6節 黒く白く交われば7
おまたせ。
街並みの如き意匠の部屋が並ぶ空間。どれ程の時間が経過しただろう。フランスの山脈の地下深くの建築物の中で、一時は一睡し、更に奥へ奥へと歩き、時には下っていく。
◇
見渡す限りの石壁。地平線の先まで見えぬ暗闇の向こうまで伸びる巨壁。その下でギアマリア姿の聖は上を見上げる。その視線の先は、薄暗く、人影が蠢いて落下する。現れたのは共に行動する黒いギアマリアだった。
「隔壁の回路を直したが、材料が足りない。お前が身体でエネルギー通して隔壁を開けろ。開いたら僕が隔壁を支えるから、その隙に素早く戻って越えろ」
「俺が開けてる間に先に行かないよな?」
「向こうで同じ仕掛け合ったらどうする?」
「ぐぬぬ」
言いなりになるのが気に食わない故の嫌味交じりの質問。黒マリアは隔壁の目の前まで移動して、アイコンタクトを聖に送る。
「やってやります……よっ!」
聖マリアことセイマリアは大ジャンプ。壁に取り付いて、ボロボロの回路に腕を肘ごと突っ込んだ。その時、聖に電流奔る。
「あばばばばばば!?」
『聖! 踏ん張れ!!』
下方で何か音が鳴る。黒マリアが呼び掛けるが聖は痺れて反応所ではない。
「来い! 速く!!」
「あばばばばばば!!!」
「早くしろ脂身!! 巨乳あるだろ!?」
「う……っく!!!」
痺れて硬直する身体。体幹に力を込め、重心をズラして飛び降りた――いや、落ちた。
「べぶっ!」
さながら、ひっくり返った蛙の様な状態で背中を強打。情けない声が口から洩れた。
「早く!!」
黒マリアが叱咤する。その声は苦しく擦れていた。
向こうも辛い――けどコッチも辛い。聖は呻き声を上げながらもひっくり返る。満身創痍で方向転換し、亀の歩みで隔壁口を目指す。
『……――良し! 体内調整完了!! 動けるぞ!』
全身の麻痺が和らいだ。力は入ったセイマリアは一気に飛び出して隔壁口に飛び込んだ。
「でぁあ゛あ゛あ゛ッッッ!!!」
黒マリアが野太い声を出して隔壁を超える。重い音が木霊して領域を区切ると、黒マリアは息切れしながら少し歩いた後に倒れ込む。言葉なく、己の背中をさする。
「「お前ぇ……」」




