5節 大いなる力は来れり1
強い日差しが、木々に遮られて届かない熱帯の密林。奥底に佇む古代遺跡。木陰に位置し、石造りで苔とツタに覆われ、人の気配は無いのは見て取れた。その遺跡の前に佇む、1人の少女――――聖とアナが成る、セイマリアだった。
『古代遺跡に来たみたいだぜ テンション上がるなぁ~』
「いやみたいっていうか、遺跡なんだけど……――ここに〝聖杯〟があるのか?」
『近くの国の伝承や文献に、それらしい記述があったそうな。場所が場所なだけに、行って見付けるのに手間取ったみたいだがな』
「ふーん……」
聖は周囲を見渡す。草木が無造作に生い茂る一帯は、確かに人気は無かった。
「なら、1番乗りだな。プランター取って帰ろう。帰ったら今日のご飯は何が良い?」
『鰤とトマートの煮物。大根入り!』
「ブリ大根トマト入りね……」
セイマリアは草を乱雑に踏み抜いて、遺跡の中へと侵入した。中は広間になっていて、部屋の隅に用途不明の物体が配置されている。天井には穴が空いていて、そこから光が差し込んで広間を照らす。さながら舞台の様で、儀式の間の様だった。
「なーんも無いな……何処かに入口があるのかな……?」
「無いわよ」
「は!?」
誰もいない筈なのに他人の声。声に反応した瞬間に周囲を炎で取り囲まれる。辺りを仄かに照らされると、黒い影が上より落ちた。
「誰だ……!!」
『シルエット参照……赤騎士だ!!!』
「久しいじゃない、日本人」
『ドイツ語で日本人だぞ』
「前はハメてくれたじゃない」
「騙して悪いが……――こっちも必死でね……――無いの? プランター」
「先に来て地面も何も粗方探ったわ。ココはここだけ。プランターも何も無い。ずっと昔に出されて久しいのよ」
「成程……――日本語、お上手ですね。ドイツ人……でしたっけ? さっきのはドイツ語でしょ」
「ありがとう。趣味で言語学を覚えるのよ」
「ほう……――じゃあ、俺はこの辺で」
「火で囲って逃げれると思ってる訳!? あんたはここで焼き斬り殺されるんだよぉお!!!」
『第2次仁義なき戦い! 低身長爆乳VS高身長爆乳!!』




