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6節 黒く白く交われば1

 代羽聖は、セイマリアは見た。暗所は揺らめく炎で照らされ、その向こうで飛び交う者達を。


 怒涛の一撃が遺跡を抉り、それを疾風の如き神速が掻い潜る。恐怖に打ち克ち、怯えるず、怯まず、奥へ、遠くへ。それは死闘。己を賭して相手の全てを奪う。


 セイマリアは思わず手を伸ばす。自身が忌避するもの、しかして望むもの、望まれるもの、至るべきもの――――。




 ◇




「ッー」


 目が覚めた。金属質な薄暗い空間が目に入る。先程見た光景――夢では明るく、熱かった。今はひんやりと冷たい空気が口を通じて喉を冷やし、思考を冴えさせる。


「アレ……? 何で……? だってさっき……」


 冷静になったからこそ、状況が前後で乖離してる事に聖は戸惑う。右手を思わず握り込むと、何かを掴んでいた。


 聖は見上げる様に目線を向けると、手の様な物を握り込んでいた。それどころか、自身が何かを枕代わりにして横になっていた事に気付く。不可得る様に見上げると、黒髪の美少女が見下ろす様に聖の顔を覗き込んでいた。


「おはよう」

「ぎゃああああああああああああああああああああアアアアアアアアア!?」


 堪らず聖は絶叫、その場から飛び退いて反対の壁際に逃げる。知らない場所、知らない状況、知らない人。心臓がバクバクと脈打って気が動転する。


「聖、クワイエット」

「アナ! こっち来い!! 速く!!」


 美少女の隣でアナが非常食のチョコバーを齧っていたが、聖は血相を変えて呼び寄せる。過呼吸気味に呼ばれてアナは嫌そうな顔を浮かべながら隣に座る。


 鼓動が肋骨を突き破らんばかりに強く脈打つ。相手を見定め、混乱する頭で相手を認識する。


 年齢は10代後半、自分と同い年か。人種はアジア系だが、端正な顔付き故に特定の国までは分からない。――よく見れば、小柄な身体の節々に黒と銀の装甲らしき面が伺えた。


「……――ギアマリア!?」

「そうだぞ」

「アナ!? コイツ誰なんだ」


 声を荒げる聖に呆れたのか、謎の美少女は深く溜息を着く。その吐息に、〝声〟で、記憶が蘇った。

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