5節 大いなる力は来れり8
顔を覆って全力を出す機装聖女の両者。周囲を爆散し、瞬時に移動し、それでも尚本気では無かったギアマリアは激突する。
天井を貫いた一矢が、両者の間を割り込んだ。
「「っく!?」」
一歩引きさがる両者。矢に続いて、空から何かが着地して衝撃波が広がり大気と遺跡を震わす。立ち込める粉塵が晴れて現れたのは、左膝を着けて左拳を床に叩き付けた姿勢――ヒーロー着地と呼ばれる姿勢をした、白いドレスを纏う筋骨隆々のギアマリアだった。
右手には、簡素なデザインの長弓を携えており、すかさず矢をたがえて構える。
「ちぃ……! 〝白騎士〟か……!!」
「ビディルカ!! あんた! どういうつもり!?」
「やり過ぎだ、クリスヒルト。炎で周りがとんでもない。環境破壊は楽しいか? 私達は、そういう趣味で聖杯探しをしている訳ではないんだぞ? 帰るぞ。ドイツは日本に勝ったんだ」
「何も終わっちゃいない! 何も終わっちゃいないんだ!! あたしにとっては、この戦いは続いたままなんだ!」
「我儘を。駄々を捏ねるな」
白騎士なる存在に赤騎士は一喝されるが、邪魔をされた怒りは止まらない。
「自分の意志で、喧嘩売る様な卑劣な真似をした奴をブチのめした!! それをダシに喧嘩を売る奴がいたから! 吠えズラ掻かせる為に買って、好き勝手してる最中なんだ!!」
「冷静になれ。クリシュニに見られてる。警戒してるが、何時不意打ちされるかおかしくない」
「そのクリシュニに! ディスられている!! 向こうに寝転がってるセイマリアに嵌められて、クソダサいだのみ好き放題に言いやがる!」
「いい気味だな、とは言ったがそこまで言ってない」
「ホラ言われてるぞ。記憶違いになる位に冷静じゃないんだ、帰るぞ。ドイツは日本に勝ったんだ、そう言える位に充分やった、お前は頑張った」
白騎士は向きを変えず、赤騎士に近付いて耳打ちする。
「(聖教守護者団のギアマリアが集まっている。君が派手に暴れて、ジャングルが燃えて、ココがバレたから集まってるんだ。今はチカプリ―ニャと彩蓮が消火活動に従事して、それを条件に両陣営休戦して協力する始末だ。赴いてるのはどれも手練れで、私達でも只ではすまない。――――君の失態だ、ドイツは日本に負けるのか?)」
「ぐぬぬぬぬぬぬ~~~~!!!!」
「良い子だ。さあ、行こう」
白騎士は横にズレると、赤騎士は大剣を振り下ろして足元を爆破した。
「何!? ッく!!」
爆炎が目眩ましとなった。一瞬怯んだクリシュニは再度向きを合わせると、そこに騎士2人はいなかった。
「逃げられた……!!」




