3節 赤恥を忌み嫌い、腹黒く、白々しくあれ9
E4ー1。遅れます。あとスランプ気味
崩れる天井。差し込む眩い陽光から、巨大な影が覆い被さる。
『上から来るぞ! 気を付けろ!!』
「さっき聞いたぁ――」
弱々しい声は、影に包まれて途絶える。全身を硬い何かに包まれたセイマリアは、それらを押し退ける様にそこから這い出した。強烈な視界を指す。
「眩ッ! 何の光?」
『日の光だ。外に出たぞ』
「外……?」
目が慣れて視界が鮮明になる。目に映ったのは、水平線の彼方まで広がる煌めく大海原だった。眼下には、焼け焦げる巨大な物体が漂っている。
「アレって……」
『先程までいた巨大物体だ。つまりアレが〝ブループ〟の正体だ。動力源たるプランターを吾輩達が手中に収めた以上、もう音が響く事が無いだろう』
「そっか……」
聖は寂しく呟くと、右手に持った聖杯に目を向ける。巨大な物体を、大昔から動かし続けた動力源。島1つ分を強靭に動かし続けた一杯。最初に手にした聖杯は、そのまま手にした故に強力さを実感出来なかったが、激闘と死地の末に手にした聖杯は、手にした重みが違かった。
『それが聖杯か?』
「あ? ええ? ああ。そう」
突然の男の呼び掛けで聖は返事し、声のする方向へ見上げる。その先には、天を覆う程に巨大な翼を広げた機械の鳥だった。そして聖自身は、その鳥の足に掴まれて運ばれてる事にも気付く。
『落とすと面倒だ。中に入って休んでいろ。よくやった』
「あ、ああ……」
足の中に潜り込み、瓦礫を背もたれ代わりに座って溜息を付く。アナが不満気味に話し掛けて来た。
『気に食わんな』
「え?」
『今の声の主は、聖教守護者団の日本支部長の息子の桐原護瑞だ。迎えに来てくれるのならば、初めから共同作業しに来ればよいものを。というか、そもそも仏頂面なあのクールキャラが大っ嫌いだ。ファンファーノ馬ー鹿』
「言い方……」
「――――天地満ちるは黎明の祝詞! 簒奪の辣欲は落陽に伏す!」




