り、先程同様にロケットランチャーを構えた。だがそれと同時にクルセイドも右腕をギアマリアの方へと向けると、腕上部が盛り上がった。隆起した部分からは横4列に並ぶ穴が顔を出しており、穴からは弾丸が発射された。
「――!!」
『バリア!』
こちらよりも先に撃たれ、超高速の物体が空を突き進む中、アナの指示に従い聖はロザリオフィールドを展開して防御した。
左右2発は外れて聖の側面に着弾して大地を吹き飛ばすが、残り2発は聖を取り囲む十字数珠の結界と衝突して閃光と衝撃波が奔る。
「くぅうううッ!! ――つぅうおおおお!!!」
歯を噛み締めながらギアマリアは、前方に迫る2本の円柱へと全神経を集中させた。火花と稲妻が舞い散るかのように視界は常に光り、突き出した手が、フィールド越しにでも伝わる重圧で折れてしまいそうになる。
「重い……!」
『あの円柱状の弾頭、質量と接近速度がかなりある。ロザリオフィールドで出す空間の歪みは一般相対性理論の空間の歪みと理屈は一緒だ。カロリー残量が減るが力を入れないと突き破られるぞ』
「分かって、らあああああ!!」
腹と腕により一層力を込めて腕を振り払うと、それに連動して旋回する帯はより早く回転した。速度が上がった事でより一層甲高く響く摩擦音と閃光が煌いて、何とか巨大な柱弾を弾き返した。しかし束の間、既にイドールはギアマリアへと肉薄して巨拳を振り下ろさんとしていた。
『左側面に鉄骨を出せ』
アナの一言に迷わず聖は、左に向けた右手からヘブンズラックを展開して鉄骨を出そうとするも、出した鉄骨は真っ直ぐ出て地面に当たると、ギアマリアの身体を打ち上げながら伸び出て押し上げた。
「うおっ!?」
『身体に力を加えて踏ん張れ、微細な姿勢制御はこちらでする』
「くっ!!」
脳内で響く少女の声に従い、聖は全身を硬直させるように意識を集中させてると、背筋は弓なりになりながら手足が多少曲がりながらも真っ直ぐになると、そのままつま先から着地した。
指の先に体重を掛けて減速するも、アスファルトの地面は靴底との摩擦で焦げ付くと同時に表層が抉れ返って一行には止まらず、すかさず前に倒れ込んで両手の指も突き刺す。
更に足の力もより一層入れて地面を抉り返す・レールのような2本の線と同時に刻み込まれる10本の傷跡。
ガリガリと音を大きく立て上げ続けててようやく飛ぶ上がった身体の慣性が消えると、その姿勢のままで獣の如く一気に疾走。
同時に光輪から大振りの巨大な斧を取り出し、両手に持って刃の部分を後方へ向けて敵へと肉薄を試みる。
聖も予期しなかった急速離脱によっては目標を見失った敵機の隙を突き、ギアマリアは踏み込むと同時に回転しながら斧を大きく振り被る。
それと同時に、斧を挟むように上下に配置された2つのハーモニカ状のブースターの口から、青白い光が勢い良く噴き出した。
轟音を放ちながら吹き荒れる炎の奔流は、全身全霊の力を込めて振り払われた斧の勢いをより一層加速させてると、半円の光の筋が空に描かれた。
ブースターの加速で重みを増した剛刃は、イドールの巨木の如き足首を破砕しながら深く突き刺さり、推進の爆音すらも掻き消す程の衝突音を周囲に鳴り響かせる。
刃の殆どが大きくめり込み勢いは止まりもするも、ギアマリアは後ろに倒れる姿勢で足腰に力を入れて踏ん張り、地面が割れて足が埋まる程に踏み込んで雄叫びを上げる
「うぬんうぅぅぅぉぉおおおおおあああ!!!」
喉が張り裂ける勢いで叫ぶと同時に地面を蹴って柄を押し込むと、機械の身体に埋もれた斧のブースター部で燻る火が、再度その勢いを取り戻して吹き荒れた。
空気を焼き焦がしながら煌く光が生み出すそのパワーは、突き刺さった斧を更に奥深くへと食い込み、無機物の塊を押し退けながら、鈍重な巨体を支えるその足首を横一文字に両断した。
足首の内部を引きちぎるようにしながら斬り飛ばし、その威力は足首を断ち斬るのみならず、その威力でクルセイドの身体を大きく揺らして転倒させた。
咄嗟に腕で身体を支えようとするも、既に頭上には巨大な長方体を持ったギアマリアが陣取っており、落下しながらその先端を叩き付けると、先端から杭が撃ち出されて機械兵の首を貫き吹き飛ばした。
首と頭部を打ち砕かれた機械人形は、重力に従ってそのまま地面へと塊となって倒れ込んだ。
「さて……待たせた……か?」
横たわる機械の亡骸の上から、嫌味ったらしそうに、苦戦しながらも余裕のある言葉使いをするギアマリア。
不意に笑みを浮かべながら見詰めた先にいるのは、我慢でもしているかのように佇む黒い女、ヘルティガンディ。
「車が嫌いなんだろ? ――……俺は車だああああああああああああ!!!」
「――ッ!? 車ぁああああああああああああッッ!!!」
聖の言葉に反応して、憎むべき相手を見失った女は、思惑通りに白聖女目掛けて襲い掛かった。




