3節 赤恥を忌み嫌い、腹黒く、白々しくあれ5
真上へ昇る炎の斬撃と重厚な刃。瞬時の煌めきにより白聖女の身体は両断。
「あっっっっっっつッ!!?」
「ッ!?」
されなかった。聖は攻撃の間際、瞬時にロザリオフィールドを展開して直撃を防いだのだ。しかし、フィールドが解除された瞬間、時間差で炎の熱が聖の肌を焼く。一方で一撃で打ち取れなかった赤騎士は、すかさず足を上げると同時に足踏み。床を陥没させ、凄まじい衝撃と共にセイマリアを怯ませる。
「うぉおっ!?」
『追撃来るぞ!!』
一瞬の隙。レッドライダーは持った大剣の刃元を聖の頭目掛けて叩き込む。聖は直前で聖杯を持ってない左手に鉄骨を出して剣を軌道を逸らす。僅かに動いた大剣は、セイマリアの右腕を切り落とした。
宙に舞う右腕と、握られたプランター。赤騎士はすかさず手を伸ばすも、聖は歯を食いしばりながら、溶け掛けた鉄骨で腕を打ち飛ばした。
「クソッ!」
「え?」
『ドイツ語だな』
赤騎士は飛んで行った腕へ我先にと走り出す。その足目掛け、セイマリアは三度鉄骨を振るい、今度は赤騎士の脚の間に差し込んで転ばせる。
痛みに耐えながらセイマリアは走り出す。隻腕故にバランスが危ういながらも、またしても歯を強く噛み締めて食い縛り、聖杯を握って離さない己の右腕を拾い取った。
「っし!」
『即席だが、火傷用の治癒プログラムを組んだ! そのまま傷口を合わせれば繋がる筈だ!』
幼女の指示に従い、欠け身の聖女は腕の断面と肩の断面を合わせて抑える。火炎の熱とはまた違った熱が傷口に篭り、腕の感覚を徐々に取り戻す。そして――。
「っし! 繋がった!!」
『ふぁ!? 予想時間の1分も早いんだが!? うわマジで繋がってる怖、戸締りしたい……』
「修道院の戸締まりはちゃんとしたぞ! 心配なら今すぐ逃げるぞ!!」
『かしこま!!!』




